コロナ禍により在宅時間が増えたことから、ねこを飼う人が増えたという。ねこは散歩も必要ないので読者世代にも人気が高いが、ニャ、ニャンと、ご主人さまの健康にも役立つらしい! これは見逃せない情報だニャ~ン!
女医のメンタルを支えるのはねこちゃん
2019年の日本ペットフード協会の調査では、全国のねこの飼育頭数は約977万8000頭。犬の飼育頭数の減少が続く一方、'18年に続いて、ねこの飼育数が犬の飼育数を上回った。さて、急増するねこ飼いたちに朗報! ニャンと“ねこを飼うと健康になれる”というのだ。
専門家に話を伺った。
「ねこは癒しだけでなく、科学的裏づけのある健康効果もあるんですよ」
と語るのは大阪・堺市の小児科林医院の院長・林かおる先生。保護ねこなどを受け入れるために“ねこ御殿”と呼ばれるねこ専用の戸建てを4軒も所有していることで有名だ。今まで受け入れた保護ねこはトータルで130匹以上にもなるというからすごい!
「元気な子は譲渡して、受け入れ先のない病気の子たちを引き取っています。それぞれ食事の種類や量、活動量も異なるので部屋を分けていったら、結果的に戸建て4棟分のスペースが必要になって……もう大変ですね(笑)」(林先生、以下同)
小児科では病気の急変も多く、言葉で症状を伝えられない子どもたちの診察には細心の注意と緊張感が必要だ。そんな彼女のメンタル面を支えているのがねこだという。
「診療前は朝食もとれないくらいに緊張しています。なので仕事を終えた後、ねこたちと一緒に過ごす時間は何よりの癒しですね」
“ゴロゴロ”音はリラックス効果がある
優雅なビジュアルからは想像もできないが「職場では診察、家では猫の世話」と1日中、誰かに尽くす林先生。その姿はまるでナイチンゲールかマザー・テレサのよう! そんな林医師に科学的なねこの健康効果を聞いた。
まずはノドから出る“ゴロゴロ”音。これは25~150ヘルツの低周波で、リラックス効果があるという。
「フランスではロンロン(ゴロゴロ)セラピーという名の治療法があります。書籍やCDも販売されていて、ある病院では庭でねこを飼育し、この治療法を取り入れています。さらにゴロゴロの振動が骨密度を高め、骨芽細胞を活性化。骨折の治癒を早めるため、プロアスリートも治療に取り入れています」
また、モフモフも重要だ。温かく柔らかい肉球やお腹に触れることで現代人が不足しているオキシトシンが分泌される。オキシトシンは、気持ちを落ち着かせるセロトニン、幸せな気持ちになるドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促進させる働きがある。そのほか、心臓病のリスクの軽減、血圧降下などの作用も期待できるという。
ねこは高齢化社会にぴったりなペット
さらに、ねことの生活はメンタル面にも有効だ。ストレス軽減、うつ症状の改善のほか、世話をすることで“自分にもできる”という自己肯定感や自信にもつながっていくという。
「ねこは犬と比べればお世話がラク。毎日の散歩は思った以上に身体や精神的負担になります」
散歩の必要がないねこは、多忙で高齢化が進む現代にはピッタリなのだ。
このように身体と心の健康をサポートしてくれるねこ。『これは飼うしかない!』と思う人も少なくないはず! だが、生き物を飼うにはそれなりの心構えが必要だ。
家ねこでは、20歳以上の長寿となる場合も多く、去勢・避妊手術やワクチン接種、病気の治療費用は、保険はきかず予想以上の高額となる。
愛情をかけることはもちろん、経済的な負担を含めて最後まで責任を持つことは飼い主としての大前提だ。
「飼うと決めたなら、ペットショップに行く前に保護センターや保護ねこカフェなどで救いを求めているねこがいることに目を向けてください」
ねこを救って、ねこに救われる。ねこと人のいい関係を築いていきたい。
●これが林先生のねこ御殿!
“ねこ屋敷”もとい“ねこ御殿”の中は、外気を感じられる遊び場スペースや作りつけのキャットウォークなど、ねこが暮らしやすい工夫がいっぱい!
ねこがそばにいるだけでこんな健康効果が!!
●幸せホルモンオキシトシンが分泌
肉球、お腹、モフモフの被毛など温かく柔らかいものに触れることで幸せホルモン・オキシトシンが分泌。これにより気持ちを落ち着かせるセロトニン、快感・多幸感を得るドーパミンの分泌を促す。
●“ゴロゴロ”音は副作用のない薬
低周波(25~150ヘルツ)のゴロゴロ音は副交感神経を優位にさせ、筋肉の柔軟性を高め、体温上昇、血圧低下を促す。これによりストレス解消、免疫力アップ、ポジティブ思考などの効果が。また骨密度を高め骨折を早く治す作用もある。
●心臓発作の死亡率が30%軽減
2008年、ミネソタ大学でねこを飼っている4500人の調査では、心臓発作での死亡率が30%低いという結果が発表されている。
●うつ病、うつ症状の緩和も期待
社会との関わりが減り、孤独を感じるとき、一緒にいてくれるだけで気晴らし&心の支えに。従順な犬と比べて、ねこは自由&マイペースなので飼い主の心の負担にならないのもポイント。
●お世話をすることで得られる逆セラピー効果
自分より小さく、弱い者の世話をすることで、“自分にもできることがある”というポジティブな感情が生まれ、自信につながる。また癒し効果も期待できる。
取材・文/松岡理恵
林かおる先生 大阪府堺市「小児科林医院」院長、医学博士。「子どもも動物も命あるものすべての声なきSOSを救いたい」という揺るぎない志を持つ。レディー・ガガを意識したプラチナブロンドは子どもたちにも大人気。