「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
高嶋ちさ子、華原朋美

第46回 高嶋ちさ子

 オトナになると「誰か紹介して」と頼んだり頼まれたりすることがありますが、紹介というのは、そんなに簡単なものではありません。それは芸能人とて同じようです。

 2020年9月25日号の『FRIDAY』が、「華原朋美が愛息虐待騒動で高嶋ちさ子と大モメ」と報じました。華原は昨年男児を出産しましたが、育児の先輩で“親友”でもある高嶋がお世話になったベビーシッターのAさんを紹介してあげたそうです。

 しかし、Aさんの行動にいろいろと疑問を感じた華原が、自宅に備え付けた防犯カメラの画像を確認したところ、Aさんが華原のお子さんが哺乳瓶をくわえている最中に、逆さ吊りにしていたというのです。

 華原はシッターさんを解雇し、高嶋に動画を送ってコトの次第を説明しますが、高嶋は《これのどこが虐待なの? うちもこれ大好きでいっつもやってもらってた》《もしもこれを虐待だと取るのだとしたら、おかしいよ》と「オマエのほうがヤバいんだけど」とも取れる返信をしてきたそうです。

 飲んでいる最中に逆さまにしたらヤバいのではないかと個人的には思いますが、最終的な判断は母親にゆだねられます。高嶋にとって逆さ吊りはアリだけれど、華原は受け入れられなかったということでしょう。どちらが悪いと一概に言える問題ではありませんが、二人の仲がなんとなく気まずくなってしまうことは避けられないと思います。これは典型的な紹介して失敗した例でしょう。

高嶋が肝に銘じる「女を見たら泥棒と思え」

 女同士の揉め事といえば、かねてより、高嶋がいろいろなバラエティー番組で「オンナに騙された」と話しているのをご存じでしょうか。

 たとえば、2015年の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)で、高嶋は「女を見たら泥棒と思え」と肝に銘じていると話していました。「女は見た目は取り繕って美しくても、何を考えているのかわからないというのがいっぱいいる」「去年も女に2人騙されているんですよ」と理由を説明しています。2019年放送の『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)でも「今年になって、3人ぐらいの女性に騙されている」と話しています。

 浮き沈みの激しい芸能界ですからトラブルも多いのかもしれませんし、2人のお子さんのお母さんである高嶋は、ママさんたちとも義務でお付き合いしないといけない部分もあるでしょう。トラブルが起きやすい環境にいると思いますが、どうも気になるのが、『ザワつく!金曜日』で明かした、高嶋のこのひと言なのです。

「女は自分が弱いっていうところを見せて、人に何かしてもらって、踏み台にしていくみたいなのがいっぱいある」

 具体的なエピソードは明かしませんでしたので、推測になってしまいますが、これは高嶋が周囲の「弱いオンナ」を助けてあげたら、利用されてしまったということかなと思います。もしそうなのだとしたら、私は彼女に何とも言えないヤバさを感じるのです。なぜなら、周囲の女性を「強い」「弱い」と二元論的に分けることがトラブルのもとではないかと思うからです。

「弱いオンナ」から「強いオンナ」になった高嶋

 高嶋は「弱いオンナ」に裏切られたと感じているようですが、それでは、何をもって「この人は弱いオンナだ」とみなすかと言うと、おそらく見た目か社会的ポジションだと思うのです。身長が高いよりも低いほうが、はっきりした目鼻立ちより、丸みを帯びた愛らしいパーツのほうが庇護欲をそそるでしょう。コネや知識がない、頼る人がいない、裕福でない人も「弱いオンナ」のカテゴリに入ると思います。

 高嶋もかつては「弱いオンナ」でした。今でこそ、彼女のコンサートは満員御礼続きだそうですが、ここに至る道は平坦なものではなかったそうです。『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)に出演した高嶋は、26歳のときに女優・後藤久美子の従姉妹と組んで『チョコレート・ファッション』としてデビューしたことを明かしていますが、泣かずとばすで解散。収入的にも厳しかったと話していました。

 しかし、バラエティー番組での毒舌がウケて大ブレイク。高嶋はインスタグラムに《25年かかってやっと年間80本を満席に出来るようになった》と書いていましたが、「弱いオンナ」だった彼女が、己の才覚で道を切り開き、今日のような「強いオンナ」になったということでしょう。今の高嶋には人脈もお金もあり、困ったときはどうすればいいのかを考えられる頭脳と経験もあるでしょうから、頼りにされるであろうことは想像に難くありません。

弱いオンナに「裏切られた」と感じる理由

 人に何かしてあげて、うまく行くときもあれば、こじれて疎遠になってしまうこともある。この違いは何かというと、頼み事の内容やタイミングが関わってくると思いますが、もう1つ、「強いオンナ」が「弱いオンナ」を低く見積もることがトラブルの種なのではないかと思います。

「強いオンナ」が「弱いオンナ」を下に見て、「あなたは何もできないんだから、私の言うことを聞いていればいいのよ」と思っていると、「自分の決めたことに従え」とばかりに支配的になり、相手の「こうしてほしかった」という気持ちを無視してしまいます。その結果、「弱いオンナ」が違う人を頼りにするので、「裏切られた」「踏み台にされた」と感じるかもしれません。反対に、「弱いオンナは何もできない」と決めつけることで、「強いオンナ」は延々と「弱いオンナ」の面倒を見なければいけない依存状態に陥り、前者の生活が侵食される可能性もあります。

「強いオンナ」と「弱いオンナ」が仲良くする際の最大のリスクは、両者が揉めると、根拠なく前者が後者をいじめたと見る人が多いことだと思うのです。高嶋は毒舌ウリしていますが、それがウケるのは「あれはテレビ用で、普段は良識あるヴァイオリニストでお母さんである」という大前提があるから。それが「弱いオンナをいじめた」というような報道がなされたら、「本当にヤバいオンナじゃないか」とバッシングされてしまうでしょう。

「困ったときは、お互いさま」という言葉があります。助けるほうが、助けられるほうの精神的負担を減らすためにかける決まり文句ですが、見方を変えると「あなたにも、私と同じように人を助ける力がある」「だから、私に何かあったときはよろしくお願いします」と、相手を対等に見て、信頼している平等精神が込められていると言えるのではないでしょうか。誰かに何かをしてあげるときの極意はこれではないかと思うのです。相手の能力を認め、「何かあったときに、この人なら助けてくれる」と思える人に頼む。自分と相手の能力が同等でないと、トラブルは起きてしまうのかもしれません。

華原には「超強いオンナ」の一面もある

 話を華原朋美との関係に戻しましょう。華原は長年所属していた事務所を離れ、YouTubeをはじめています。9月23日に華原は高嶋と元所属事務所の社長に対して「私の勘違いであり、虐待ではありませんでした」と謝罪しています。しかし、今にも泣きだしそうな声で話しているために「どこからか圧力がかかって、謝罪に追い込まれた」ような印象も受けるのです。

 華原といえば「天才プロデューサー・小室哲哉氏に見初められ頂点を極めるが、ある日突然捨てられてメンタルを病む」という「ザ・弱いオンナ」のイメージもありますが、その一方で「不安定ではあるが、芸能界から消えることはなく活動している。40代半ばで出産もした」という「超強いオンナ」の一面もあるのです。華原が不安定なのは実は今に始まったことではなく、全盛期もちょっとおかしなときはありましたが、YouTubeを見て「高嶋が追い込んだ!」と思う人もいるでしょう。

「弱いオンナ」だと勝手に決めつけて、相手をナメていると、自分がヤバいことになるかもしれません。高嶋は、自分の言葉でこれまでの経緯を説明したほうがいいのではないでしょうか。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」