“いわゆる夜の街”と小池百合子東京都知事にレッテルを貼られた新宿・歌舞伎町。そこで働き暮らす30代現役ホストは、
「今も普通に営業している店がほとんどです。ホストたちも個々の生活があるので……」
と実態を報告。
「法律でしばらないと(感染拡大)防止は無理ですね」
と、きっぱり断言する。
周りにうつしても迷惑意識はない
東京都で新たに243人の新型コロナウイルス感染者が確認された7月10日、西村康稔経済再生担当相は、接待を伴う飲食業への対応を強化すると明言。ホストやキャバクラ、ガールズバーなど約3000軒が密集する歌舞伎町への風当たりがさらに強まる流れだ。
あるホストクラブ経営者は、
「固定給のないリスキーな街」
と歌舞伎町を定義する。
「一文無しで歌舞伎町に流れ着いたり、ほかに働く仕事がない人がほとんどなので、ここで働かないと生きられない」
とホストの心情を代弁。
「歌舞伎町で寝て起きて食べて、生活全体が町内で完結しています。感染しても症状の軽い若者ばかりの街なので、コロナをうつして周りに迷惑をかけている意識はあまりありません」
経営者として危機管理には細心の注意を払っている。入店時には検温し、ホストはマスク着用で接客。そのうえ、テーブル間の距離を開ける、マドラーを使いまわさない、回し飲みをしないなど。
「店に1人でも陽性反応が出てしまったら休業します」(前出・ホストクラブ経営者)
「当たり前の予防法が伝わっていない」
そんな中、“ホスト界の帝王”ローランドは9日、歌舞伎町で経営するホストクラブ『THE CLUB』を閉店すると発表した。インスタに投稿された悲痛な閉店理由は《スタッフ達の安全を確保し、かつお客様に喜んで頂けるよう運営する事は困難》とのこと。
感染症に詳しいヘルスプロモーション推進センター代表の岩室紳也医師は、歌舞伎町のホストクラブで感染リスクを減らす指導をしているが、
「流行が始まって時間がたつのに、当たり前の予防法がホストたちに伝わっていない」
と嘆き、次のように指摘する。大切なことは、唾液の交換を避けることだ。
「飛沫は2メートルしか飛ばないので、それを避ければ人の唾液を吸い込まないですむ。飲食の直前、グラスを持つ直前に手を消毒すれば、手にウイルスが付着していても口に入りません」
ホストがテーブルについたまま女性にキスをするサービス“卓チュー”に関しても、
「キスは、唾液の交換が起こるのでもっとも危険です。回し飲みもNG。食器やグラスを棚から下ろしたときは、飛沫が付着しているおそれがあるので、使用前に洗うこと」
さらにはシャンパンコールをしないなど、ホストクラブの鉄板サービスまで自粛する“鉄の掟”が、ローランドをもお手上げ状態にさせた。
岩室医師は、都知事の“いわゆる夜の街”発言にも苦言を呈する。
「問題は、感染した人が、歌舞伎町に行ったことを言いたがらない雰囲気になること。感染経路不明者を増やしてしまいますから」
特定の街、特定の業種だけを、新型コロナウイルスが狙っているわけではない。