「“ムーランの日本版声優に選ばれました”とお電話をいただいたとき、たまたま母と一緒にいたんです。電話を切った途端にふっと気が緩んだというか、子どもに戻ったんですかね。涙がポロポロと出てきて。そばにいた母が“よかったね”と言ってくれました」
明日海りお、退団後“初”インタビュー
昨年11月に宝塚を退団した元花組男役トップスター、明日海りお(35)。宝塚初となる横浜アリーナでのライブコンサートを成功させ、退団公演の千秋楽は日本全国に台湾、香港を加えた宝塚史上、最大規模の189か所の映画館で生中継された。
新たなスタートを切った彼女が、次なるステージとして初挑戦したのがディズニー・アニメーションの傑作を実写映像化した『ムーラン』。
「もともとディズニー作品が好きで、宝塚の先輩にも吹き替えを担当されている方がいるので、自分も挑戦してみたいと事務所のスタッフに言おうとしていたタイミングでいただいたお話でした。
でも、オーディションを受けた感想としては、“残念でした”だろうと。女の子の声を発することに気恥ずかしさがあって」
彼女が声を演じたムーランは、病弱な父の代わりに男性だと偽り戦地へ赴く少女。上官や仲間たちとの絆、敵である美しき魔女との出会い、そして、“本当の自分”との間で葛藤する姿が描かれている。
「アフレコをする前に監督からは、男装して兵士になっているところはとってもいいので、少女の部分を頑張りましょうとアドバイスをいただきました(笑)。立ち回りやアクションシーンは、宝塚時代の経験を生かすことができたんだと思います。
少女の気持ちを思い出すために、初めて宝塚の舞台を見たときや、両親に受験したいと伝えたころなんかをひたすら振り返りました。印象的なことって脳裏に焼きついていて、鮮明に覚えているんですよね」
劇中、ムーランが恋ごころを抱くシーンもある。
「これまで男子側を演じてきましたが、初恋の独特の甘酸っぱい、なんとも言えない感じは、性別関係ないですね。映像もとても美しくて、キュンとする。“胸キュン”を期待される方にも満足していただけるんじゃないかと思います」
おうち時間で鍛えた腕前
吹き替えを終えてから、公開までに経験した新型コロナでの“おうち時間”で、以前より料理をするようになった。
「いままで、ちょっと作るのが面倒だなと思っていたものを作るようになりました。例えば、ピーマンの肉詰めと、そのソースを作ったり、煮込み系の料理に挑戦したり。ただ、最近は暑くて麺類ばかりになってしまいました(笑)。
以前より、だいぶ手際もよくなり短時間で仕上がるようになりましたが、本当の理想は、仕事が忙しく料理をしている余裕がない状態。これからですね。大好きな宝塚は、応援する立場としてファンに戻ってもいいかなと思っています」
表現者として、次はどんな姿を見せてくれるのか、明日海の今後が楽しみでしかたない。
明日海りおのQ&A
Q:最近の寂しかったこと
A:退団公演の千秋楽で、「どこかで見かけたら声をかけてください!」って言ったら、次の日から、すごく声をかけていただけて。改めて、宝塚のファンってたくさんいらっしゃるんだと思いました。でも、最近は髪の毛が伸びてきたからか、声をかけられなくなってきて。寂しいです……。
Q:改めて宝塚とは?
A:大好きで受験した宝塚。実際に中に入って、責任感やらで大好きの形は変わりました。でも、憧れは尽きないですし、生きがいと言ってもいい。すべてのものが詰まっていた場所。そこに、今では、故郷という意味合いも加わりました。