『週刊女性』で好評連載中の「田村淳のアニメお遍路日記」。今回は『劇場版「SHIROBAKO」』より、宮森あおい役の木村珠莉さん、宮井楓役の佐倉綾音さん、そしてアニメーション制作会社P.A.WORKSのプロデューサー、相馬紹二さんと夢のトークが実現! 作品の魅力だけではなく、裏話まで熱く語ってくれました!

ホスト役の田村淳をはさんで、左が宮森あおい役・木村珠莉さん、右が宮井楓役・佐倉綾音さん。P.A.WORKSの相馬紹二プロデューサーは富山本社からリモートで参加
*『劇場版「SHIROBAKO」』あらすじ
 いつか必ず、なんとしてでもアニメーション作品を一緒に作ろうと、ひょうたん屋のドーナツで誓いを立てた上山高校アニメーション同好会の5人。卒業後それぞれが、それぞれの場所でアニメーション制作に携わっていく。宮森あおいは『えくそだすっ!』『第三飛行少女隊』の制作を経て、少しずつ夢へ近づきつつ、徐々に自分の本当にやりたいことを考え始めていた。あれから、4年。日々の仕事に葛藤しながら過ごしていたあおいは朝礼後、渡辺に呼ばれ新企画の劇場用アニメーションを任されることになる。しかし、この企画には思わぬ落とし穴があった。今の会社の状況で劇場用アニメーションを進行できるのか? 不安がよぎるあおい……新たな仲間・宮井楓や“ムサニ”メンバーと協力し、完成に向けて動き出す。果たして、劇場版の納品は間に合うのか――!?

 

8月28日(金)より一部劇場にて特別映像付き再上映されることが決定。本編は公開時よりグレートアップした内容となり、上映後には出演キャストによる特別映像が2種上映される。
※詳細は公式HP http://shirobako-movie.com/news/#news_241

気持ちが動いたのがすごくわかるシーンが多い

──『劇場版「SHIROBAKO」』を視聴してみて、いかがでしたか。

田村:『SHIROBAKO』はテレビアニメシリーズから見てます! 劇場版では、さらにアニメ制作現場の大変さが浮き彫りになっていましたね。主人公の宮森あおいが孤軍奮闘するシーンは見ていて勇気をもらえました。僕も今いろんなことをやっているので、「これやめようかな……」と思っていたときに、『劇場版「SHIROBAKO」』を思い出すと、「いや違うな、もう1歩前に出ないと意味がないな……」と背中を押されるような気がします。

 武蔵野アニメーションの社長のカレーを食ってるシーンを見て、「あーわかる。こういうのあるよね」と思ったんですよ。お世話になった人からの、ちょっとしたひと言とかアドバイスで、ぐっと前に押されて感極まっちゃうことってあるじゃないですか。それをこの作品で見たんですよ。社長が作ってくれたカレーに心情が反映されている気がして、体内に入って込み上げてくるものがある、みたいな。あそこのシーンはめちゃめちゃ好きです。

──『劇場版「SHIROBAKO」』の見どころは。

(c)2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

相馬:今回の劇場版はアニメを作るだけではなくて、それぞれのキャラクラーがどういう想いを持っているのか、そういう部分をテレビシリーズのときより表現できたのかなと思っています。劇場版ではミュージカルシーンをちょっと入れていて、非常に効果的だったなと。アニメーションを作る楽しさを宮森あおいが思い出していくような。アニメーションならではというか、なかなか実写だと難しいような表現も、今回は入れられたんじゃないかな、と思っていて。そこは、ぜひ劇場版で見ていただきたいポイントかな。

木村:私は『なめなめろう』の絵を描いて、その絵が動き出すシーンです! 宮森が「圧倒された」みたいなセリフを言うんですけど、アフレコ現場では映像ができあがっていないので、そこまで実感が伴っていなかったんです。ただ完成した映像を見たら、ミュージカルシーンもそうですし、なめなめろうのシーンも本当に、言葉じゃなく心に入ってくるシーンでした。感情的に、パッションっていうんですかね! 気持ちが動いたのがすごくわかるシーンが多くて。それってやっぱりアニメーションの力ですね。

田村:あのシーンはいいですよね。子どもがアニメの面白さに気づくシーン。

木村:最初は興味なさそうだった子どもたちが、アニメの魅力に気がついて夢中になっていくあのシーンはすごく好きです。あと、宮森視点でいうと、テレビシリーズの宮森って主役なんですけど、演じていて主役に思えなかったんです。なんだか視聴者側に立ってくれている子、みたいなイメージだったんですけど、今回は自分で難しい道を選ぶシーンがあって。

田村:喫茶店で即答するシーン! めっちゃかっこよかった!

木村:宮森がモヤモヤしているところから脱したい、って気持ちが伝わってきました。そこを選んで前へ進んでいくぞっていう姿が、テレビシリーズのときよりも、なんだか主人公の器になったなぁと感じました。

佐倉:私は劇場版からの参加だったので、テレビシリーズを全部見てから臨んだんですけど、まず最初に、テレビシリーズに比べてなんか暗い……。

一同:笑

佐倉:ちょっと暗いはじまりだなって思ったんです。劇場版って、もっと華々しくて、スクリーンで宮森たちが活躍するのを想像してたので。けど、それって現実もわりとそんなもんなんですよね。うまくいっている時期もあれば、うまくいってない時期もあるのは当たり前ですよね。

 そんな中で本作初登場の宮井としては、やっぱり最後、宮森と2人で交渉へ切り込んでいく着物のシーンが印象に残っています。モノづくりをしてる人って、どこかやっぱりロマンを信じてるし、そういうものに助けられながら生きていきたい、っていうのがあるのかなと思います。自分たちをフィクションの世界に投影しながら頑張る瞬間って、私たちもリアルに「あったらいいな」とも思うし、「ある」気がする。そう思うと、あのシーンは収録のときも2人ですごく気合いをいれて収録しました。でも切り込みのシーンも全部、絵ができていなかったので……。

田村:そうなんだ! じゃあ、あそこの掛け合いは、絵がわからないまま表現していたんだ。

佐倉:わからないままです。でも、それに合わせてくれた作画のみなさんがすごい! ありがたいですね。

『週刊女性』で「田村淳のアニメお遍路日記」を連載中の田村淳の言葉に耳を傾ける3人(相馬Pは淳の隣に置かれたパソコンの中です)

ムサニみたいな現場がホントにあったら……

──『SHIROBAKO』の中で好きなキャラクターは誰でしょうか。

田村僕は断然、木下監督ですね。監督の苦悩が一番身近に感じられました。責任重大だけど、クリエイターとしての自分の味を出したいところ、チームをまとめなきゃいけないところ、クオリティーに厳しいところ。でも自分に甘いところが、一番人間だなぁと思いましたね。そんな監督をただ注意するのは簡単だけど、『SHIROBAKO』は、監督が右往左往するのをみんなで支えてチームが1つになっていく、その群像劇がたまらないんですよ。とはいえ、最初はあんまり監督を好きじゃなかったけど(笑)。

木村:私は自分が演じていないキャラクターだと、脚本家を目指している今井みどりちゃんが好きです。覚悟が決まってるというか、すごく芯が強い子として描かれていて。特にテレビシリーズのとき、原画担当の安原絵麻ちゃんとのやり取りで、「りーちゃんは怖くないの?」っていう質問に「脚本家になれないほうが怖いです」って言うセリフがめちゃめちゃ好きで、りーちゃん(今井みどり)はカッコいいなって思いました。

佐倉:私はちょっと対極にいる2人で、制作進行の高梨太郎と撮影監督の佐倉良樹さんです。何も言わずに「大丈夫、やってみせる」って仕事で応えていく佐倉さんタイプの人。うだうだと口だけなんだけど、みんなに支えられてやっていけてる高梨タイプの人。なんか、どっちも現実の世界で見たことある気がする! って思ったんですよね。でも、どっちも憎めないし、どちらも人間味があって、そこがいいんです。

相馬僕ら業界人からすると、平岡大輔っていうキャラクターが一番リアルで共感できますね。彼は挫折的な感じで1回アニメを作ることへの情熱が冷めちゃってるんです。ただ、そこから高梨たちと一緒に仕事をすることで、もう1回、業界で頑張っていこうって気持ちが再燃するんですよ。劇場版だと、宮森あおいの車に乗って会社まで送ってもらうシーンくらいしか目立ったところはないんですけど(笑)。

 でも、あそこも実はすごく重要で。あおいが思い悩んでいるときに、「おまえも頑張れよ」って言うシーンがありますが、あれは僕らも、会社が違っても仲間みたいな人たちっているんですよね。ああいうふうに自分がつらいときに、ちょっとしたひと言を言ってもらえると背中を押してもらえるんです。だから僕は平岡が好きです。

──“アニメ作品を作るプロデューサー”ってどんな気分でしょうか?

相馬:みんなでチーム感を出して盛り上がって、最後完成させる、っていうのを描いてますけど、実際の現場でも、そこにいくまでって、アニメーションで描き切れないほど、いろんなことがあります。そのたびに「ムサニいいな」ってすごく思うんですよね。彼らはすごく優秀なので。ムサニみたいな現場がホントにあったら楽だな、って思うときがあります。現実だと太郎みたいなのしかいないから(笑)。

一同:笑

田村:彼(太郎)ばっかりじゃ成立しないですもんね(笑)。

相馬:そうですね(笑)。

田村:『劇場版「SHIROBAKO」』の最後で、「いや、もう1回気になるところ、あそこまで立ち返ってやりなおそうよ」みたいなシーンがあるじゃないですか。あれは実際の現場でもあったんですか?

相馬:アニメーションって、1回作って1回撮影をして終わりではなくて、よりよくするためのブラッシュアップ作業っていうものが結構あるんですね。監督の求めているレベルは高いので、そこにたどり着くまで何度もやる。テイク1、テイク2みたいな感じでやり直す作業は、すごくたくさんあったので、ある意味、作り直すに近いようなことはありました(笑)。

田村:へー! でも戻るのって大変そう……。

「めちゃくちゃ怖いですよ」「同じ人間に思えないです」──巨大なパワーを感じる相手とは

もう全員、敵に見えます、完全に!

──『SHIROBAKO』には声優を目指すキャラクター、坂木しずかさんがいますが、声優のおふたりは、このキャラクターに共感できるポイントなどはありましたか。

木村:テレビシリーズのときのずかちゃん(坂木しずか)が、オーディション会場に行って「あ! ◯◯さんがいる! じゃあ私は無理だ……」みたいなシーン、新人のころ同じような気持ちになったことがあるので、すごくわかります。オーディションで思ったように演技できなくて、泣きながら帰ったこともありますし、初期のずかちゃんは、共感するところが多かったです。

田村あんな殺伐とした感じで、淡々とオーディションって進むものなんですか?

木村:淡々してるけど、慣れてしまえば殺伐としてないですね。

佐倉殺伐としてるって勝手に思ってるだけなんですよ、新人声優は(笑)。

木村:そうなんですよ!

佐倉:だから今もオーディションに参加すると、たぶん同じ空気のはずなんですけど、こっち側の感じ方ひとつで殺伐ともとれるし、別にとてもスムーズにただ時間が過ぎていってるとも感じるので。あれはただの呪縛ですね、ずかちゃんの(笑)。

田村:なんか、あのスタジオの向こう側の人って、狭いところにギュッといるじゃないですか。偉い人が塊でいると巨大なパワーを感じません?

佐倉もう全員、敵に見えます、完全に。「悪いヤツ」「悪いヤツ」「悪いヤツ」みたいになります(笑)。

田村:新人は特にそうだよね。

木村:めちゃくちゃ怖いですよ。

佐倉同じ人間に思えないです。

木村:「今、あいさつしたのは間違いだったかも」とか「タイミング間違ったかな」とか、いちいちすべてのことが気になって、落ち込む日々でした。

──淳さん、声優の経験はありますか?

田村:あります。僕はオーディションとかがなくて、タレント声優と言われる人たちの枠にポン、といきましたね。声優さんの所作みたいなのに困惑することはありましたけど……。

木村:みなさんで収録されたんですか。

田村:みんなで録ってたんです、最初は。だけどスケジュールが段々合わなくなってきて1人で録ってくれるようになって。そのときのほうが演技しやすかった(笑)。

──この業界を目指した理由はなんですか。

木村:こんなこと言ったらNGかもしれないですが、もともとナレーションをやりたかったんですよ。もちろん、今もナレーションをやりたいんですけど。ずっと放送部だったので声を使うお仕事をしたいなと思っていて、『情熱大陸』の窪田さんとかのナレーションを聞くと、「ナレーターいいな」と思って。うちの事務所がけっこう老舗で、ナレーションがうまい方が多くて、ホームページも地味めでなんかいいなと思っていました。そこでお芝居の勉強をちょっとずつさせてもらってから、声優もやってみたいな、という気持ちが増えて。

 でも、あんまりやったこともなかったし、お芝居を習っては先生からはダメ出しをされまくって……。向いてないなーって落ち込んでいたときに、『SHIROBAKO』が決まったんです。そのときは本当にアニメに1回だけ出たことがあるくらいの声優だったので、嘘なんじゃないかな? ドッキリかなんかじゃないかな? って思うくらいびっくりしました!

田村:最初はそんな感じなんですね。

木村:そんなもんでした、私は(笑)。

佐倉:私もあんまり書けるかわかんないんですけど、中学生のときに裏方さんの仕事を見てみたくて、劇団に入ったんですけど……セリフを覚えるのがイヤすぎて(笑)。そのときボイストレーニングの先生に「声を使った仕事につくのがいいんじゃない」と言われて、「あ、じゃあ、劇団辞めます!」って声優事務所に入りなおしました(笑)。私も最初はナレーションとかをやりたかったので、あまりアニメって見たことなかったんです。それまではアニメは1週間に30分しか見ちゃダメって家庭だったので……。でも事務所がアニメ強かったので、今ではこんな感じに(笑)。

自分を奮い立たせるためのセリフ

──『SHIROBAKO』の印象的なセリフで「万策尽きた!」というのがありますが、みなさんが万策尽きた、と思ったときは、どうされますか?

佐倉:万策尽きたら……。私、世界で一番信用しているのは“時間”なんですけど、時間がたつのを待つ、ですかね。時間だけなんで、絶対信用できるのは。

木村:闇を感じる(笑)。

佐倉:嫌なことを考えないようにしようって時点で、考えてるんですよ。それを本当に解決してくれたり、いい方向に持っていってくれるのは時間だけです(笑)。その間、自分にできることをやって……善処するみたいな感じで、時間のことをずっと考えてます。3日たった、5日たった、1週間たった、という感じですね。

木村:私は「万策尽きる」っていう経験がそんなになくて、1個だけ思い出したのが、中学生ぐらいのときに『ドラクエ7』をやっていたんですけど、冒険の書をラスボス直前で間違って消しちゃって。そのときは頭が真っ白になってお風呂に入って、もう1回電源をつけるっての繰り返しやってましたね(笑)。だから、お風呂に入って頭を冷やす、ですかね。

佐倉:温まってますけど!(笑)。

木村:(笑)。とにかく現実逃避ですかね、私は。立ち向かえないです。

「僕はない! 万策尽きたことがないです」

田村:僕はない! 万策尽きたことがないです。あれは、心の中の声で言うことで自分を奮い立たせるためのセリフだと、見ながら思ったんですよ。口に出すことで、今この状況をきちんと自分の中で俯瞰(ふかん)して見なきゃ、っていうセリフだなと思って。だから好きなセリフではありますけど、本当に万策尽きてる人たちじゃないと思うんですよね。

 僕だって今まで尽きたことないですよ。お風呂に入るとか、頭冷やすとか、時間が解決するとかも「策」じゃないですか。何かしらの策は講じられるんで、尽きてないですよね。尽きるときって生命体として終わってると思います(笑)。

──では最後に相馬さんどうでしょうか? 結構ピンチになる機会が多いと思いますが。

相馬:田村さんがおっしゃったことと僕も一緒で、僕らが万策尽きてしまったら、それって、もう放送できない、公開できない事態なので(笑)。それはやったことはないんですけど、万策尽きないようにどうするかを考えなきゃいけない立場にはいますね。実際、現場で「万策尽きた」っていうときはあるんです(笑)。無理だっていう瞬間は今回の劇場版でも本当に何回もありましたよ。

田村:え!? そうなんですか!

相馬:(笑)。はい。でも、その「万策尽きた」っていうのは、別に作れないとか間に合わないというのとは違って、スタッフの「ここまで作りたい」という理想があるんですけど、それを100%まで全部やれるかっていうと、なかなかできないときもあるんですよね。例えば、テレビシリーズを見ていただいてる方はわかると思いますが、『えくそだすっ!』という作品を制作していたときに、「もう間に合わないからカットの内容を変えましょう!」みたいなシーンがありましたよね。要はカットの内容を簡単にして間に合わせましょうっていう。そういう現場の負荷を下げて、なんとか成立させるみたいな交渉事を延々やっていかないと、なかなか完成しないんです。

 本当は全部100%にできればいいんですけど、それをやっちゃうと万策尽きちゃうことがあるので。そうならないように事前に調整を常にしてるんですけど……。まぁ、正直すっごい頭が痛い(笑)。監督とぶつかることも何度もあるし、監督以外のスタッフとぶつかることもあるので、そういうときは夜中にひとり、机で頭を抱えてます。

どんな業界の方でも、絶対自分に当てはまる

──『SHIROBAKO』が視聴者に伝えたかったことは何でしょうか。逆に、淳さんはこの作品から何を感じましたか。

佐倉:テレビシリーズでは、モノを作ることの楽しさとそのリアルを描いていて、それぞれの役割の人がつまずきながらも最善を尽くして、作品を作っていました。それが劇場版では、みんながちょっと低空飛行になってしまっています。いたはずの仲間は他社へ転職してしまったり……。

 でも、この作品の見せ場って、そこからの“はい上がり”だったりするんですよね。その“はい上がり”と、夢や希望とか誰かの感情を揺さぶる作品、誰かの心を動かすモノを作ったり手伝ったりすることの楽しさ。そういったものがみなさんに伝わったら、たぶんこの劇場版と宮森たちの行動っていうのは、すごく意味をなしてくるのかなと思います。

木村:私は『SHIROBAKO』を通して自分自身が感じたことでもあるんですけど、仕事って山登りだなと思いました。すごく頑張って登って登って「あ、たどり着いた」って思った頂上でも、実はもっと先にさらに高い峰があって……。そういうのを繰り返しながら、みんな仕事をしていくのかなとすごく感じて。

『SHIROBAKO』って、おじさんだったりベテランの人たちが思い悩んでつまずいたりするシーンが多いんですけど、それも『SHIROBAKO』の魅力のひとつだと思うんです。そういうシーンを見ると、今、私の悩みはすごく大きく感じるかもしれないけど、それを乗りこえたら、またさらに高みにいけるかもしれない。そういう勇気をもらえる作品なのかな、と思っています。見てくれた人、それぞれに響くメッセージがきっとあると思うので、それを受け取ってもらえたら、『SHIROBAKO』がまたちょっと違う印象になると思います。

相馬:実はラストシーンで、この作品が伝えたいことをすごく簡潔に言っていると思います。この映画の最後をどう締めようか……って考えたときに、「答え、これだよね」ってなったんです。それが「俺たちの戦いはこれからだ」でした。いわゆる「俺たたエンド」ってやつですね。

『SHIROBAKO』ってアニメ業界を描いてますが、根本的には「働くってどういうことなのか」という意味も込められています。近い業界の方は、より共感してくれる方も多いですし、そうじゃない業界の方でも、自分に当てはまることは絶対あると思うんです。なんでもかんでも長く続けていればいいということではないんですが、いろんな苦悩があって、いいときも悪いときもあるけど、続けていく中で見えていくものも必ずあると思ってます。「俺たちの戦いはこれからだ」って簡単な言葉かもしれないけど、深い意味でも続いていくので、そこを「頑張って続けていこうね」って劇場版では伝えたかったことなんだと思います。

田村:『SHIROBAKO』が他のアニメと圧倒的に違うのは、キャラクターがみんなすごい立ってることだと思うんです。自分自身と近い登場人物が必ずいると思うんですよ。僕はたまたま木下監督に感情移入できましたけど、感情移入できるポイントがいろんなところにちりばめられてるんです。

 その中でも、人とのつながりがないとやっぱり仕事はできなくて、生きていくこともできないんだよってメッセージが根底にあるのかなって。僕は勝手にそう思っています。『SHIROBAKO』を見ると、モノづくりがしたくなるんですけど、それ以上に、人との付き合い方、人との関係性の築き方がすごく大切だな、と思わせてくれる作品でした。

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●田村淳
1973年12月4日生まれ。数々のバラエティー番組でMCを務め、ヴィジュアル系ロックバンド「jealkb」ではボーカルとして精力的にライブ活動も行っている。さらには海外での起業、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科への進学などタレントの枠をこえ活躍の場を広げている。

 

●木村珠莉
福岡県出身の声優、ナレーター。『SHIROBAKO』宮森あおい役のほかに『ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝』(レフィーヤ・ウィリディス役)、『風が強く吹いている』(勝田葉菜子役)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(相葉夕美役)など。

 

●佐倉綾音
東京都出身の声優。『劇場版「SHIROBAKO」』宮井楓役のほかに『Charlotte』(友利奈緒役)、『僕のヒーローアカデミア』(麗日お茶子役)、『BanG Dream!』(美竹蘭)、『五等分の花嫁』(中野四葉役)など。

 

●相馬紹二
株式会社ピーエーワークス富山本社に勤務中。2008年ピーエーワークスに制作進行として入社。『Angel Beats!』で初デスク後、『Another』『有頂天家族』『SHIROBAKO』などでラインプロデューサー、『サクラクエスト』以後はプロデューサーを務める。『劇場版「SHIROBAKO」』で言えば宮森と同じ役割。