海辺の秋山容疑者(本人のフェイスブックより)

「突然、“パン”という音が響いて。見ると、店の前に止めてあった黒いベンツのリアガラスが粉々に割れていました。以前にはうちの窓が標的になったことも……」

 困惑した様子で語るのは、犯行現場である歯科医院の横でヘアサロンを営む男性。逮捕されたのは、隣人のスナイパーだった──。

4年前から同様の被害が47件も発生

 8月13日、器物損壊で逮捕された東京・文京区の歯科医、秋山浩康容疑者(60)。今年の7月26日に、エアガンで路駐する高級車へ鉄球弾を撃ち込んだ疑いがもたれている。

「まさか隣の歯科医院の院長が犯人だとは。いつもヘルメットとサングラスを装着し、黒いハーレーに乗って通勤していました」(前出・店主)

 事件当時の状況はというと、

「被害に遭った高級車の持ち主は外国人で、昼下がりに近くのスーパーで買い物をしていた隙を狙われました」(店主)

 この日は日曜日で、容疑者の歯科医院は休診日だった。

 JR山手線大塚駅近くの現場付近では、4年前から同じような被害が47件も発生していた。

「向かいのヘアサロンも過去に2度、ガラスを撃たれています。隣のホテルも被害に遭いましたし、うちの店も2年ほど前に……。現場には鉄球が落ちていて、修理費は13万5千円でした」(店主)

 同業である近くの歯科医院も被害に遭ったことが。

「4年ほど前、夜中のうちに窓ガラスを撃ち抜かれていました。穴は5センチほどの大きさで、2センチの厚みがある強化ガラスなので、かなりの威力で撃たれたようです」(歯科医院の院長)

被害を受けた近隣の歯科医院の銃痕

 被害者はいずれも秋山容疑者と付き合いはなく、容疑者の犯行かどうかは捜査中だ。

 秋山歯科医院の家宅捜索では院長室などからエアガン22丁、金属弾約7300発が押収された。容疑者は「若いころからエアガンを集めたり改造したりしていた」と供述する一方、容疑を否認しているというが……。

「押収されたエアガンは、30年以上前の古いモデルばかり。威力が強すぎて、現在は規制されていますから、サバイバルゲームやシューティング場で使用すれば即、出入り禁止です。

 規制される前に購入したものをそのまま所持していたのでしょうが、適切に管理していなければ、持っているだけで銃刀法違反に問われますよ」(ガンショップ店員)

 なぜ、そんな物騒なものを街中で発砲したのか──。

海を愛するサーファーだった

 秋山容疑者は1988年に日本歯科大学を卒業した。東京・町田市にある病院勤務を経て、15年ほど前に現在の歯科医院を開業している。

 大学の同級生が、学生時代の容疑者を振り返る。

「学内ではあまり目立つ存在ではなかったです。渋谷区にある実家から通学していて、スキーサークルに所属していました。サーフィンも好きだったようです。当時はまだ頭の毛もフサフサでしたよ」

 自然が好きで、特に海を愛するサーファーだったという容疑者。歯科医になってからも趣味として続けていた。昔よく一緒にサーフィンをしていたという仲間によると、

「毎年夏、仲間うちで千葉県の海に集まって、サーフィンやBBQをしていました。ハワイのワイキキはいいよね、なんて盛り上がったり」

 毎回20代から40代くらいまで30~40人が参加しており、容疑者もその1人だった。

「秋山さんは温厚で、ヤンチャな後輩が少し調子に乗っても、笑って流すような人でした。後輩にもちゃんと敬語で話す謙虚な人なので、みんなに慕われていましたね」

 グループの中では年長者で、お金のない若い人の分まで酒を用意するなど大人の余裕も見せていた。

 その後、集まっていたBBQ場がなくなったこともあり、夏の集まりは消滅。

現場の秋山歯科医院(建物4階)

近年は投資に没頭

 海の大好きだった容疑者も近年は別の趣味に没頭していたようで……。

「老後の資産運用について考えていたようで、一緒に投資を始めました」

 そう語るのは、秋山容疑者とともに投資の勉強をしていたという男性・Aさん。3年ほど前に投資セミナーで出会ったという。

「2人でいつも、情報交換をしていました。当時はお互い始めたばかりで、毎日のように2時間くらい電話したり、家に来てもらったり」(Aさん)

 歯科医で開業医。世間的に見れば生活苦とは無縁のエリートに感じるが、実際はそうでもなかったという。

 Aさんが続ける。

「秋山さんは親の跡継ぎではなく自分で医院を立ち上げているので、現在は返済ずみのようですが、開業資金に1~2億円くらいかかったそうです。近年は診療報酬の改定もあり、歯科医も昔みたいに稼げる職業ではないと話していました」

 過去には別の歯科医を雇っていた時期もあったが、治療方針の相違で衝突し、現在はひとりで診療を行っていた。

生活はかなり荒んでいた

「昼食もとらず、休憩なしで働いていたようです。銀歯の技工も外注せず、休診日の日曜日に自分で作っていましたね。夜も寝ずにカルテを見ていたので、ほとんど休みは取れていなかったはず」(Aさん)

 特に借金があるわけでもない歯科医が、そこまで働く必要はあったのだろうか?

「実はお子さんも現在、私立の歯科大学に通っていて、学費などで年間600万円ほどかかっていたそうです。相当なプレッシャーだったようで、生活はできても、昔のようにサーフィンに行く余裕はなかったみたいですね」(Aさん)

 投資を始めたのも、少しでも生活の足しにしたいという思いがあったようだ。

 普段の生活も不摂生だったようで、Aさんによると、

「“面倒だから”と言って、あまり自宅にも帰らず、医院に寝泊まりしていました。なんとなく、家庭に居づらかったみたいですね。食事は夕方に近所のスーパーで割引弁当を買い、お風呂も近くのサウナですましていたようです」

院長室や倉庫などから押収されたエアガンと金属弾。違法な改造を施したと思われるものも

 切り詰めた生活を続けるうち、次第に追い詰められていったうえでの犯行だったのだろうか……。

 Aさんにも、ここ1年ほどは音さたがなかったようで、

「忙しいのかな、と思っていた矢先に起きたのが今回の事件。久々に映像で見た秋山さんの顔は、かなりやつれたように感じました。前はもっと生気があったのですが、疲れていたのでしょうね……」

 ストレスを発散できず、家庭の悩みもあったのだろうが、八つ当たりで“暴発”してはいけない。