「このアパートに住んでいたのは若くてちゃっこい(小柄な)女。赤ん坊の育て方が危なっかしかったけれど、挨拶も何もできない女だから、余計な口出しをしないようにしていたんだ」
と近所の主婦は声を張る。
赤ちゃんを腰にぶら下げて
その女こそ、父親と共謀して元交際相手の派遣社員男性(21)を刺したとして殺人未遂の疑いで逮捕されたアルバイト・中鉢瑞帆容疑者。
7月4日午前4時過ぎ、父娘同乗の軽自動車で宮城県大崎市内にある元交際相手宅に乗りつけると、窓ガラスをハンマーで割って夜襲。実父の西條悟容疑者(43)が刃物でわき腹など数か所を刺し車で逃げた。中鉢容疑者は逃走せず、駆けつけた警察官に身柄を確保された。
「逃げた父親は同日昼、県内の路上で車内にいるところを警察官に見つかり、カッターナイフで首を切って自殺した。中鉢容疑者は“父親がやったことで私はやっていない”と否認していたが、その後、現場まで道案内したことを認めた。捜査当局は父娘には強い殺意があったとみて調べを進めている」(地元記者)
元交際相手は、重傷を負ったものの命に別状はないという。
一部報道によると、中鉢容疑者の子どもをめぐり、元交際相手との間でトラブルがあったとされる。
名湯・鳴子温泉で中鉢容疑者宅近くに住む冒頭の主婦は、生後約7か月という「子ども」の育て方に違和感があったと話す。
「ここは温泉地だから共同浴場に入る住民が多い。中鉢容疑者も、アパートの部屋に風呂がないため登録料1万円を払って永久入浴権を得た。ところが、赤ん坊を抱っこするでも、おんぶするでもなく、腰のところにヒモでぶら下げて来るんだよ。赤ん坊がめんこくて声をかけた高齢女性に対しても、あの女はブスーッとして愛想笑いさえしなかったんだから」(同・主婦)
共同浴場にはしらけた空気が漂い、声をかけた高齢女性は「おばあちゃん、もう行くね」と赤ん坊に話しかけるしかなかった。
複数の近隣住民によると、中鉢容疑者は約1か月半前に引っ越してきたばかり。別の女性住民はこんな非常識エピソードを明かす。
「自分は服を着たまま浴室に入り、裸の赤ん坊だけを浴槽にポチャンと入れるんです。母親と離れた赤ん坊は不安になって泣きはじめました。あんまり、赤ちゃんをかまっていない感じでしたね」
懲役8年の刑務所暮らしの実父
ほかにも、事件2日前の夜、中鉢容疑者宅が救急車を呼ぶ騒ぎがあった。
「部屋から中年男性が飛び出してきて、私は年上の旦那さんなのかと勘違いしてしまった。その男性が共犯の実父だったみたい。事情を尋ねると、“目を離したすきに子どもが机に顔をぶつけ流血してしまったんです”と言う。大事には至らなかったようだけど、事件直前の出来事だから何かのきっかけになったんじゃないかな」(前出の主婦)
中鉢容疑者は複雑な家庭環境に育った。幼いころ両親が離婚。
母親に引き取られ、再婚相手が新しいパパになった。
知人によると、再婚相手との間に生まれた弟を可愛がっていたという。
しかし、中学生になると、少し扱いにくい女の子に。同級生の保護者は「不良ではなかったけれど」と前置きして次のように話す。
「勉強が苦手で、入部したソフトテニス部でも活躍していません。鬱屈した感情からか、おとなしい男子生徒をいじめるようになりました。相当悩まされた親御さんもいます」
県内の農業高校に進むと、実家を離れて寮生活に。卒業後は実家近くの観光ホテルに就職したものの3日で退職。さまざまな職種を転々とするが、ほとんどが数日程度と長続きしなかった。
「アウトローな生き方になるに従い、幼いころに別れた実父への親近感が湧いてきたのかもしれない。西條容疑者は約11年前、当時の内縁の妻を果物ナイフで刺し、殺人未遂罪で懲役8年の刑務所暮らしを数年前に終えたばかり。子育てに苦悩する中、元カレを憎む気持ちが高まり、穏やかな養父ではなく、刑務所帰りの実父を頼ったのだろう」(一家を知る関係者)
最近になり、一緒に暮らし始めた父娘。しかし、出所後の西條容疑者は娘とは別に更生した生活を送っていた。
「早朝3時には起床して板金工の仕事に出かける。同居する母親と役割分担して祖母を介護し、収入面でも精神面でも一家の柱だった。再会した娘に頼られて妙な気を起こしたのか。この事件さえなければ、まじめで謙虚でやさしい男になっていたのに」(同)
父娘の歯車は、どこで狂ってしまったのか─。