話題のドラマや映画で活躍するお笑い芸人が増加中。しかし、このトレンドは最近始まったわけではなかった! あの“演技派俳優”も、実は芸人として厳しい下積み時代を過ごしていて──。
意外なアノ人も! 芸人俳優たちの履歴書
またもや大ヒットを記録した『半沢直樹』(TBS系)だが、出演したお笑いトリオ『東京03』の角田晃広(46)と、お笑いコンビ『アンジャッシュ』の児嶋一哉(48)の熱演ぶりも注目された。
近年、ドラマや映画で好演する芸人が増加中。日ごろは何げなく見ているアノ役者たちも、実は芸人としても活動していたことをご存じ?
まずは『古畑任三郎』シリーズの西園寺刑事役で才能を開花させた石井正則(47)。
「'16年までお笑いコンビ『アリtoキリギリス』として活動していた石井さんは、根っからの“コント師”。あるコントでは、観客が爆笑しているのに、役に入り込みすぎて笑い声が聞こえなかったことがあったそう。ただ、デビューした当時は“お前、いつ辞めるの?”と落ちこぼれの烙印を押されたことも。その悔しさをバネにしているのだと思います」(芸能プロ関係者)
お笑いコンビ出身といえば'15年まで『キングオブコメディ』で活躍していた今野浩喜(41)も思い浮かぶ。
「見た目を生かした、ちょっと危ない雰囲気が漂う刑事など、独特な世界観を演じることに長けています。コメディーキャラも得意ですし、演技の幅が広いので重宝されています」(映画製作関係者)
そんな今野が芸能界入りしたのは「モロ師岡さんのような人になりたかったから」というのが理由なんだとか。
'96年に中年ボクサー役で出演した北野武監督の映画『キッズ・リターン』で、『東京スポーツ映画大賞』の助演男優賞を獲得したモロ師岡(61)。それ以降は、個性的な役柄を数々こなしてきた。
「モロさんは大学時代、同級生が立ち上げたコントグループに入団。アルバイトとして、都内のストリップ劇場でネタを披露していたそうです。この仕事はそうとうつらかったようで、朝の10時半から12時間働き、休みはまったくなく、劇場に住み込みながら芸を磨いたそうですよ」
バラエティー番組でも活躍していたのが田口浩正(52)。『特捜9』(テレビ朝日系)の矢沢英明役でもおなじみだ。
「田口さんは'08年の『R−1ぐらんぷり』で優勝したピン芸人の芋洗坂係長と、かつて『テンション』というお笑いコンビを組んでいたんです。高校卒業後に俳優を目指して劇団に入るも仕送りはなく、アルバイトでぎりぎりの生活を送っていたとか。上京から1年間は、お風呂や電話がない部屋で暮らしながら、食費を浮かすためにまかないつきの居酒屋で働いていたそうです」(田口の知人)
クセがないのに独特な存在感があり、あらゆる役柄をこなす吹越満(55)は、お笑い演劇集団『ワハハ本舗』出身。
「彼はとても変わっていて“生活のためにバイトして、役者では食べられない”という雰囲気に憧れて、高校を出た後に地元の青森から上京したと聞きました。“社会の仕組みからはずれている人に憧れていた”とも話していましたね。上京したときに“どうせ東京で車を買って乗ることはないだろう”と、運転免許証は捨ててしまったそうです」(劇団関係者)
最後は“濃ゆいオッサン”を演じたら右に出る者はいないマキタスポーツ(50)。
「28歳のときに『浅草キッド』が主催していたお笑いライブで芸人デビュー。歌ネタが持ち味でしたが役者としてブレイクするきっかけとなったのが、'12年に公開された映画『苦役列車』です。主人公に影響を与える小汚い先輩役を好演して『ブルーリボン賞』を獲得しました。
仕事が激減していた30代後半に交際相手とできちゃった結婚し、生活苦のためにラブホテルの清掃バイトはずっと続けていたのですが、そんなころに『苦役列車』への出演でブレイクしたので、当時のことを“まさに自分が苦役列車状態だったよ(笑)”と、周囲に話しているそうです」(テレビ局関係者)
お笑い出身だからこそ、生み出せる感動がある!
コメディアン俳優・片桐仁の本音トーク
'19年に放送されて話題になったドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)や、NHK連続テレビ小説『エール』にも出演し、今やすっかり売れっ子俳優の片桐仁(46)。彼はもともと、コントグループ『ラーメンズ』として活動していた“コメディアン”だ。
「'01年に放送された『金田一少年の事件簿』(日テレ系)が、初めて出演したテレビドラマでした。4つのセリフしかなかったので覚えるのは簡単だったのですが、初めてのことばかりでパニック状態でした(笑)」
俳優デビュー後は、舞台にも活躍の場を広げた。
「お客さんの前で演じるという意味で“演劇”と“コント”は似ていると思います。『ラーメンズ』でもネタは相方が作っていたので、“脚本を演じる”という面でも一緒でした」
転機となったのは'16年に放送された『嵐』松本潤が主演のドラマ『99・9―刑事専門弁護士―』(TBS系)。
「ゴールデンタイムのドラマにレギュラー出演するのは『99・9』が初めてでしたし、この作品で自分を知ってくれた人が多かったと思います。現場での松本クンや香川照之さんの姿から“1歩引いた目線”と“自分の芝居”、どちらも大切にすることを教わりました。出演者のみなさんが次々とアドリブを入れてくるので、それに応じるのが大変でしたけどね」
'19年の『あな番』ではキャスト間の“橋渡し役”になる。
「ドラマ内の“住民会”のシーンでは、撮影初日から20代から60代という幅広い年齢層の俳優さんたちが“前室”という待機場所に集まりました。住民同士でモメるシーンも多かったので、先に仲よくなろうと、前室での待機中は積極的にみんなの会話を“回す”ようにしましたね。
特に、竹中直人さんは大学の先輩でもあるし、お笑いから俳優になったという意味でも先輩なので、とても緊張していたんです。竹中さんとケンカするシーンがあったので、遠慮せずに演技ができるように“距離をつめよう”と頑張りましたよ」
片桐が注目する2人の芸人俳優
そんな片桐が意識するのは『半沢直樹』で注目されたお笑いトリオ『東京03』角田晃広。
「同い年の角ちゃんは、勝手にライバルだと思ってますね。役者として学ぶところがたくさんあります。彼のたたずまいは共演する俳優の邪魔をしないんです。僕にない雰囲気を持っていて“悔しい!”って、思うこともありますね」
次世代の“芸人俳優”についても期待の声を寄せる。
「『ハナコ』の岡部大クンはスゴイと感じます。出演中の『エール』で見せる素直さや若々しさは彼の武器ですし、今後オファーが殺到すると思いますよ。『ドランクドラゴン』の塚っちゃん(塚地武雅)みたいになるんじゃないかな」
最後に、片桐がこれから挑戦してみたい役とは?
「“いい人なのか悪い人なのか、どっちなんだろう?”という役ですかね。お笑いでやるとしても難しいキャラクターなので、挑戦したいです」