「2月に発売した『母』A・B・Cタイプのジャケットは、白。お母さんのお腹から生まれてきた、まっさらなイメージでした。“D・E・Fはどうしよう?”と思ったとき、やっぱり母の色は太陽のイメージで赤だと思って」
7月14日、新たに3タイプが発売に。ビジュアルもカップリングも変えて、再始動。
「Dタイプのカップリングは『黄金岬』。久しぶりのご当地ものの演歌です」
小樽から西に約45キロ。積丹半島の絶景スポットだ。
「愛する人を探しに黄金岬に行き、会えないまま、気持ちだけがずっと残っている。そんな切ない歌です。海も夕日もすごくきれいなところなので、ぜひ1度行ってみたいですね」
涙が止まらなくなってしまった
Eタイプの『笑おうじゃないか』は?
「こちらは、お手拍子ものの演歌です。こんなときだからこそ、ネガティブにならず、笑って生きていきたい。そう心がけたい。あくまでも、どこまでも前を向いて生きていけたら、というメッセージを込めています」
Fタイプの『見送り駅』は、メイン曲『母』の流れで聴いてほしいという。
「やはり母を思う主人公で。“まだ頑張るよ”と母に誓う1曲です」
レコーディングの際、涙が止まらなくなってしまったという。
「歌詞がすごく心にしみて。今は心がいっぱいいっぱいなんだろうな。ギリギリまで水が入っているグラスが、飽和に達したような状態になってしまいました」
コロナウイルスの影響で帰省を自粛し、母親と顔を合わせられていない人も多い。
「自分も離れて暮らしているから心配です。だいたい年に2回くらいは、コンサートで実家に帰るんです。今年は3月に九州に行く予定でしたが、それがなくなっちゃったから……。あまりにも急に状況が変わりすぎて、ちょっと心が対応できていないんでしょうね。そんな気持ちが『見送り駅』に重なったんだと思います」
人とのつながりを大事に
生きていけるように
2月末以降、コロナの影響で延期や中止した単独コンサートは23か所・48公演(7月11日現在)を数える。コロナの終息を見越して決めた振替公演も、再延期を発表している状況だ。
「コンサートこそライフワーク。自分を表現できる場所がないから、コンサートができないことはつらいです。フラストレーションもたまります。
とにかく、コロナが早く終息してほしい。心配事があるということは、本当に大変なこと。みんなが早くハッピーな気持ちになり、いろんなことがよくなるように。そして、やっぱりコンサートを早くやりたい。誰もが人とのつながりを大事にしながら生きていけるように、自分も頑張りたいなと思っています」
6月に、初のポップスアルバム『Papillon(パピヨン)-ボヘミアン・ラプソディ-』を発売。オリコン2位、Billboard JAPAN Top Albums Salesでは1位と好発進した。
「ありがとうございます。すべてポップス作品のアルバムで1位になれたのは最高に幸せです!!」
ここ数年、“演歌歌手という枠組みをいい意味で壊したい”と言い続けてきた氷川。アーティストとしてそれを体現した。
「ただ、本来であれば6月18日・19日にポップスコンサートを行う予定でした。結果として、アルバムを出してそのまんま……みたいな状態になってしまっていることが気がかりで」
コロナ禍以前、オープニングや衣装など、氷川の頭の中には構想が泉のごとくあふれていた。
「だったら、無観客でもいいからやれないか? 配信などの形でみなさまに届けられないか? 実は今、模索しています。実現できるといいな」
できることを、できる限りやっていく。誰もがネガティブになってもしかたがない状況でも、氷川きよしは希望を胸に進み続ける――。