《二男です。コロナの影響で、なかなか髪を切れなかったので、かなりスッキリした様です》(原文ママ)
7月4日に、愛息の髪をカットしてあげたことを自らのフェイスブックに投稿していた村上淑(しゅく)さん(55)。およそ2週間後、そのヘスタイルは全国の注目の的となる……。
「母親を車で運んで燃やした」
宮城県警仙台南署は、16日の夜から翌未明にかけて、母親と思われる遺体を名取市まで運んでガソリンをかけて燃やし損壊・遺棄したとして、仙台市内の専門学校生・村上陽都(はると)容疑者(21)を逮捕。
20日の送検時には、頭を覆ったコートからアシッド・ベージュの頭髪とメガネがのぞいていた。陽都容疑者は、
「家に帰ったら、母親が冷たくなって死んでいた。名取市内まで自家用車で運んで燃やした」
と供述している。
実際に自宅から約9キロ離れた自然公園にはキャンプ場があり、バーベキュー用のかまどが3つ。そこから損傷が激しく骨に近い遺体が見つかり、自宅にも持ち帰っていたという。
遺体を燃やしたかまどは小さく、人を燃やすには身体を折り曲げるかバラバラにするしかなさそうだが、どのような方法をとったのだろうか。
容疑者は自宅で母親とふたり暮らし。単身赴任しているという父親の家に長男が同居し、別々の生活をしている状況だった。
地元メディアの記者は、こう説明する。
「容疑者は当初、父親には“母親がいなくなった”と告げていたため、17日の夜に2人で一緒に仙台南署へ相談に行っており、行方不明届を出そうとしていた。ところが、そのときに容疑者が遺棄について自供したようです」
通報や相談をすることなく、わざわざ車で遺体を運び、かまどで燃やしてしまうとは異様だが、容疑者は母親死亡への関与もほのめかしているとも報じられている。
そんな陽都容疑者はどんな人物なのか──。
「幼いときからものごとを理論立てて話す、とても頭がよくて、珍しいやつだった。友だちと言い合いになると、少し熱くなりやすい面はあったが、それでもきちんと筋道を立てて主張するし、決して殴ったりケンカをしたりするやつではなかった」
と、幼稚園と小学校の同級生。別の小学校の同級生も、
「小学4年生のときに、元素番号を伝えると、“それは○○だ”と物質名を言えるような中学生以上の学力があった。学校の成績も抜群によくて、“もの知り博士”として有名だった」
中学受験をし、県内でもトップ5に入る私立の名門一貫校に進学したが、
「高校も附属高校へ行ったはずですが、中学時代に不登校とか、親との間にトラブルがあるとか聞いたことがあります」(幼・小の同級生)
その後、工業系の専門学校へ進学し、地元で行われた成人式には参加しなかったという。中学進学以降に何らかの問題があったことがうかがえるが、母親はそんな息子によくも悪くもベッタリだったようだ。
母親は子育てに仕事にと大奮闘
淑さんは宮城県北部の出身で、美容専門学校を卒業したのち、10年ほど修行をつんでから独立。結婚前後の1994年に、現在の自宅から徒歩20分ほどのところに美容室を開き、会社も設立した。
‘96年には仙台駅の近くに夫とマンションを購入し今も所有しつつ、現在の一軒家も、‘00年に夫と購入。バリバリと活躍していたようだ。
「年下の旦那さんとの間には2人の男の子に恵まれて、子育てにも奮闘。経営、財テク、家庭、子育て“なんでもござれ”という感じで、周囲からは、肩で風を切る感じというか、鼻高々な様子に見えた」
と、美容室の近所の店主。常連客の中にはこのように話す人も。
「つい最近まで“朝早く子どもの弁当を作らなきゃいけないの”とグチをこぼしていた。でも、子ども思いのいいお母さんだなと思っていたのに……」
子育てには悩んでいた時期もあり、自分を変えるため、とある心理学を学び、美容室のかたわらその講座で講師も務めるようになった、という努力家でもある。
この心理学でチャレンジ精神を学び、2年前には元の店舗から100メートルほど離れた真新しいテナントに美容室を新装移転。スタッフの数もぐんと増えて、ブログなどで積極的にアピールを続けていた。
そんな矢先の今回の悲劇。容疑者は、何事にも一生懸命な母親に対する反発で殺害し、隠蔽(いんぺい)するために燃やしてしまったのだろうか──。
殺したという疑いは拭いきれない
別の見方をする関係者もいる。
「息子さんが淑さんを見つけたときに、すでに亡くなっていた可能性はあると思う。それでパニックになったのかな。
というのも、2、3か月前に淑さんを見かけたら、小柄でほっそりした人が一段とゲッソリしていて、まるで別人のようにフケていて、病気でもしているのかと思った」
こんな証言をする常連客も。
「20年ほど前、2人のお子さんが小さかったころ、淑さんが脳梗塞で倒れてしまったの。代わりに従業員が店を開けていましたが、淑さんは数か月も休んだことがあった。仕事に家庭にと、とにかく忙しくしていたし、もともと身体が強いほうではなかった」
母親が病弱で倒れていたら、たとえ不仲でも家族なり救急なりに連絡するのが、普通の感覚だと思うが──。
「一般的に遺体を焼くという行為は、死因をわからなくするために行うもの。やはり、殺したという疑いは拭(ぬぐ)いきれません」
と語るのは、新潟青陵大学大学院の碓井真史(うすいまふみ)教授(犯罪心理学)。
「たとえ殺していなくても、死んでいたから燃やすという不可解な行動は、現在までの人生が順調ではないことと無関係ではないと思います。
母親の存在が目の前からなくなって欲しいという願望がベースにあり、自分にはそれを運ぶ体力がある、遺棄するキャンプ場を知っている……など、自分が知っていることをつなぎ合わせただけの結果ではないか。
頭はいいかもしれないが、一般常識的な部分が欠如していると思われます」(碓井教授)
淑さんは、フェイスブックやインスタグラムでも陽都容疑者のアカウントをフォローしていた。
髪もカットしてあげ、心理学も取り入れながら容疑者の世話を焼いていたのに、このような結果になってしまうとは……。