撮影中断を乗り越えて、満を持して登場した『半沢直樹』が初回から視聴率22%と絶好調。8月に入っても続々と新作がスタートするなど、何かと話題の夏ドラマ。過去を振り返ってみても、実は名作がいっぱい。女性読者800人へのアンケートとともに、魅惑の名作夏ドラマを“全身全霊”で徹底解剖!
半沢直樹は青春系
夏ドラマだった!?
新型コロナに長い梅雨となんだか重苦しい夏のスタートとなってしまったけれど、そんな中、アツーイのが夏ドラマ。放送が延期、または中断されていた話題作が次々と始まり、今、ドラマ界は活気にあふれている。
その原動力となっているのが7年ぶりに復活した『半沢直樹』だ。堺雅人、香川照之、及川光博らおなじみの面々に加え、新たな敵として市川猿之助、古田新太、パートナーとなった尾上松也らが顔芸爆発の濃い演技合戦を繰り広げる。香川に至っては序盤から“恩返し”などの名ゼリフを連発し、もうハジけまくり。
「暑い夏にあえて暑苦しいドラマを、という意味では『半沢直樹』は最高。最後には“倍返しだ!”というカタルシスもありますし、熱くてスッキリというまさに最強の夏ドラマ」
と語るのは、ドラマウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさん。
「夏ドラマで多いのは、主に3つのタイプに分類できるんです。“青春系”と“夏休み系”と“恋愛系”。で、『半沢直樹』も実は“努力・友情・勝利”の要素が詰まっていて、ある意味、青春系の夏ドラマなんです」(カトリーヌあやこさん、以下同)
'13年に制作された前作も7月クールの放送。放送開始が春から夏へとズレたおかげで、本来の夏ドラマとしての特色が思う存分、発揮されているというわけだ。
「青春系の代表といえば'03年の『WATERBOYS』。少年漫画的な爽快感のある夏にぴったりのドラマです。同時期に『Stand Up!!』という堤幸彦さん演出のドラマがあって、二宮和也、山下智久、小栗旬、成宮寛貴が脱童貞を目指すっていう(笑)。昔はこういうお色気青春モノが夏の定番だったんです。不器用な男の子の甘酸っぱい青春は夏ドラマの正統派。
'06年の長瀬智也主演の『マイ・ボス マイ・ヒーロー』も少年漫画的な快作でした。ヤクザの跡取りが高校に転入するというぶっ飛んだ設定で、長瀬くんと手越祐也くんの脱ジャニーズコンビもよかった(笑)。'07年の『花ざかりの君たちへ〜』も、恋と青春とイケメンで最高でした」
今の時代にぴったり!
夏休み系ドラマの名作
一方、夏休み系の代表作といえば『ビーチボーイズ』('97年)だろう。反町隆史&竹野内豊という当時の2大イケメンが海辺の民宿で過ごすゆったりとした夏時間に心癒された女子は多かった。
海と並んで夏休み系の定番と言えば、縁側でビール。思い出すのは『ホタルノヒカリ』('07年)の蛍(綾瀬はるか)と高野部長(藤木直人)が暮らす古い日本家屋の居心地のよさそうな縁側だ。
「私的3大夏休みドラマが『すいか』('03年)、『凪のお暇』『セミオトコ』(共に'19年)です。どれも地味なヒロインたち(小林聡美、黒木華、木南晴夏)が古いアパートを舞台に人生を再確認していくというドラマで、それぞれユニークな人たちとの出会いがあって、世界観自体にすごく癒されます。“休んでもいいんだよ”“逃げてもいいんだよ”というのが夏休み系の根底にあるテーマだと思うんですけど、今の時代にすごく合っていますよね」
実は夏の恋愛ドラマは少ない。クリスマスという最大の恋愛イベントにクライマックスを持っていけるし、視聴率も取りやすいので恋愛ドラマは冬に作られることが多いのだ。もちろん、『男女7人夏物語』('86年)や『愛していると言ってくれ』('95年)など夏に生まれた名作もあるが、恋愛=冬のイメージは強い。が、2010年代のフジテレビは、月9で意図的に夏に恋愛ドラマを放送していた。
「『夏の恋は虹色に輝く』('10年)、『リッチマン、プアウーマン』('12年)、『SUMMER NUDE』('13年)、『恋仲』('15年)、『好きな人がいること』('16年)というふうに夏クールを若者に向けてのラブストーリーにシフトチェンジして、これがどれもすごくいいんですよ。どの作品にも必ず海と花火と浴衣みたいなシーンがあって、リア充感が爆発してます(笑)。
中でも小栗旬が若きIT社長、石原さとみが就活生を演じた『リッチマン~』は王道のシンデレラストーリーで、夏感は薄いんですけど、ドラマとしてとてもよくできています」
では、現在放送中の夏ドラマの中でオススメは?
「福田雄一さんが脚本・演出の『親バカ青春白書』はムロツヨシが愛娘(永野芽郁)を愛するあまり同じ大学に通い始めるという『マイ・ボス マイ・ヒーロー』的なコメディーで、夏らしいハジけた笑いが楽しめる作品だと思います。『妖怪シェアハウス』の地味なヒロイン(小芝風花)が人生を再確認するというテーマは夏休み系そのもの。ただ下宿の住人がユニークを通り越して妖怪という (笑)。ホラー要素もあるし、これから暑くなる夏にピッタリではないでしょうか」
夏ドラ青春系
'13年、'20年
『半沢直樹』(TBS系)
出演/堺雅人、上戸彩、北大路欣也、香川照之ほか
役者たちの濃い芝居が楽しい痛快劇
堺雅人演じる銀行マン・半沢直樹を主人公にしたビジネスドラマ。'13年の第1シリーズは明快な勧善懲悪と香川照之を筆頭とする敵役たちの濃い芝居が話題となり、最終回は42・2%という高視聴率を記録。半沢の決めゼリフ「倍返しだ!」は流行語に。
7年ぶりに制作された第2シリーズでは、証券会社に出向させられた半沢の前に新たな敵(市川猿之助、古田新太ら)が立ちはだかる。「歌舞伎系俳優たちの“これでもかっ!”の顔芸は増量してるし、香川さんの“おしまいDEATH”などキラーワードも盛りだくさん。ハラハラしつつも笑えるし、最高!」(東京都・53歳)
'03年
『WATER BOYS』(フジテレビ系)
出演/山田孝之、森山未來、瑛太ほか
若手実力派俳優たちが水着で踊る
男子シンクロ部の奮闘を描いた青春ドラマ。'01年に妻夫木聡主演の映画版がヒットし、'03年に山田孝之、森山未來、瑛太らの出演でドラマ化された。学園祭での公演に向けて主人公たちが明るく楽しく苦難を乗り越えていく王道青春モノで、これぞ夏ドラマの爽快感。「圧倒的な明るさと男子シンクロの迫力に目を奪われました」(長崎県・29歳)。翌年にも市原隼人、小池徹平、石原さとみらの出演で続編が作られるなど夏の定番シリーズに。
'07年
『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ)
出演/堀北真希、小栗旬、生田斗真、水嶋ヒロほか
イケメン大集合! 逆ハーレムの名作
男装した堀北真希がイケメンたちであふれる男子寮に入って……という逆ハーレムもの名作ドラマ。小栗旬、生田斗真、水嶋ヒロ、岡田将生、溝端淳平など旬の若手俳優が集合した桜咲学園は圧巻のひと言だった。'11年に前田敦子の主演でリメークされたほか台湾や韓国でもドラマ化されるなど人気コンテンツに。「『ビーチボーイズ』ともども『イケパラ』も旬のイケメン俳優たちで毎年夏にリメークしてほしいドラマです(笑)」(カトリーヌさん)
夏ドラ恋愛系
'95年
『愛していると言ってくれ』(TBS系)
出演/豊川悦司、常盤貴子ほか
障害があるゆえに燃え上がる夏の恋
再放送でも話題となった'90年代恋愛ドラマの傑作。豊川悦司演じるろうあの画家と常盤貴子演じる女優の卵の、障害があるゆえに燃え上がる恋を北川悦吏子がドラマチックに描く。この作品の重々しさはほかの夏の恋愛ドラマと比べると異質かもしれないが、逆に夏という季節だったからこそヘビーになりすぎずにすんだのかも。「白シャツ姿のトヨエツがいい! やっぱり白シャツのイケメンは夏ドラマには欠かせません」(カトリーヌさん)
'10年
『夏の恋は虹色に輝く』(フジテレビ系)
出演/松本潤、竹内結子、沢村一樹ほか
カッコ悪い松潤が逆に魅力的
売れない二世俳優(松本潤)とシングルマザー(竹内結子)の恋を描く。脚本は『ランチの女王』の大森美香。タイトルのキラキラした派手な印象とは違い、ほんわかと心温かくなるラブストーリー。「カッコいい系ではなく情けない系の男の子を演じている松潤が新鮮でした。竹内結子さん扮する詩織の日本人っぽくない感じもよかった」(東京都・41歳)。「出てくる人がみないい人で、嫌な気持ちになることなく見られたドラマです」(埼玉県・55歳)
'12年
『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)
出演/小栗旬、石原さとみ、相武紗季ほか
恋愛だけでないふたりのバディ感
若くして億万長者となったIT企業の社長(小栗旬)と東大理学部なのにまったく内定がとれない就活生のヒロイン(石原さとみ)による日本版プリティウーマン。ラブストーリーとしてはもちろん、職業モノとしてもよくできており、小栗と石原の間にあった独特のバディ感はほかの恋愛ドラマにはない面白い関係性だった。「石原さとみちゃんの真琴が本当に魅力的で、この後、日本を代表する女優になったのも納得です」(愛知県・37歳)
'02年
『ランチの女王』(フジテレビ系)
出演/竹内結子、妻夫木聡、江口洋介、山下智久ほか
イケメン兄弟と美味しい料理は天国
洋食店を舞台に、竹内結子演じるヒロインと店の4兄弟(堤真一、江口洋介、妻夫木聡、山下智久)との恋模様を描いたヒューマンラブコメディー。美味しそうにランチを食べる竹内結子の姿にキュンとした男性も多かった。「4兄弟はもちろん、ほかにも見習い店員が山田孝之だったり、いま見ると男性陣が異様に豪華キャストで竹内結子がうらやましくなる」(神奈川県・47歳)。やっぱり、夏ドラマにはイケメンが必須ってことですかね。
夏ドラ夏休み系
'97年
『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)
出演/反町隆史、竹野内豊、広末涼子、稲森いずみほか
やっぱイケメンには海が似合う!
女に捨てられたヒモ男(反町隆史)と仕事で大きなミスをしたエリート商社マン(竹野内豊)がさびれた民宿で過ごすひと夏の物語。人生の夏休みをテーマに、海を舞台にイケメンふたりが巻き起こし、巻き込まれる騒動にドキドキしつつ、最後にはじんわりと心温かくなるという、まるで砂浜で波音を聞いているような癒し系ドラマ。「一見さわやかなふたりが、ただグダグダとしている感じがなんかよかった」(神奈川県・51歳)
'07年
『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)
出演/綾瀬はるか、藤木直人、国仲涼子ほか
干物女のラク~な生き方に共感大
“干物女”という流行語も生んだ綾瀬はるか主演のほのぼの癒し系恋愛ドラマ。少女マンガ原作だけに恋愛部分のエピソードもしっかりしているのだが、それよりも同居する古い日本家屋でゴロゴロしている蛍(綾瀬)と部長(藤木直人)の日常生活の些細な描写が楽しく印象的だった。'10年には続編が放送され、'12年には映画化されるなど人気も高かった。「凛々しい綾瀬はるかも好きだけど、縁側での干物姿がいちばん可愛い」(大阪府・47歳)
'19年
『凪のお暇』(TBS系)
出演/黒木華、高橋一生、中村倫也ほか
今の時代の人たちに刺さる再生の物語
天然パーマのアラサーOL・凪(黒木華)が人生のリセットをすべくボロアパートに引っ越したことから始まる再生の物語。ヒロインの凪はもちろん、元カレ役の高橋一生、隣人役の中村倫也のキャラクターも複雑で、恋愛要素のみならず、人間ドラマとしての面白みもあった。「原作をうまくアレンジした傑作。芸達者たちが生み出す世界観がよかった」(千葉県・38歳)。「『すいか』『凪のお暇』と市川実日子さんの出ている夏休み系にハズレはないです(笑)」(カトリーヌさん)
'19年
『セミオトコ』(テレビ朝日系)
出演/山田涼介、木南晴夏、今田美桜ほか
無垢な目で見ると世界は素晴らしい
セミから人間へと変身した青年(山田涼介)が命の恩人のアラサー女性・由香(木南晴夏)と命が尽きる7日間をともに暮らすというファンタジー色の強い人間ドラマ。うつせみ荘というアパートを舞台に住人たちとの触れ合いを描く。脚本は『ビーチボーイズ』の岡田惠和で、『ちゅらさん』『ひよっこ』などでおなじみのアパート住人たちのクロストークも楽しい。「無垢な山田涼介がとにかく美しく、癒されました」(群馬県・35歳)
カトリーヌさん厳選!オススメ夏ドラマ
『マイ・ボスマイ・ヒーロー』は長瀬くんの役がものすごくピュアでバカで、同級生にガッキーがいて、肝試しをしたりと、まさに学園ドラマの王道! ガッキーつながりで『親バカ青春白書』も期待しちゃいます。ただ、ムロさんの役は、亡くなった奥さんがガッキーで、娘が永野芽郁ちゃんという何ともうらやましい状況。ムロさん前世でどれだけ徳を積んだのかって思っちゃいました(笑)。