「周りには“フジコ”と呼ばれていました。すごく優しく紳士的で、職場には彼に思いを寄せていた人も……」
信じられないといった様子で話すのは、容疑者の大学時代にスターバックスのアルバイトで同僚だったという女性だ。
8月9日、女性の同意がないまま堕胎手術をしたとして、岡山県警に逮捕された藤田俊彦容疑者。岡山済生会総合病院に勤務する外科医だった。
病院は逮捕翌日の10日に記者会見を開き、「職員が逮捕されたことは誠に遺憾で、管理者として責任を痛感している」と謝罪した。
◆ ◆ ◆
堕胎した子どもの父親だった
「診察してあげる」
知人女性(20代)から妊娠の相談を受けた容疑者は今年5月17日の日曜日、そう言って勤務する病院に呼び出した。
事件当日は休みだったという容疑者。手術室に女性を連れ込み、麻酔薬で意識をもうろう状態にさせ、病院に無断で人工中絶手術を行った。女性は、
「堕胎するつもりはなかった」
と話しているそうで、藤田容疑者は犯行を認めている。
手術予定もない人間が無断で堕胎手術などできるのかはなはだ疑問だが、病院によると、
「医師であれば薬剤を入手できた可能性がある」
とのことで、医師の立場を悪用すれば、人目につかない診察室で犯行は可能だった。
なぜ、人の命を守る立場の人間がこんなことをしたのか。
事件後の報道では、藤田容疑者は堕胎した子どもの父親らしいことが判明した。しかし、彼にはその女性のほかに、同棲中の婚約者がいたという─。
看護師と婚約中だった
岡山県で生まれ育った藤田容疑者。父親と兄も医師という優秀な一家だ。
「ご兄弟そろって頭がよく礼儀正しい。家族仲もよさそうでしたね」(実家の近隣住民)
生家があるのは小高い丘の上にある閑静な住宅街。10年ほど前に若くして母親が亡くなり、子も巣立ったことでひとり暮らしとなった父親は2~3年前に引っ越した。生家は現在、空き家となっている。
父親が医院を経営しており裕福な家庭だったようで、前出のスタバの元同僚は、
「医学部の勉強が忙しかったみたいで、シフトが入っていたのは週に2回くらい。香川県の大学で学生のひとり暮らしでしたが、フジコさんの部屋は60平方くメートルらいのファミリー向けマンション。テレビも大きかったです」
と、悠々自適な藤田容疑者の学生生活を振り返る。
「バイト中、私がバタバタしているとき、知らない間に注文の品を作ってくれて。それをあえて自分で言わないのでカッコよかった。当時の同僚の名前はあまり覚えてませんが、フジコさんはフルネームまでバッチリ覚えています」(前出・スタバの元同僚)
大学時代はテニスサークルに所属し、医学部の勉強と文武両道を貫いた藤田容疑者。社交的で気遣いもできるため自然に周りに人が集まっていたという。
2012年に大学を卒業した後、岡山県で2年間の研修医生活を経て広島の病院に赴任。
「勤務中もまじめで、いつもニコニコ。とても熱心に医業に取り組んでいて、先輩の医師にもかわいがられていました。悪い評判は聞いたことがありません」
そう語る広島の病院時代の同僚もまた、事件を信じられない様子だ。当時の同僚からは「(今回の事件について)相談してくれれば」「何とかしてあげたい」といった声が上がっているという。
順風満帆だった藤田容疑者の医師人生。フィアンセがいたことは周知の事実で、小学生時代の同級生は、
「今年の3月くらいに、“もうすぐ結婚するんだ”と言われましたね」
と今回の事件に驚いた様子だった。また藤田容疑者を知る知人男性によると、
「藤田さんは'17年、現在勤務する岡山済生会総合病院へ異動となり、地元に帰ってきました。広島の病院時代に同僚だった看護師の方と婚約されていて、初めは遠距離恋愛だったみたいです」
婚約者は藤田容疑者より少し年下で、とにかく美人で評判だったという。知人男性が続ける。
「初めは彼女さんが通いで岡山に来ていたのですが、1年ほど前に広島の病院を退職し、岡山で同棲を始めていました。引っ越し後は専業主婦のような形で、藤田さんを支えていましたね。一緒に近所のイオンの前を歩く姿はよく見かけました」
2人は済生会総合病院から近い高級マンションで愛を育んでいた。
結婚を間近に控えていたさなかに発覚したのが今回の事件だった。
「事件後も何回か藤田さんと会っていますが、普段と全然変わらない様子でしたね」(前出・知人男性)
浮気がバレての破局は以前にも…
なぜ、藤田容疑者は浮気相手の女性との間に子どもができたことを正直に打ち明けず隠蔽を図ろうとしたのか。それには苦い過去の“経験”が影響していたようだ。
知人男性によると、
「藤田さんは岡山の研修医時代にも、同僚の看護師さんと交際していました。彼はとても面食いで、当時の彼女さんもかなりの美人。でも、あることがキッカケで藤田さんはフラレてしまって……」
ひと呼吸おいた後、続ける。
「実は、藤田さんの浮気が当時の彼女さんにバレてしまったんです。決して手あたり次第に女性にアプローチするタイプの人ではないのですが、いろいろな女性と交わりを持ちたいという願望は持っていたのかもしれません」
身から出た錆とはいえ、フラレた当時は相当に落ち込んでいたという藤田容疑者。ちなみに、容疑者をフッた彼女はその後、関西で学校の保健の先生になったという。
「今回、婚約者がいる中で別の女性との間に子どもができてしまった。もしかすると、あのときのことが頭をよぎったのかもしれません。浮気がバレたら、婚約している女性が去ってしまうと考えたんですかね……」(知人男性)
犯行時はまだ妊娠2か月で、焦らず誠意をもって話し合えば、強引に中絶を行う結果は避けられたはず。浮気の発覚を恐れたとはいえ、なぜそれができなかったのか。
「フジコさんほど優秀な人なら、事件が後々に明るみになることは予測できたはずなのに。今でも信じられないです」(前出・スタバの元同僚)
2人の女性の人生を大きく狂わせてしまった藤田容疑者。今後、どう責任をとっていくのだろうか……。