新型コロナウイルスの猛威を目の当たりにして、改めて健康への意識が高まったという人は少なくないはず。でも、健康第一とはいっても家計を圧迫するほどのお金はかけたくないのが正直なところ。それに仕事に家事にと毎日忙しくしていると、健康維持のために外へ出る時間を作るのもひと苦労。すき間時間を使い自宅で手軽にできるセルフケアで健康や美容の促進ができれば、うれしい限り。
そこで今回は、週刊女性6月30日号で掲載して大好評だった人気企画「名医たちの0円健康法」の第2弾を決行! 誰でも・手軽に・お金をかけずに取り入れることができるうえに、その健康&美容効果は、日本を代表する名医たちのお墨つき。年齢にもウイルスにも負けず、健康でハッピーな生活を送るためのヒントがいっぱいです!
《健康法その1. 1日1分! 長生き呼吸法》
自律神経と腸内環境が同時に整う
疲れが取れない、便秘が気になる、風邪をひきやすい……。こんな不調は、ストレスや緊張で浅くなっている“呼吸”が原因かも!?
順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生が提唱する「長生き呼吸法」とは、ゆっくりと口から息を吐いて、鼻からスーッと息を吸い込む呼吸法。意識的に深く呼吸することでリラックス感を得られ、自律神経のバランスが整って心身を健康な状態に。しかも自律神経が整うことで身体の免疫力を左右する腸内環境の改善効果もある。
「1億個に及ぶ神経細胞が存在する腸は、自律神経の影響をダイレクトに受ける部位。ストレスや緊張でお腹が痛くなるのはそのためです。逆に、長生き呼吸法で自律神経が整えば、その好影響はすぐに腸内環境にあらわれる。結果、免疫力の向上につながります」(小林先生、以下同)
“呼吸には一瞬で心と身体の状態を変える力がある”と小林先生。
「私自身、この呼吸法を習慣にしてから性格が穏やかになり、幸せを感じる機会が多くなりました」
呼吸を変えるだけで健康でハッピーな人生が手に入るなんて、やらない手はない! ここからは、「長生き呼吸法」のやり方と効果を解説します。
●基本の姿勢
・足を肩幅に開く
・まっすぐに立つ
・肩の力を抜く
・両手はお腹の横に
両手は肋骨の下をつかみ、呼吸と同時に腸をマッサージ。自律神経と腸内環境をダブルで整えます
【1. 上体を無理のない範囲で前に倒しながら、口からゆっくり息を吐く】
息を吐き出しながら、わき腹の肉をおへそに集めるイメージで両手で腸に刺激を与える。
【2. 無理のない範囲で背中を後ろにそらせながら、鼻からゆっくり息を吸う】
息を吸い込みながら、腸に刺激を与えていた両手の力をゆるめていく。
「長生き呼吸法」のすごい健康効果
・腸内環境が良好になる
自律神経が整うと、腸内環境が良好に。さらに腸のマッサージで、腸の機能も回復させる効果が。
・自律神経のバランスが整う
周辺に自律神経が集まっている横隔膜を大きく動かすことで、自律神経のバランスが整う。
・血流がよくなる
自律神経が整えば全身の血流がアップし、腸から吸収した栄養満点の血液が細胞に届けられる!
・免疫力が上がる
全身の免疫細胞の約70%は、腸内に集結している。腸内環境が良好になれば、免疫力アップに直結!
・生活習慣病が改善する
血流の改善は高血圧・糖尿病・動脈硬化の予防に。また免疫力が上がり、がんのリスク軽減にも。
・メンタルトラブルを防ぐ!
「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン。その90%は腸で作られるから、心の病の予防・改善に。
・慢性疲労が改善する
原因は胃腸や自律神経の乱れ、ストレス、肉体疲労など。呼吸で自律神経が整えば、疲労も改善。
・老化を抑制する
深い呼吸で栄養の質を高めて血流をアップさせれば、健やかで若々しい髪の毛や肌を維持できる!
《続けるための4つのポイント》
【1】秒数・回数にこだわらない
「長生き呼吸法」の秒数はあくまで目安。大切なのは、「吐く時間を長くすること」。呼吸と向き合う時間を作るための目安と考えて。
【2】ゆったりした服を着て行う
キツい服だと肺が大きく膨らまず、深い呼吸ができなくなる。呼吸するときは上半身を締めつけないゆったりとした服を着用しよう。
【3】よいイメージを思い浮かべる
不安やネガティブな思考は自律神経に悪影響が。大草原や大海原など心地よさを感じる風景を思い浮かべながら行うのがオススメ。
【4】屋外でもやってみよう
場所や時間を選ばすに行える。特に大自然の中で行うと、新鮮な酸素に満たされて、いつもとは違う格別の味わいが。
《健康法その2. お風呂で腹式呼吸》
アンチエイジング&免疫力アップ
「毎日、熱い風呂に入浴する人はそうでない人と比べて5年後に要介護にならない確率が約2倍という統計があります」と教えてくれたのは、温泉入浴指導員の資格を持つ医学博士の一石英一郎先生。自宅のお風呂で効率的に健康効果を得るには、40度のお湯に10分間が目安。
「体温が37~39度に上がります。すると、血液の中にある血栓を溶かす成分『t PA』が増加。血管を丈夫にし、動脈硬化などの血管疾患の予防につながります」(一石先生)
健康効果はそれだけではない。入浴を10分間行うと血糖値が下がってインスリン分泌も抑えられ、糖尿病の改善が期待できるという研究結果も。また体温が上がることで、免疫細胞の一種である好中球やマクロファージの活性が高まるという。さらに、お風呂の水圧を利用した呼吸トレーニングは、加齢で衰えがちな肺まわりの筋力維持にも。誤嚥(ごえん)や咳き込み、息苦しさが気になる人にオススメ。では、お風呂でできる、肺まわりの筋トレ法をお伝えします。
※呼吸機能の弱い人やすでに慢性気管支炎などの病気がある人は、医師に相談のうえ無理をせず、半身浴からゆっくりと始めてください。
【STEP1】肩までしっかりお湯に浸かる
【STEP2】呼吸を確認する
いつもよりもゆっくりと呼吸しているのが正常です。肩まで浸かると呼吸が苦しいと感じる人は、呼吸が浅くなっている証拠。
【STEP3】腹式呼吸を繰り返す
おなかに両手を添えて背筋をまっすぐ伸ばす。「ハーッ」とゆっくり限界まで口から息を吐き出しながら前かがみに。吐く息に合わせて、おなかはへこませる。
鼻からゆっくり息を吸い込みながら、元の姿勢に戻す。吸う息に合わせて、おなかは膨らませる。呼吸の回数は、気持ちよく吐く→吸うを繰り返せる回数でOK。
●夏の季節湯! ミント&重曹湯
お湯に浸かるのも億劫になる暑い夏には、清涼感や殺菌効果が高いミントの季節湯がオススメ。両手いっぱいのミントをお茶パックなどに入れ、2リットル程度のお湯をかけてしばらく蒸らしたら、そのまま浴槽へ。さらに重曹を15gほど入れると、入浴後の爽快感がさらにアップ!
健康になれる! お風呂の入り方5か条
【1. お湯の温度は40度が目安】
血栓を溶かす『t-PA』が約40度のお風呂に浸かることで増加。血管を丈夫にして、動脈硬化などの血管疾患を予防する。
【2. 入浴時間は10分間程度に】
心臓や肺に負担をかけずに『t-PA』の増加が期待できる最適な入浴時間。10分以上の入浴は、逆に動脈硬化などのリスクが高くなる。
【3. 入浴前は1杯のコーヒーを】
コーヒーに含まれるカフェインには血行拡張効果が。入浴前にコーヒーを飲むことで、さらに血流改善の効果が期待できる。
【4. 歌を歌って認知症予防!】
呼吸の回数が増えることでリラックス効果が高まり、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが増加。音楽を聴くだけでもリラックス効果あり。
【5. ゆずの香りで脳を活性化】
ゆずに含まれるリモネンにはアセチルコリンが分解されるのを抑制する働きが。お湯に浸かることで、香りだけでなく肌からも取り込める。
《健康法その3. “脳力アップ”習慣》
年間1万人以上の脳と向き合う銀座内科・神経内科クリニックの霜田里絵先生によると、脳は何歳からでも若返らせることが可能だそう。ただ、誰もが同じように脳の成長を続けられるわけではない。
「認知症を防ぎ、高齢になっても若々しくあり続けるには、早いうちから脳を意識的に刺激し活性化させることが必要。とはいえ難しいことを始める必要はありません。毎日の生活の中ですぐ取り入れられる簡単な習慣でも、脳の若返りは十分期待できるので、ぜひ続けてみてください」(霜田先生。以下同)
そこで、霜田先生に老けない脳を作るために効果的な5つの生活習慣と、その実践方法を教えていただいた。
老けない脳を作るための生活習慣
【1】腹七分目の食事でよく噛む
メタボリック・シンドロームは脳にも悪影響を及ぼし、認知症のリスクが上がる。食事は腹七分目に抑えるのが正解。また咀嚼で脳の血流が上がることが証明。ひと口30回を目指して、よくかんで。
【2】1日8000歩のウォーキング
適度な運動は脳の活性化に不可欠。歩くときはいつもより少し早足で、左右の手足をリズミカルに動かすことを意識して。1日30分以上を目標に、週に3日程度からチャレンジを。
【3】良質な睡眠をとる
睡眠時間は6〜8時間を確保したいが、なかなか夜眠れない場合は、昼寝でカバー。ぐっすり眠るのではなく、午後1時〜3時の30分以内、明るい部屋で、イスやソファなどで行うこと。霜田先生ご自身も、午前と午後の診療の合間に、毎日15分間の昼寝タイムを設けている。
【4】脳を飽きさせない
“生活の中にちょっとした楽しみがあるだけで脳は活性化する”と霜田先生。映画を見る、美術館に行く、何かを集めるなど、趣味未満でいいので、自分が楽しめる小さなことを、広く浅く10個以上は持っておきたい。
【5】脳の疲れをとる
何も考えずに過ごす時間は、脳の疲労回復ができる大切な時間。霜田先生はここ10年以上どんなに忙しくても毎日欠かさず「朝カフェ」でぼーっと過ごす時間を作っているそう。
「頭がスッキリして、よい状態で仕事を始めることができます」
●脳を若返らせるための5つの生活習慣
1. 腹七分目の食事でよく噛む
2. 1日8000歩のウォーキング
3. 脳を飽きさせない
4. 脳の疲れをとる
5. 1日1〜2杯の赤ワインで脳が活性化!
赤ワインに含まれるポリフェノールには動脈硬化を予防するなどさまざまな健康効果があることが知られている。さらに脳の記憶をつかさどる海馬を活性化させる働きがあるという実験結果も発表されている。とはいえ、飲みすぎはNG。脳の働きを高めるためなら、食事とともに、1日1〜2杯程度が目安。
《健康法その4. 感情日記をつける》
書くことで自分でも気づかない心のダメージを解き放ち、健康な心身が手に入るという「感情日記」。その具体的な効果と方法とは?
自分の感情と向き合えば健康に!
「感情日記」とは、ストレスになっている出来事や心に傷を負った出来事について、日記を書くような感覚で記述していくこと。精神的ストレスが和らぎ、自律神経系や内分泌系、免疫系のバランスが回復。その結果、身体が健康的な働きを取り戻すという。
ただ日記を書くだけで健康になれるなんて、にわかには信じがたいが、欧米諸国の医学的研究では、血圧の低下や慢性痛の軽快、傷の回復を早め、ウイルス感染への免疫抵抗力が高まるといった驚くべき結果も証明されている。
「感情には、瞬間的に出てくる本能的な一次感情と、一次感情に続いて生じる人工的な二次感情があります。一次感情は自分でも意識しづらく、無意識のうちに抑え込んでいることが多いもの。感情日記を書くことで、その一次感情が発散し、それと正しく向き合うことで感情を支配していた歪んだ二次感情や二次的な病的身体反応の軽減につながると考えられます」
と、精神科医の最上悠先生。それに加えて、日記を“書く”ということを通じて、認知症予防に大切な“脳のメモ帳”と呼ばれるワーキングメモリーが鍛えられる、うれしいおまけもついてくるとか!
感情日記のつけ方に絶対的なルールはないが、書き方にはいくつかのコツがある。効果が出る感情日記の書き方のポイントを、以下にまとめてご紹介!
【書き始める前に】
□ “自分のため”に書くこと
□ 誤字や文法など、文章の完成度は気にしない
□ 書くものは、ノートでもパソコンでもスマホでも問題なし
【何を書くか】
□ 現在・過去にかかわらず、ストレスや過去にできた心の傷など、ネガティブな感情をテーマに書く。連日、同じテーマでもOK
□ 出来事の経緯や、周りの人との会話などを思い出しながら書き進める
□ 出来事の記述にとどまらず、当時の感情と現在の感情、それに対する洞察(なぜそう感じたか、どんな影響があるか、その出来事が身体の不調にどう影響しているかなど)を掘り下げる
□ 身体の感覚(“息苦しい”など)にも意識を向けて記述できるとベスト!
【書く時間・期間】
□ 1日15分〜20分、週1〜3日が目安。筆が乗っても、ほどほどでやめておくこと
□ 三日坊主でもかまわない。長く続ければ、効果は出やすい
【注意点】
□ いろいろな感情があふれてきても心配しすぎない。ただし、つらさが抑えられないときは無理をせず中断し医師に相談を
(取材・文/中村明子)
順天堂大学医学部教授。自律神経研究の第一人者であり、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した腸のスペシャリストでもある。著書に『自律神経を整える「長生き健康法」』(アスコム)
医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授、伝統医療と西洋医療との知見の融合や、最新の遺伝子学にも造詣が深い。著書に『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)
銀座内科・神経内科クリニック院長。医師・医学博士。アルツハイマー病や脳血管障害など、脳に関する疾患のスペシャリスト。著書に『一流の画家はなぜ長寿なのか』(サンマーク出版)
最上悠先生
精神科医、医学博士。うつや不安、依存の治療に多くの経験を持つ。薬だけでなく最先端のエビデンス精神療法の専門家としても活躍。著書に『日記を書くと血圧が下がる』(CCCメディアハウス)