放送中のドラマ『MIU404』(TBS系)が好調な星野源。7月12日には、ライブハウス『渋谷クラブクアトロ』でソロデビュー10周年記念の配信ライブ『Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”』を開催した。
「TBS系のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌で大ヒットした『恋』、新型コロナウイルスによる外出自粛期間にSNSで演奏し、さまざまなタレントが“コラボ”して話題となった『うちで踊ろう』などを披露しました。コロナ禍のため、星野さんにとっては初めての配信ライブでした」(スポーツ紙記者)
視聴者の一部で不具合が発生
オンラインの動画配信サービスを使い、10万人ものファンが視聴。大成功といえるライブだったが、一部では批判も……。
「画質が荒くなる、動画がカクカクする、アクセスしたのに動画が始まらない、そもそもアクセスできない……という視聴者が一部で出てしまったようです。配信サービスを提供した企業は即日謝罪。配信終了後も視聴できる“アーカイブ期間”を延長する措置をとりました」(同・スポーツ紙記者)
星野の配信ライブに先立って、6月25日には事務所の先輩であるサザンオールスターズが『横浜アリーナ』で配信ライブを行っている。こちらも星野と同様に会場は無観客だ。星野以上の18万人もの視聴者を獲得したことが話題となったが、別段、視聴に関してのトラブルは見られなかった。
「サザンの場合は、機材トラブルなどの可能性も考えて当日の昼間に収録をしていました。夕方ころに撮り終えて急ピッチで編集、午後8時からのスタートに間に合わせたのです。配信がスムーズにいったのは、そういった側面もあったからだと思いますよ」(レコード会社関係者)
とはいえ、なぜ星野だけに批判が起きてしまったのだろうか。
「大きな違いは、配信元が単独だったのか複数だったのかという点ですね」
そう話すのは音楽ライターの加藤雄一さん。
「星野さんのライブで起きた接続障害は、配信直前にチケット購入が集中したことが原因だったようですが、大前提として『ZAIKO』という動画配信サービス1つを使っての配信でした。逆に、サザンは『ABEMA』、『GYAO!』、『新体感ライブCONNECT』、『PIA LIVE STREAM』、『U-NEXT』、『LINE LIVE』、『ローソンチケット O-チケ』、そしてファンクラブの『サザンオールスターズ応援団』と、8つの配信プラットフォームを使っていました。1つ対8つですからね。視聴者がアクセスしたことでかかる負荷は、当然複数のプラットフォームを使った場合のほうが軽減されます」(加藤さん)
その証拠に、星野が使っていた『ZAIKO』というプラットフォームでは、ライブへの集中アクセスにより、同時間帯に配信を行っていたほかのアーティストにも影響が出てしまっていた。
「直前にチケット購入が増えてしまったという、ある種のうれしい悲鳴があったかもしれませんが、大部分は事前に視聴券となるチケットの購入を済ませているわけです。つまり、“どの程度の人が同時に視聴するのか”を把握できたはず。もう1つ別ルートを用意し、せめて2つのプラットフォームを使うだけで全然違っていたのではないかと思いますね。今後こういった事態を避けるためには、やはりいくつかのプラットフォームを用意することで視聴者を分散することが必要となってくるでしょう」(加藤さん)
ライブ配信はめちゃくちゃ儲かる?
星野の配信ライブの視聴チケットは3500円(税込み)で、サザンは3600円(税込み)。ライブの売り上げは、単純計算で星野が3億5000万円(3500円×10万人)、サザンが6億4800万円(3600円×18万人)となる。この莫大な売り上げに対して、ネット上では「すさまじすぎる」「めちゃくちゃ儲かってる」という声もある。しかし、実情はそうでもないようだ。
「取り分についての契約はアーティストごとにさまざまではありますが、星野さんやサザンといった人気アーティストであれば、ライブは全国各地の複数会場で行うことができます。では、配信の場合は、ツアーに集まった総観客動員数を超えることができているのでしょうか。たとえば、昨年に開催された星野さんのドームツアーは5か所8公演で、総観客動員数は33万人。今回の配信ライブの3倍以上になります。ちなみにチケット代は8500円で、グッズ販売もあります」(加藤さん)
明らかに、通常のライブツアーを開催したほうが、アーティストにとっては大きなお金が入ってくることになりそうだ。
「配信ライブを行うためには当然、お金がかかります。会場代やスタッフの人件費だけでなく、プラットフォームに支払う利用料も発生します。配信のほうが儲かるというわけでは決してないでしょう。そもそも、サザンに関しては今回は“感謝”の配信ライブであり、収益の一部は事務所を通じて、コロナウイルスの治療や研究開発にあたっている医療機関へ寄付されます。
配信ライブはコロナの影響もありますが、日本全国、世界も含めてどこにいてもライブが見られ、またリアルのライブよりもチケット代が安くなるので、ファンにとっては非常に便利なものです。今後は観客を入れた“リアル”のライブと配信ライブを使いわけたり、リアル+配信を同時に行うといったスタイルが加速していくでしょうね」(加藤さん)
コロナウイルスの影響は、当然アーティストにもふりかかる。アーティストもファンも、双方が笑顔でライブを楽しめる日はいつになるのか──。