藤森慎吾

 オリエンタルラジオ・藤森慎吾と言えば、「チャラ男」というイメージがあるかもしれないが、このところ次々に異なる姿を見せてジワジワと話題を集めている。

その“男気”に絶賛の声

 その筆頭が毎週土曜午前から昼すぎにかけて放送されている『王様のブランチ』(TBS系)。6月に佐藤栞里が声を詰まらせながらアンジャッシュ・渡部建の不在を伝えたとき、藤森はカメラ目線で「栞里ちゃんにこんな顔させんじゃねーぞ! 本当に。何だよもう……バカヤロー!」と怒りをあらわにした。

 本当はいち早く楽しいムードに切り換えたかったところだが、我慢できずに感情を爆発させた藤森の姿に「男気がある」「チャラ男とは真逆でカッコよかった」と絶賛のコメントが殺到。これ以降、一人で重責を担うことになった佐藤を支えるべく、陽気なキャラクターで渡部不在の番組を支えていることも含め、藤森には“人情味あふれる男”という印象が加わった。

 さらに藤森は8月1日にスタートした土曜深夜のドラマ『13(サーティーン)』(東海テレビ・フジテレビ系)にも出演。しかも、主人公の百合亜(桜庭ななみ)を13歳のときから13年間にわたって誘拐・監禁した極悪犯・黒川一樹を演じている。

 黒川を演じる藤森はトレードマークのメガネを外し、全身から怪しげなムードを醸し出していることもあって、「全然気づいてもらえない」という。「ほとんどやったことがない」という悪役に挑み、しかも別人にしか見えないほど陰の佇まいがハマっているのだ。

 つまり藤森は、「昼は渡部不在をカバーする男気を見せ、夜は不気味な誘拐犯を演じる」という土曜昼夜で真逆の顔を見せている。ここまではタモリの助言によって生まれたチャラ男キャラに頼るような活動が多かったが、ついにその才能が開花したのかもしれない。

EXITが「チャラ神様」と慕う理由 

 そのほかにも、“脱チャラ男”を思わせるものがある。それは飛ぶ鳥を落とす勢いの後輩芸人・EXITとのエピソード。11日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ系)にゲスト出演した藤森は、EXITのことを聞かれたとき、うれしそうに彼らのことを語りはじめた。

「ネタがすごく面白い」「彼らはボキャブラリーがすごい」「僕は『キミ、かわうぃーね』っていうワンフレーズだけで勝負していたので」と自虐を交えつつEXITを絶賛。「仕事上のライバルではないか?」と意地悪な質問をされたときも、「ライバルというより、最近多いのはEXITがスケジュールNGだった仕事が僕に来る。ありがたいです」と再び彼らを持ち上げつつ笑いを誘った。

 このところの藤森は、「求められたらチャラ男キャラを見せる」というスタンス。「チャラ男キャラは後輩のEXITに譲る」ような形を採り、恨みごとは一切言わず、先輩風を吹かせることもない。そんな藤森をEXITは「チャラ神様」と呼んで慕っているようだが、それも当然だろう。

 また、藤森には今をときめく元カノ・田中みな実に関するコメントをいまだに振られることも少なくないが、そのときも嫌な顔ひとつ見せず、さりげなく彼女を持ち上げている。「EXITや田中みな実の人気に便乗しよう」なんて器の小さい姿はみじんもなく、そっと背中を押すようなスタンスに、あらためて業界内で評価されているという。

 藤森は『13』の公式ページで「今後も前のめりで俳優業を続けていきたい」と語っていた。これほど重要かつ難解な役柄は藤森にとって初めてだが、人々が抱くイメージとは真逆の役柄を好演したことで、オファーの幅が広がることは間違いない。

 もともと藤森はお笑いに限らず、バラエティー出演、音楽活動、演技、声の仕事など、「何でも挑戦していきたい」と公言する前向きなタイプであり、いずれも非凡な才能を見せてきた。あらゆる仕事に飛び込むノリのよさと、そつなくこなす器用さがある藤森なら、今夏の活躍を受けてますます多種多様なオファーが舞い込むのではないか。

 一方、YouTubeに活動の軸を移したオリエンタルラジオの相方・中田敦彦とは月1回程度しか会う機会がないようだが、折にふれて「あっちゃんは……」と語るなどコンビ仲は極めて良好。早ければ秋、遅くとも年末年始のネタ特番あたりで、オリエンタルラジオとしての雄姿も見せてくれるだろう。

【コラムニスト・テレビ解説者】
木村隆志(きむら・たかし)
雑誌やウェブに月間20本強のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)などに出演し、各番組のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、新番組と連ドラはすべて視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)『話しかけなくていい!会話術』(CCCメディアハウス)など。