生きること、それは反省と後悔の連続。全裸俳優として人気を博し、文春砲の標的になった原田龍二もまた、数奇な人生をたどっているのかもしれない。今回、そんな原田と時をともにするのは、タレントの安達有里だ。女優・安達祐実の母としてステージママと呼ばれ、ヘアヌード写真集の発売で世間の耳目を集めた彼女の素顔とは─。
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原田 今日はよろしくお願いします!
安達 よろしくお願いします。初めましてですね。
原田 そうですね。(安達)祐実さんとは、何度か一緒にお仕事させていただいてます。以前は「ステージママ」と呼ばれていましたよね。
安達 はい。でも、自分自身は「ステージママ」を意識していませんでした。小さいころは祐実の送り迎えがメインで、撮影中もずっと見ていたわけではなく、控室やロケバスにいましたね。
原田 極めて自然な距離感ですね。僕のイメージする“ステージママ”は安達さんと正反対で、お子さんにピッタリくっついている印象です。撮影でも「そこから撮らないでください」なんて口を出すお母さんも多いんですよ。
安達 私は何も言わなかったなあ。祐実の体調やスケジュール管理など母親としての役割が求められていると思っていたので。現場は監督やカメラマンさんのものですからね。
でも、ときどき監督さんに「この笑顔で大丈夫ですかね?」って聞かれることもあって「私でわかるくらいなら自分で撮るっつーの!」と思ってました(笑)。
原田 本当におっしゃるとおり、そこはプロの領域ですよね。一見ほったらかしに思えるけど、そのおかげで、祐実さんは子役時代から現場でいろんなことを吸収できたんだと思います。今も彼女が第一線で活躍しているのが、何よりの証拠ですよ。
安達 そうそう。子どもは勝手に育ちますからね。大げさな言い方をすると、私がいなくても生きていけるのが理想です。親が1から10まで決めていたら、いざ親がいなくなったときに困るのは子どもたちですから。
原田 僕も同感です! 親が全部決めるのが子どものためだと思っている人もいますが、まったく逆ですよね。
安達 そう思います。ただ、大人になった子どもたちは全部決めちゃうので、私の意見はまったく聞いてもらえなくなりました(笑)。
原田 うれしいような、悲しいような。でも、それもひとつの理想的な関係ですよね。
直接、文句を言いにくる人間はいない
原田 前置きが長くなりましたが、この連載は反省や後悔をテーマにしているんです。
安達 反省や後悔……。「あんなこと言わなきゃよかったな〜」と思い返すことはあるけど、やっちゃったもんはしょうがないので、あまり思い詰めないようにしてます。
原田 さっぱりしてますね。
安達 でも、いろいろ割り切れるようになったのは、だいぶ大人になってからです。最近は人間関係で悩むのもやめました。昔は無理して苦手な人とも付き合ってたけど、老い先短い私の時間を苦手な人に使うのがもったいないので、適度な距離をとるようになりましたね(笑)。
原田 たしかに、時間がもったいないですよね。苦手な人といえば、最近ネットの誹謗中傷が話題ですが、安達さんはSNSとか見ますか?
安達 うーん、自分からは見に行かないけど、私のフェイスブックやブログに書き込まれた悪口は目に入りますね。「祐実ちゃんがかわいそう」とか「私のお母さんだったら耐えられない!」とか書いてあるけど、私はアナタを産んでないし、って思います(笑)。私なら嫌いな人のSNSなんか絶対に見に行かないから、本当に不思議。
原田 僕も見ないです! 文句があるなら、タイマンでやろうぜっていう感じで生きてきたので。本当に強いやつは会いに来ますからね。
安達 そうそう! 直接文句を言いに来たら話聞きますけど、誰も来ないですね。
原田 来ないですねえ。向こうもただの暇つぶしなんでしょうね。
安達 そうですよね。でも、誰に対しても傷つくようなことは言わないほうがいいと思います。
原田 僕、世の中のゴシップにはあまり興味がないんですけど、安達さんがヘアヌード写真集を出版されたときのインパクトは覚えてますよ。
安達 アハハ! その結果、奔放なイメージが定着しちゃいましたよね。でも、自分で言うのもなんですけど、けっこうちゃんとしてるんですよ(笑)。
原田 それはそうですよ! マネージャー業は奔放では務まらない仕事だと思います。ちなみに、どんな経緯で出版に至ったんですか?
安達 始まりは、芸能関係の仲間とのたわいない冗談だったんですよ。ちょうど祐実が最初の結婚をしたころで「祐実ちゃんも結婚して手が離れたし、何かすればいいのに」と言われて考えていくうちに、写真集を出そうって盛り上がったんですよ。でも、ただの写真集じゃ売れないから脱いだほうがいいって言われて「じゃあ脱いじゃう!?」みたいな(笑)。完全に文化祭ノリです。
原田 アハハ、せっかくなら売れたいですよね。
安達 そのときはまったく本気にしてなくて、すっかり忘れていたんです。だって、ありえないじゃないですか!
原田 普通はそう思いますよね。
安達祐実の反応は「ケロッとしていた」
安達 でも、仲間のひとりが出版社に話をして、実現しちゃいました。打ち合わせに行くと担当者とかカメラマンとかたくさんの人がいたので、さすがに覚悟を決めましたね。まあ、服を着ていようが脱いでいようが、記念にはなりますからね!
子どもたちにも、雑談の段階でヌード写真集の話をして「やればいいじゃん」って言われてたので、まあいっか、と。
原田 全体的に軽い……!
安達 子どもたちも本気にはしてなかったんでしょうね。私もバレないと思ってました。
原田 さすがにバレますよ!
安達 口止めされてたから、撮影中は家族にも隠したんですよ。撮影旅行で伊豆に行くときに「どこ行くの?」と聞かれても「ちょっと旅行」としか言えなかったし(笑)。
原田 ちょっと、どころじゃないですよね(笑)。
安達 そんな感じで私は苦労して隠し通したのに、誰かが週刊誌にリークしちゃったんですよ!
原田 たしかに、相当話題になってましたよ。実際にできあがった写真集を手にしたときはいかがでした?
安達 カメラマンさんの技術ってすごいな、と感動しましたね。別人かと思いました。撮影中も楽しかったから、いい思い出ですね。
原田 人気女優のお母様がヌード写真集を出すのは、唯一無二ですよね。
安達 そうだといいなあ。とはいえ、大騒ぎになってしまったので、祐実の事務所に謝りに行きました。
原田 なるほど(笑)。お子さんたちは写真集についてなんて言ってました?
安達 驚いてましたねー。ただ、当時中学生だった次男が私のせいでイジメられたら困るから「何かされたらお母さんに言ってね」と伝えたら「大丈夫! 学校の掲示板にポスター貼ろうか?」ですって。祐実も「タイトルつけようか?」なんて、ケロッとしてたし。
原田 なんだか、とてもユニークなご家庭ですね……!
安達 そうかもしれないです。息子たちの友達もよく出入りしてるし、とにかく賑やかな家ですね。そういえば、この前、息子の元同級生が遊びに来たとき、「実は、お母さんの写真集買ったんですよ」とカミングアウトされました。
原田 十数年越しの告白ですね!
安達 さすがに私も笑っちゃいましたよ。なんだか、あんまり反省してない話ばかりで申し訳ないです(笑)。
原田 いやいや、パワーをいただけました! ありがとうございます。
【本日の、反省】エネルギッシュでパワフルな女性でした。それでいて、とてもバランス感覚がいい。安達さんは“お母さん”という自身の役割を深く理解して現場では口出しをしない、理想のマネージャーさんだと思います。それは、お子さんとの関係にも通じていて、適度な距離を保ってきたんだと思います。今の祐実さんの活躍を見れば正しい接し方だったのがわかりますよね。お話がとてもおもしろかったので、息子さんのお友達が遊びに行くのもわかりますよ。
《取材・文/大貫未来(清談社)》