「先生は気づいてなかったと思います。休み時間のことだし、そういう不良が多い学校だったから」
こう話すのはお笑いコンビ『ライセンス』の藤原一裕(42)。181cmの身長で、高校時代に部活でやっていた空手では全国ベスト16位という成績を残している彼。いじめられていたということが信じられないのだが……。
理由がわからないままいじめの標的に
「空手を始めたのは中学3年生からなんです。中学1年生のころは身長は150cmあるかないかで、クラスの中でも背の低い順に並ぶと前から数えたほうが早くて。いじめにあったのは、そんなときでした」
特に目立つ存在でもなかった藤原だが、一体、何が原因でいじめにあったのだろう。
「それがわからないんです。何が相手にとって気に入らなかったのか、休み時間になると同じ学年の、いわゆる“ヤンキー”がわざわざ僕のクラスに来るんです。そいつらが僕ともうひとり標的にされていたAくんのどちらかを捕まえて、背中を蹴ったり殴ったりしてくるわけです」
そんな藤原とAくんは、こんなことが続くとキツイので、次にどちらかがやられたら助けよう、と約束をしたのだが──。
「その次というのが僕が標的になったんです。それでやられているとき、とっさにAくんを見たら、僕を見て笑っているんです……。すごくショックでね、裏切られたって。でも今考えると、おそらく彼は怖かったんでしょうね」
そんないじめがどれくらい続いたのか、「イヤすぎて覚えていない」という藤原だが、希望の光は見えていた。
「親が転勤族で、中学3年になる前の春休みには、新潟から奈良に引っ越すことが決まっていたんです。“ゴール”がわかっていたから僕は耐えられたんです」
いちばんの味方の両親にまずは相談して
そんな“ゴール”を迎え、藤原は奈良で新しい生活を始め、いじめから解放された。彼の親は、自分の子どもがいじめられていたことを知っていたのだろうか?
「そのときは知らなかったです。僕が話してませんでしたから。うちはすごく家族が仲よくて、土日に親と出かけるのが嫌とか、そういうのがまったくなかったんです。そんな好きな両親に、自分がいじめられているなんて話せなくて……。ただ、僕は引っ越すというゴールが見えていたから我慢しましたけど、そういうことがない子はいちばんに親に話すべきだと思います」
いじめを苦にして、自ら命を絶つ10代が増えている現在、藤原は自身の経験をもとにこんなアドバイスを送る。
「学生時代って、大学を入れなければ12年なんです。人生で12年なんて一瞬のこと。そんな一瞬のことで人生を終わらせてほしくないし、学校を卒業すれば新しい世界がいくらでも待っています。
学生時代は学校がすべての世界に見えるけど、でも、そんな小さい世界で悩んでほしくない。そこから逃げたっていいんです」
学校に行かないで、いじめから逃げることもいい、と言いつつ、条件を付け加える。
「逃げたあと、どうするかです。学校に行かなくてもいい。でも、勉強はしなくちゃいけない。中学3年間いじめられて学校に行かなくても、高校というところには行かなくてはいけない。
そこが、環境の変わるチャンスなんです。逃げた先で何かしらの努力と、新しい世界に行く準備をしなくてはいけないんです」
・悩んでいる君に贈る言葉・
「逃げてもいい。その先で何かしらの努力と、新しい世界に行く準備を忘れずに」
ふじわら・かずひろ/1977年9月20日生まれ。奈良県出身。お笑いコンビ『ライセンス』のボケ担当