和田アキ子

 8月30日に『アッコにおまかせ!』(TBS系)で放送された“イニシャルトーク”が視聴者からも業界からも顰蹙(ひんしゅく)を買っているという。

『2020年下半期不倫スクープを先取り!』というタイトルがつけられた特集コーナー内で、“超有名週刊誌スクープ連発カメラマン”の情報として紹介されたのは『モデル・女優として活躍する40代女優が芸人と不倫中!?』というものだった。

 あの人か? この人か? と想像を膨らませるが、結局、視聴者にはわからないよう出演者にだけ女優の実名が明かされ、その驚きのリアクションを見せつけられるという、この手の企画にありがちな展開となった。視聴者からはSNSなどで「結局内輪でもりあがっているだけ」というような非難の声があがった。

 ワイドショーや情報バラエティ番組で、芸能人のゴシップに関するイニシャルトークが行われるのは特に珍しいことではなかったが、最近はめっきり減っている。

視聴者の興味を薄れさせた“負の構造”

90年代終わりから2000年代初めが芸能ニュースを扱うワイドショーや情報バラエティ番組でイニシャルトーク企画が全盛でした。出演していた芸能レポーターが毎週必ず情報を小出しにしていましたね」(ワイドショースタッフ)

 クイズ番組を見て答えを考えるのと同じように、イニシャルが誰を指しているのかを推測する面白さがウケて、話題になったものだった。当然、番組の視聴率アップに一役買っていたのだが、初めは興味深く捉えられていたものの、やがて視聴者が離れていくことに。

「はじめは視聴者の好奇心を引き寄せることに成功しましたが、“トーク”のクオリティが下がったようで、徐々に飽きられていきました。各局がこぞってイニシャルトークの企画を行うようになって、さすがにネタが続かなくなったのが大きな原因でしょう。

 そこから“イニシャルなら多少曖昧なことを喋っても構わない”という流れになり、なかには適当に話を盛る人も出てきました。そうなってくると、今度は“誰かが特定されては困る”、と出すヒントも控えめになり、視聴者は簡単に推測しにくくなりました。いくら頭をひねっても分からないとなれば、視聴者は“もうどうでもいいや”となります。興味を失われてしまいました」(前出・ワイドショースタッフ)

 いくら考えてもわからず、それなのにスタジオにいる出演者にだけ実名が知らされると、視聴者は置いてけぼりにされてしまい、フラストレーションは溜まるばかり。もう見たくないとなるのは必然で、敬遠されるようになった。さらにテレビ局にはイニシャルトークなんか止めろ、といったクレームも。また同じイニシャルということで“濡れ衣”を着せられるタレントも出てきて、噂にのぼったタレントの所属事務所から番組担当者が叱責されることもあったという。

 そんなことから制作サイドも疲弊してきて、イニシャルトークは徐々にすたれていった。だから今回『アッコにおまかせ!』を見て、なんで今さらこんな企画を? と訝(いぶか)しがる業界関係者は多い。

『アッコにおまかせ!』もガセネタ?

「テレビでイニシャルトークをする弊害や、なぜやらなくなったかの理由を知るスタッフがいなくなったんでしょうね。今回はスポーツ紙記者、芸能ジャーナリスト、スクープカメラマンが登場し、それぞれが持ち込んだ極秘情報が伝えられる形でしたが、カメラマンだけが顔写真もなく匿名でした。その理由はいろいろ考えられます。所属している雑誌のしばりがあって顔出しできないというのが一番大きな理由です」(キー局プロデューサー)

 さらに、『超有名週刊誌スクープ連発カメラマンA氏』が発信した“40代女優と芸人の不倫”については疑問の声もあがっている。

その人物は有名週刊誌で仕事しているカメラマンということですから、それが事実ならその週刊誌が現在、追っているネタの可能性もあります。ですが、それを話してしまったら顔出ししていなくとも、週刊誌サイドは自分のところのカメラマンだと疑いを持ち犯人探しが始まるでしょう。バレたらクビになるのは間違いないので、そんな危険を冒すとは思えません。

 となると、情報は彼自身が掴んでいるもので、まだ編集部に提出していないネタだということ。ただ、テレビで暴露してしまったら当事者たちに知られて、スクープの難易度が高まり、自分の首を締めることにもなる。しかも、テレビの出演料よりも、所属する週刊誌で企画をカタチにしたほうが間違いなくお金になりますしね。

 以上のことを考慮すると、この情報は“ガセ”じゃないかと思えるんです。実は似た話が芸能マスコミの間でずっと以前から囁(ささや)かれています。ところが実際に張り込んだり取材している雑誌はなく、記事にならないので今では噂の域で止まっています。芸能界にはよくある話ですが」(写真誌記者)

 また、匿名カメラマン以外に登場した“事情通”2人が披露している情報もどうだろうか。女優Mと俳優Kの離婚危機や、女性タレントOの離婚危機、芸人Fと交際していた今年ブレークした女優Tなど、すでに週刊誌やワイドショーでも報じられていて、そもそも芸能情報に精通していなくても、すぐに名前が浮かぶ面々だ。わざわざイニシャルにする必要があったのか、という声が業界内からも上がっている。

 かつて隆盛を誇ったイニシャルトーク企画はいまや諸刃の剣だ。クオリティーが低ければ番組の首を絞めることになりかねない。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。