大切な家族の一員であるペットも、人間と同じように高齢化。要介護になった犬猫や、飼い主亡きあとの心配に応えるサービスが続々登場している。ご長寿時代の「終活」最前線をレポート!
高齢ペットの悩みを抱える飼い主は多い
ペットの高齢化に伴い、ペット専門のケアマネージャーが誕生している。高齢ペットのスペシャリストを養成する「JAPANペットケアマネージャー協会」が認定するケアマネは、全国で11人。そのひとりである平端弘美さんは、高齢犬の介護や介護予防の指導、ペットへの整体施術などを行っている。
もともとセラピードッグに関心があった平端さん。ドッグトレーナーの資格を取得し、しつけ教室を開いたところ、高齢ペットの悩みを抱える飼い主が多いことに気がついた。
「足腰の衰え、食欲不振、身体機能の低下といった症状から老老介護まで、老いをめぐる悩みは人間と同じでした。認知症のペットが夜鳴きや徘徊をして、慢性的な睡眠不足で倒れかねない……、そんな飼い主さんも珍しくありません」(平端さん、以下同)
シニアのペットを専門に扱う人が少なかったことから、2017年に勉強を開始。前出の協会で「老犬スペシャリスト」を取得後、さらに座学や実践を重ねてペットのケアマネ資格を取得した。
平端さんは、飼い主自身の悩みと、高齢ペットの体の状態、どちらも丁寧に聞くことを心がけている。
「例えば、夜中に吠える犬は目と耳が衰えている可能性があります。日中は明るいし飼い主さんもそばにいるけど、夜は自分の居場所がわからなくなり、不安で鳴くわけです。飼い主が一緒に寝るなどの対応が効果的だったりします。また、体に痛みや違和感があって鳴くことも。整体やマッサージ、ハーブの温湿布なども効果があります」
ペットも高齢になると、慢性的な病気を抱えたりして病院代や薬代がかさむ。まして人間と違い公的保険がない。飼い主の負担を軽くするためにも、平端さんはケア用品を手に入りやすいもので代用できるテクニックを伝授する。
「例えばオムツは、人間の赤ちゃん用のオムツを尻尾の位置に穴をあけて使います。そのほうがポリマーの品質もよく経済的。また、寝たきりで床ずれができたときはトイレ用シーツを床ずれの形に合わせて切り、上から穴あきポリ袋とサージカルテープを患部にあてればOK。消化機能が低下したペットには、ペースト状やスープ状の食事を与えますが、哺乳瓶や人間用の介護スプーンで代用できます」
飼い主ひとりで抱え込まないで
ペットの介護をめぐる悩みや問題は、周囲の理解やサポートを得づらいため、飼い主ひとりで抱え込みやすい。「デイケアなど、ペット向けの介護サービスを利用してほしい」と、平端さんは言う。
前出の協会が開催するデイケアでは、食事や排泄の世話をはじめ、入浴、耳・目・歯の掃除、マッサージやリハビリになる運動などを行う。特に、夜にぐっすり眠れるよう、日中に思い切り遊ばせている。こうした刺激は認知症にもよい影響を与えるそう。
「ペットの介護も人間と同じように、家庭の中で女性が担い手になることが多いんです。ペットのケアは大切ですが、飼い主さんの心のケアも、もちろん大切。デイケアでもケアマネでもいいので、誰かを頼ってほしいですね」
最近、特に力を入れているのが介護予防。後ろ脚から弱ると立てなくなるため、おやつなどで「おすわり」をさせ、立ち上がってという動作を繰り返す。これだけでスクワット効果がある。
平端さんは現在、動物病院での勤務のほか、都内のカフェで月に2~3回、シニア犬への整体を行っている。予約はすぐに埋まるという。
「ペットは1頭1頭、みんな違って奥が深い。介護に悩む飼い主さんにいろいろな情報を発信したいと思ってます」
*ペットケアマネージャー・平端さんによる整体の予約はhttps://hellodoggie.info
(取材・文/吉田千亜)