まじめでお堅いイメージのある銀行マンだが「夜は別の顔」を持つ人が多いようだ。愛人募集に、社内不倫。そのくせ割り勘主義だったり……。井川遥演じる女将のように彼らに毎夜、接してきた銀座のママが明かした。
銀座のママが明かす! 半沢直樹の「夜の顔」
「銀座のお店としては中野渡頭取(北大路欣也)や大和田取締役(香川照之)のようなお金払いのよさそうな上層部の方に来ていただきたいです。半沢直樹(堺雅人)さんは銀座にいらしても羽目をはずした飲み方はしないでしょう」
銀座のママ、高嶋りえ子さんの店にはメガバンクから地銀まで銀行マンたちが毎夜、足を運ぶ。まじめで堅実な昼の顔から「夜の顔」へと変身するさまを見ている彼女たちはドラマで半沢がなじみとしている小料理屋の女将・智美(井川遥)といったところだ。
「半沢さんが経営陣に反撃、倍返しするシーンを見るとスッキリした気持ちで月曜日が迎えられます。人が言えないことをズバッと言えるのも、うらやましいです」
と熱く語る、りえ子ママは作品の大ファン。『半沢』愛を交えながら、銀行マンの夜の顔を明かしてもらった。
「非常に優秀な方が多いですが、中には酔って気を許すと赤ちゃん言葉で接してくる方もいます。見た目は強面ですが、甘えん坊タイプ。銀座のクラブは夜の保育園かと思うこともあります(笑)」
りえ子ママの店は完全会員制で入会金200万円。ママの指名料は100万円から。そのため、顧客には会社の重役や要人も少なくない。銀行マンでは頭取や役員クラスがメイン。彼らは1人で訪れるだけでなく、側近や半沢のような部下らを連れてくることもあるという。
他者を容赦なく蹴落とす大和田取締役のようなタイプも銀座では……。
「そういう人に限って女性に弱いんですよ」
外面がよくプライドの塊なため羽振りもいい。彼らからお金を引き出すのも銀座のママの腕の見せどころだという。
堅実な向上心の塊
それに火遊びをする銀行マンだって珍しくないという。
「ほかのお店のママから聞いた話ですが、お店の女の子に夢中になり、夫婦の貯金をすべて使ってしまった方がいたそうです。愛人につぎ込む方もいらっしゃいますよ」
“愛人になってくれ”と迫ってきた銀行マンもいた。
「お店で何百万も使っているから付き合えるだろうって。私は愛人になるのは絶対に嫌なので一切お断りしております。それに怒って帰られる方もいました。銀行マンはまじめがゆえにお金を使えば使うほど相手が自分のものになるんじゃないかと理想を抱いている人も多い印象です」
“銀行マンの愛人になりたい”と銀座で働く女性もおり、『半沢直樹』ではなく、昼ドラマのような修羅場に発展することもある─。
「昔、スタッフとして勤めていたお店で起きたことです。お店のママがある銀行の役員と不倫関係にあり、奥さんが包丁を持って乗り込んできたことがありました……」
不倫は社内でも……。
「“部下と”“結婚していた女性と一緒になった”という話も聞きますよ」
銀行マンたちもドラマ『半沢直樹』には感化されており、ちょっとしたブームにも。
「みなさん、大和田取締役の“お、し、ま、いDEATH”がお気に入りでまねしがちなんです。“お、か、い、け、い、DEATH”なんて言う方もいます。
銀行ではまじめ一筋。でもお店では変わるんですよ。それに付き合わされる私たちの身にもなってほしい。1日何回も聞かされるんですから」
作中のセリフを覚え、銀座で披露して喜ぶ銀行マンは少なくないという。
もうひとつが「ケチな顔」。合コンでは女の子ともキッチリ割り勘、飲み会では部下にも出させる上司もいるようだ。
ただし、顧客の中にはリアル『半沢直樹』の姿もある。
「お連れさまとしていらっしゃいますが、まじめで向上心の塊みたいな方です。そういう方はご自身ではお金は使えないので銀座ではあまり……。
銀行を変えたい、と熱く語る方もいますよ。ただ、偉くなって愛人を何人も囲うことが目標の方も……」
女性にだらしなく、ケチな「夜の顔」を見せる人の一方で、妻へのプロポーズやなれそめを自慢する「愛妻家の顔」を披露する人も少なくない。
ときには銀行での顔をキープ、ドラマみたいなやりとりだって繰り広げられている。
「内容は明かせませんが、翌日のニュースになるようなお話をされている場に同席することはよくあります」
ドラマで描かれる役員会議や定例会などの後に、中野渡頭取は側近らと銀座に足を運んでいるだろうとりえ子ママは推測する。現在放送中の『帝国航空』の再建をめぐる話だって舞台を会議室から銀座に移し、『夜の会議』を繰り広げているのかもしれない。
「私としては大和田取締役と半沢さんが銀座で飲み歩いてベロベロになるシーンがあったらうれしいです。銀座の活性化にもなると思います」
半沢が役員、頭取に出世したとして、彼は銀座で夜の顔を披露するのだろうか?
「奥様の花(上戸彩)さんも堅実的な方ですし、半沢さんは銀座には来なさそうです。とても来ていただきたいのですが、現在のご自身のポケットマネーでは厳しそうですし、私たちのお店に来ていただくには100倍は頑張る必要がありそうですね」
リアルにいた『半沢直樹』な人々
■顔もそっくり!「渡真利忍」
「クールで整然とした物言いで情報通! 顔も及川光博さんに似ていらっしゃるので、モデルとなった方だと思うほどです。ちなみに彼は最近まで渡真利さんと同じくガラケーを使っていました(笑)」
と話すりえ子ママ。渡真利忍(及川光博)は『東京中央銀行』融資部に在籍する半沢の同期。情報収集に長けており、渡真利の情報が半沢を助け、上層部に戦いを挑む。
「彼はお店のバーカウンターで、渡真利さんのように仕入れてきた情報で作戦会議をしていることがあります」
リアル渡真利忍も銀行マンの出世競争にはなくてはならない存在のようだ。
■ケチでしつこい「三木重行」
「10年ほど前、友人の結婚式で新郎側の受付だったのがメガバンク勤務のケチな三木重行タイプの男性でした」
と明かすのは40代の女性会社員。角田晃広(東京03)が演じる三木重行は『東京中央銀行』から『東京セントラル証券』に出向したひとり。“仕事ができない男”と出向先で言われ、半沢を裏切り、銀行に戻った経緯を持つ。
「新郎には銀行口座を作らせたにもかかわらずご祝儀は3万円しか包まず、二次会以降は会費も払っていません。私とは初対面なのに、正社員かどうか聞いてくるし、プライドが高い、嫌な男のテンプレートみたいなやつでした」
借金まみれになる人もいる!?
「銀行マンが見ると“あるある”が詰まっているドラマ。非常にリアルです」
と話すのは元銀行マンでファイナンシャルアドバイザーの望月良友さん。
「私も前作の西大阪スチールのような事案に直面したことがあります。宇梶剛士が演じた東田満社長のように計画倒産をして融資をだまし取り、銀行から差し押さえられた人もいました」
ドラマも顔負けの銀行マンの世界。しかし──。
「実際は自らの目先の実績や収益、出世ばかりを考える人が多く、大和田取締役のようなタイプも目立つ。半沢のように銀行利益と同様に顧客の利益を尊重する使命感を持つ銀行マンは昔より少ない」
と、ため息をつくのはほかの元地方銀行マン。
「給料を使いすぎて支払いができずに口座を止められてしまったり、借金まみれの銀行マンもいます。特に口座を止められた銀行マンは事件が起きたら真っ先に疑われます。顧客のお金に手を出し、『横領』や『着服』で逮捕される事件は各地で起きています」
とはいえ、多くの銀行マンは堅実に仕事をこなす。
「リアルでは半沢のような次長職でもあれほど自由に各地は飛び回れないですよ。彼のように動けたらなんとかなったと思い出す案件もたくさんあります」(望月さん)
リアル半沢直樹たちはそんな自分たちとドラマを重ねているのかもしれない。