ぬぐってもぬぐっても出てくる顔汗・頭汗。「こんなに汗が出るなんて、悪い病気じゃないかしら」と心配になる人もいるかもしれない。
女性の美容と健康を医療面からサポートするクリニック、Dクリニック東京 ウィメンズ院長・浜中聡子さんは、「暑いときに汗が出るのは当たり前。体温の上がりすぎを防ぐためなので、汗をかかないほうがよくないんです」と話す。
その汗、病気のサインかも……
また、汗は全身でバランスよくかくわけではなく、頭、わきや手のひらなど、かきやすい場所が集中している。
「だから顔や頭だけ汗をかかないようにするのは、難しいんです」(浜中先生)
気にしすぎて、精神的な負担になると余計に汗が出るので、ある程度はおおらかな気持ちでいたほうがいいそう。とはいえ、そこまで暑くないのに汗をかいたり、汗の量が多い場合は、病気が潜んでいる可能性もある。その大まかな判断基準は次の2つだ。
(1)ほかの人が汗をかいていないのに自分だけ過剰に汗をかいている。
(2)汗以外に、身体の不調がある。
時折、(1)のような症状が起こるのであれば、肥満や発汗のバランスが悪いことが原因の場合もある。しかし、(2)を伴う……つまり、だるさや疲れがあるようなら、注意が必要だ。
例えば急にやせたら、甲状腺機能亢進症(バセドー病)、血糖値の異常で汗をかくようなら内分泌系の疾患などが考えられる。また、緊張したり不安になったりするときに出る汗も、ひどいようならパニック障害なども疑われる。それぞれ、内科や精神科など、専門医に相談したほうがいい。
また、ほてりや気分の落ち込みなどがあり、年齢的にも当てはまるなら、更年期の症状の可能性も。婦人科を受診し、ホルモン療法などを行うと、汗の量が改善される場合もある。
朝の“鉄壁メイク”で1日安心!
暑いときに汗をかくのは自然なこと。とはいえ、メイクが崩れるのはイヤだし、崩れたら手早く直したいもの。そのポイントとテクニックを、スポーツビューティーに詳しいヘア&メイクアップアーティスト・長井かおりさんに教えてもらった。
まずは、夏特有の肌の状態について知っておきたい。
「気温も湿度も高いときは、汗でメイクが流れるだけでなく、毛穴も緩んで余分な皮脂も出やすくなります。それにマスクの蒸れが加わると、さらにメイクが崩れるという悪循環です」(長井さん)
また、汗をかくと肌に水分が多いと錯覚をしがちだが、それは“見せかけの潤い”だとも言う。
「実は、強い日差しやエアコンで、肌は乾燥しがち。水分不足で皮脂が多く出てしまうこともあります。暑いときも、保湿をおろそかにしないでください」(長井さん)
これらを理解したうえで、朝メイクをしたら、1日中、崩れにくいという「鉄壁メイク」を実践したい。
汗の出ない涼しい部屋で、肌のコンディションを整えて毛穴をしっかり引き締め、メイクが密着しやすい状態にすることからスタート。
「肌がしぼんだ状態だと、そもそもメイクがのりにくいので、たっぷりの化粧水をつけ、乳液やクリームでフタを。夏だからとスキンケアを簡単にすませず、肌の内側に潤いをため、しっかり張りを持たせておきましょう」(長井さん)
そして、スキンケアの最後は日焼け止めが必須になるが、その油分が肌に浮いたままにしないこと。しばらく時間をおいてなじませてからメイクするか、ヌルつくようなら軽くティッシュペーパーで押さえて。表面の油分をオフすることで、ベースメイクの密着度が高まる。その後に、ファンデーションとの接着剤がわりになる下地クリームを。
「ファンデーションは、パウダータイプは意外にこすれに弱いので、リキッドタイプやBBクリームなどの液体系がおすすめ。スポンジを水で濡らしてギュッと絞ったものを使って塗ると、毛穴がきゅっと引き締まって、肌にぴったりとのります」(長井さん)
スポンジは、夜のうちに密閉容器に水と一緒に入れ、冷蔵庫で冷やしておくとベター。仕上げはルースパウダーをパフにとり、肌へ押さえながらのせることで、フィット感が高い、鉄壁ベースメイクが完成する。
三角ゾーン、チークはどうする?
「汗で崩れやすい、額や小鼻まわりの“三角ゾーン”は、特にきっちりと圧をかけながらのせて、圧着させましょう」(長井さん)
基本的にポイントメイクはその後に行うが、マスクなどでこすれて取れやすいチークは、ルースパウダーの前につけるとより定着する。仕上げに、化粧水をスプレー容器に入れて顔にかけると、メイク持ちがよくなり、エアコンなどによる肌の乾燥を防いでくれる。
次に、出先でメイクが崩れてしまった場合。すべてをやり直すは大変なので、“三角ゾーン”を中心にしたリカバー法を覚えておきたい。崩れた部分の皮脂と汗をふき取った後、使いたいのがクッションファンデーションだ。
「適度な潤いで肌を整えてくれ、かつカバー力もあるので、お直し用に便利です」
と長井さん。
つけた後にベタつかないものを選んで使えば、仕上げのパウダーをのせる必要もない。脂やテカリが気になる小鼻のまわりには、毛穴の凸凹を滑らかにし肌をサラッと整える下地、スキンスムーザーを使うのもおすすめ。
頭から流れる汗でセットした髪がペタンコになってしてしまったり、ベタつきが気になることもある。そんなときに使えるのがドライシャンプーだ。災害や入院などで洗髪できないときの応急処置のイメージがあるが、夏のヘアのリカバーにも便利。髪の生え際や地肌に使えば、さっぱりとしてにおいもとれる。汗でへたった髪のボリュームを取り戻す効果もある。
メイクやヘアを直すときは首の後ろを冷やすのが有効。
「女優さんのロケのときなどは、キンキンに冷やしたおしぼりをいくつも用意して、首もとを冷やし、メイク崩れを防ぎます」(長井さん)
携帯ファンを利用する際は、顔に直接当てると肌が乾燥するので、これも首元に向けて。ミントやハッカなどの香りを周囲に吹きつけてもスッとするのでおすすめだ。
これらの識者のアドバイスを参考に、猛暑+マスクのこの夏を乗り切ってほしい。
“汗スッキリテク”4選
《スッキリテク1》汗でメイクが崩れやすい額と鼻周辺の“三角ゾーン”。朝のメイクも日中のお直しも、この部分を意識する。
《スッキリテク2》朝使うスポンジを水の中に浸し、冷蔵庫で冷やしておく。高野豆腐をイメージ。ギュッと水を絞って使う。
《スッキリテク3》朝のルースパウダーや、日中のクッションファンデなど、パフを使うときは、しっかり押さえて圧着する。
《スッキリテク4》汗でヘアが崩れたり、においが気になるときはドライシャンプーを生え際にシュッ。髪もふわっと立ち上がる。
顔汗&頭汗ケアのおすすめアイテム
(1)インフィニティクッション セラム グロウ……くすみや色むらなど、気になるところをカバー。美容液配合で保湿効果も。SPF40・PA+++/全6色/各12g/特別参考価格4300円(税抜き・ケース別)/コーセー
(2)NbyONLYMINERALSミネラルクリアスムーザー……毛穴や小ジワをカバーし、サラッと仕上げる部分用下地。石けんで落とせる。全1色/4g/2700円(税抜き)/ヤーマン
(3)ナリンハーブオイル33+7ロールオン……ミントやユーカリ、柑橘などの清涼感のある香りで、手首や首、こめかみや肩まわりなどに使えば、リフレッシュ感抜群。10ml/2300円(税抜き)/スターティス
(4)フレッシィドライシャンプー(ディスペンサー)……頭皮と髪全体にスプレーし、タオルでふき取るタイプのドライシャンプー。暑いときやスポーツ後など汗が気になるときに便利。50ml/500円(税抜き)/資生堂
(取材・文/秋山圭子)