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 新しい生活様式とともに働き方も見直されるようになった昨今。主婦たちは“在宅ワーク”に目を向け始めている。

「コロナ禍になってから、会員登録者数は増えています。学校や保育園が一時休校・休園となり、パートを辞めざるをえなかった人や、いま仕事を探したいといった人は、面接に行くに行けない状態ですから、在宅ワークを検討するのでは」

 と語るのは、主婦会員向けに仕事情報の提供やキャリア支援を行っているコミュニティーサイト『キャリア・マム』代表の堤香苗さん。同社のセミナーでは子育て世代に限らず50代以上のミドル・シニア世代からも立ち仕事がきつくなってきた、親の介護や自分の通院などさまざまな事情で在宅ワークを望む声があがる。

在宅もIT化が続々と進行中!

 そこで気になるのが、どんな仕事があるのか、そもそも資格もスキルもない場合でもこなせるのかというところ。

「データ入力やライティングなど、資格やスキルがなくともできる仕事はたくさんあります。ただ、パソコンを使ってデジタルデータを納品するものがほとんどなので、そのやり方は慣れておいたほうがいいですね。在宅ワーク求人の状況としては、情報系から広告代理店までニーズは幅広く、コロナ以降、求人の数はむしろ増えています

 なかでも、特に増えているのが、AIに知識を覚えさせるための教育用素材として、画像や音声を提供する“アノテーション”または“教師データ作成”と呼ばれる仕事。

「あらゆる分野で導入されているAIも、最初から頭がいいわけではなく、いろいろな情報やパターンを覚え込ませることで知識が蓄積されていきます。例えば羊なら、オス、メス、毛がのびている、刈ってある状態など、さまざまな画像をタグづけして提出します。誰にでもできますし、案件も豊富で勢いがある印象です」

 ほかにも、手軽さで人気なのが食卓調査。マーケティング調査の一環として、家の食卓や冷蔵庫の中などを撮影し、提出するだけで1回500円程度の報酬がもらえる

「特にシニア世代のデータは不足していて、買ったもののレシートを提出する購買調査などもニーズが高いです」

 一方で、多少の知識やスキルが必要だが今後、狙い目なのは動画編集

「資格も必要ないですし、勘のいい方なら数か月でできるようになります。サムネイルを作るなどの基本的な作業だけでもニーズがありますが、さらに字幕をつけるぐらいまでできれば、かなり重宝されます。まるごと任せられる人はまだ少ないので、ここに食い込むと1本1万円ぐらいは稼げるようになることも

 周辺作業までこなせると有利なのは、求人数の多いライティングの仕事でも。

文章を書くだけでなく、リサーチからアポ取り、撮影など幅広くできると、すごくいい。また、介護や子育てなど身近なものでもいいから自分の経験を世の中に発信していくといった種類の仕事も増えています。私たちの会社ではライター講座ではなく、書いた記事がネット上でより多く表示されるための“SEO対策”など、周辺作業も含むWEBライター講座を実施しています。無料で学べる講座も各社でいろいろありますから、知識不足が心配な方は、そういう講座を受けてみるのもいいと思います」

 意外と間口は広そうな在宅ワーク。コロナ対策に即した働き方というだけでなく、ほかにもメリットが多い。

「いちばんは定年がないこと。老後の備えとして月に数万円でも収入を得られる道を作っておくのは大切です。今は住む地域によって働く環境に大きな差がありますが、自分が住む場所で働くことが当たり前の世の中にしていくためにも在宅ワークは大きな力になっていくと思います」

いま注目! ニーズの高い「在宅ワーク」

※報酬の目安は過去の求人事例をもとに編集部調べ

■ダイエットモニター 報酬目安:5000~1万円
 指定の食品や器具、メソッドを用いてダイエットに挑戦し、ビフォーアフターの写真や、アンケート、食事レポートなどを提出する。顔出しOKだとより高報酬が期待できる。

■健康食品やサプリメントのモニター 報酬目安:3万5000~5万円
 新商品開発にあたり、その有効性や安全性を確認するのが目的。健康食品やサプリメント、化粧品を数週間~数か月間、服用(使用)し、クリニックなどで血液検査、身体測定などの検査を受ける。

■体験談の提供 報酬目安:1000円〜
 修羅場離婚、DVや詐欺被害、中・高生の子どもの性の問題など、自分や家族の特異な体験を取材で話す。文章にまとめることができれば、ライターとしても報酬を得ることができる。

■オンライン講座講師 報酬目安:1000円/1時間
 ZOOMを使用し、自宅でオンライン講座を行う。ビジネススキルや語学など、自分の知識やスキルを生かしたい人に最適。集客や当日の運営は依頼企業がサポートしてくれることも。

■在宅コールセンターオペレーター 報酬目安:1500円/1時間
 取引先や登録会員に電話をかけてサービス案内を行ったり、電話を受けてサポートデスクとして問い合わせの対応を行う。事前にオンライン研修などがあり未経験者もOK。

■AIの素材作成 報酬目安:画像1点100円~(提供素材による)
 AIに学習させるために、画像や音声などの素材を収集・提供する仕事。画像のタグづけや、お客役となってオペレーターと会話したり、自分の顔の画像を提供するなど、内容はさまざま。

■模擬試験の採点・添削 報酬目安:答案1枚140円〜(難易度による)
 小・中・高校生を対象とした学習塾の模擬テストの採点や添削を行う。最近は手書きよりもパソコンを使って行うものが多い。特に資格は必要ないが、ある程度の学力は必要。

■食卓調査 報酬目安:1回500円〜
 マーケティング調査の一環として、指定された期間の普段の食卓の写真を撮影し、簡単なアンケートとともに提出する。ごちそうを作る必要はなく、スマホで撮影ができればOK。

■動画編集 報酬目安:1万〜5万円(1案件)
 動画や音声素材を動画編集ソフトに取り込み、構成に基づいて映像の並べ替え、切り出しなどを行う。映像に合わせて字幕の作成や音楽・ナレーションなどの音入れまで行えると報酬が高くなる。

■WEBライター 報酬目安:1500円〜(1案件)
 企画テーマに合う自分の体験談や、取材した内容を記事にまとめる。文章作成だけでなく、リサーチや取材対象者のアポ取り、取材、簡単な撮影もできると報酬アップの可能性大。

在宅ワーカーの生VOICEを紹介!

◎神奈川県 C・Mさん(63歳)
「どこでも”を実現!チーム制で安心感も」

在宅ワーカー歴:12年 仕事内容:WEBモニタリング
最高月収:15万8000円 平均月収:13万5000円 

「主人が転勤族だったため、“どこにいても働ける仕事を探したい”とキャリア・マムに登録しました。今やっている業務は、クライアントから配信された記事が、ネット上の各サイトでどのように掲載されているかをチェックする仕事。PC操作はある程度できたものの、効率よくこなせるようになるまでは少し大変でした。

 在宅ワークは、自分のペースで働ける反面、何かトラブルが起きたときは自分で対処しなければならないので覚悟が必要です。その点キャリア・マムでは10数名で分担して作業するチーム形式なので、突然のPCトラブルで作業できなくなった! なんてときも相談すれば調整してくれるので、安心感があります。今後も今の仕事ペースを保ちつつ、スキルを上げるなどの努力は続けていきたいですね」

◎滋賀県 N・Nさん(65歳)
「出勤、着替え、化粧なしで快適です!」

在宅ワーカー歴:4年 仕事内容:ECサイトの校正ほか
最高月収:18万円 平均月収:7万~8万円

「最初に“在宅ワーク”に興味を持ったのは、市の公民館で開催している講習会でした。本当は娘にすすめるつもりでしたが、その講習会に参加したらWordやExcelのeラーニングが無料で受けられるとのことで、時間はたっぷりありますし、まずは私がやってみようかと。自分のペースで進めて、最初はお試しで仕事にチャレンジする、トライアルといわれるものに4~5回は挑戦。

 始めのころは時間もかかりましたし、問題があれば自分で解決しなければならない。大変でしたが、この仕事はとにかく“慣れ”だと聞いていたので、まずはこなしてみようかと。始めたころは家にて家事をする以外はほとんどパソコンに向かっていました(笑)。そのかいあって今ではかなり“職人”になれました。最近は、自分のペースで仕事を受けています」

ピアノもヨガもリモートで教える

“在宅ワーク”のカタチには、仕事を請け負うものもあれば、自分の特技を生かした“自宅教室”の開業を検討する人も。

「自宅での教室開業は、柔軟性の高い働き方として、女性を中心に人気が高まっていました。しかし、コロナの影響でお教室をお休みしていたり、今年新しくスタートさせたかった人もかなり影響が出たのではないでしょうか」

 と語るのは、お教室開業支援『ミスト』代表の池田範子さん。自宅開業は、自分の家で、自分の得意なことを生かしてお金を稼ぐ、憧れのお仕事スタイルではあるが、教室=対面。コミュニケーションが密になるこのスタイルは、現状において自粛が続いているようだ。

「とはいえ、すでにお教室を始めていた方はこのタイミングでリモートに切り替えた人も多くいます。例えば、そろばんや英語などの語学、ピアノやバイオリンの音楽教室などはオンライン講座だけでお教室を維持している人もいます。また、着付けやヨガ、ダンスなども動画配信を含めオンラインでの運営が続いているようです

 すでに生徒を抱えているなど、教室が軌道に乗っていた場合はこうしたリモートでの対応や、少人数での再開も進んでいるという。

「これから始めたいと思っている人は、いま時間がある人もいるでしょうから、今できること以上の技術を学び身につけるのにもいいタイミングです。先にホームページやSNSを始めたり、開業に向けた準備や情報発信を検討する期間にするといいと思います。

 自宅教室は、そもそも自分が好きなことを追求して人に教えられるまでになったといった人が多く、年齢にかかわらず挑戦できるものです。また今回のコロナの影響で、リモートでも対応可能という意識が広がって、逆に自宅教室の新たなカタチも広がったのではないでしょうか

 お料理やクラフトなどは以前から人気ではあるが、今はお料理+英会話、アロマ+クラフトなどほかとの差別化を図れるような組み合わせで楽しめる教室も人気なのだとか。

「自宅に招く、といったこともあって、やはりおもてなしの心、自分が楽しむ気持ちが大切ですよね。開業のために技術を学んだり、資格を取るにあたっては、さまざまな分野の協会が存在しますが、運営のアドバイスから、開業後のフォローなどがあるところを選ぶといいと思います」

先生と生徒でありながら、自宅といった空間の親しみやすさもあり、コミュニケーションもひとつの楽しみに

どんな「自宅教室」が始めやすい?

《クラフト系》
 資格が必須ではないので敷居も低く、さらに子育て中のママからも人気の高い手作り系のお教室。ノウハウを学ぶための協会があるので、その選び方もポイントに。

■アクセサリー教室
 レジン、シルバー、ビーズ、フェルト、毛糸、布、革などの素材を駆使したオリジナルのアクセサリー作り教室。

■フラワーアレンジメント
 生花やドライフラワーのアレンジや、プリザーブドフラワーやハーバリウムなどのブームもありニーズも高い。

■スクラップブッキング
 1980年代にアメリカで誕生した、お気に入りの写真を華やかに飾るペーパークラフト。

《コミュニケーション系》
 女性ならではの対人スキルを生かせる内容も人気。複数の民間資格があり、講座を受け知識を得れば始められるものもある。

■色彩検定
 似合う色や、目的やTPOにふさわしい色彩や柄をアドバイスする。ファッションのアドバイスなどを兼ねることも。

■カウンセリング
 人の話を聞いて心のケアをし、その後のサポートなどをする。

在宅ワーカーの生VOICEを紹介!

◎東京都 及川知子さん(45歳)
「楽しんでもらうには、自分も楽しむことが大切」

自宅教室歴:2年 仕事内容:ハーバリウム&ハンドメイド教室
最高月収:7万〜8万円 平均月収:2万〜3万円

「ハーバリウムと出会ったのは、小学生の娘と行った体験教室でした。そのときの楽しさを多くの方に伝えたいとコーディネーター資格を取得。最初は友達に無料で教えていたのですが、その後も趣味でいくつか資格を取得。自宅に使っていない部屋があったので、軽い気持ちで教室を始めました(笑)。

 平日は外で仕事をしていて教室は土日のみ。さほど儲けはないですが、私自身も息抜きを兼ねて楽しくレッスンを行っています。自分が楽しめないと、いらっしゃる方も楽しめないと思うんです。コロナ以降、オンラインレッスンも始めたので、この冬はキャンドル作りのオンラインレッスンや、ご自宅で作れるキットの展開を考えています。スカイツリーに近い立地なので、コロナが終息したら外国人観光客の方にも来ていただきたいです」

(取材・文/當間優子)