あまたいる二世芸能人。全員に芸があるわけではなく、親の七光があってこそやっていけている人もいれば、親とは別の形で輝き続けている人もいます。
そんな彼らを、徳光和夫の次男・徳光正行と、林家木久扇の長男・林家木久蔵の二世2人が解説! 二世の当事者たちにも話を聞いて、独自の視点で分類してみました。そこから見えてきたものとは──?
残された親を守ろうと反骨精神がつく
最初は、親の威光なしで成功派の二世芸能人を解説。
このグループの中で、徳光さんが特に注目するのは佐藤浩市と香川照之。
「2人とも父親に捨てられてるんですよ。香川さんは猿翁さんに挨拶に行ったとき『あなたは息子ではない』と言われたとか。三國さんも家庭を顧みない火宅の人だった。
特に男の子って『母親を守ろう』という気持ちが大きくなるから、『大好きなお母さんを見捨てた父を見返してやろう』と反骨心で、あえて同じ道に進む二世が少なくない気がします」
香川といえば、東大出身の高学歴俳優としても有名。かつて、徳光さんの父・和夫さんと香川の母・浜木綿子がある番組で共演した際、「照之が東大に受かった」と関係者から伝え聞いた浜が涙を流して喜んだという。
「後年、父がそのことを香川さんに言うと、『東大に入ったのはうれしかったですけど、親父が通った慶應に落ちたことが悔しかった』と言っていたそうです」(徳光)
また、いま最も注目を浴びているグループ、NiziUのリマ。父親・Zeebraの不倫騒動は痛恨だった。「子どもが注目を浴びると親側にスキャンダルが発覚する……という法則がありますが、まさにそれでしたね。時代は令和なのに、しみじみします」(徳光)
二世が芸能界に入ると、最初の数年は猶予期間
続いては、親の威光があるけど成功派の二世芸能人を解説。
徳光さんが特に感慨深い存在として挙げた落合福嗣。
「タイムマシンに乗って『福嗣君はすごく真人間になるんだぞ』って昔の自分に教えてあげたいですよ。子どものころは家にロケが来たらカメラの前でおしっこしていたような子が、今はすごく謙虚になった。自分の力で人気声優になりましたもんね」
もう1人、注目株として目を引くのは趣里の存在だ。
「二世が芸能界に入ると、最初の数年は猶予期間として与えられると思うんです。客観的に自分を見て、どうすれば自分をいちばん生かせられるのか。僕の場合、正統派で行っても反感を買いそうだし、ならばクズキャラになったほうがヒールとして注目度が集まるんじゃないかと思いました。
趣里ちゃんは、言い方は悪いけど最初はどっちつかずの俳優だったじゃないですか。でも、海外に演技を学びに行って、映画や舞台で演技派としてひと皮むけましたよね。育ちのよさばかり出ちゃうと汚れ役ができなくなるんですよ」(徳光)
●二世芸能人って? その1
「芸がある人は『二世』の肩書を必要としません」徳光正行さん
「青果店の息子が野菜を売る父に憧れて商売を継いだら、誰が否定する? って話ですよ」
親の威光を笠に芸能界入りした二世が叩かれるのは世の常だが、徳光さんはその風潮に異を唱える。しかし、彼は二世という存在自体が芸能界で危ういとも自覚している。
「今のコロナ禍において、二世しか売りがない人とおネエ系タレントの出る番組が減ってきている。このふたつの存在って、平穏なときしかメディアに出られない気がするんですよ。言うなれば、どちらも面白がられる側。『あんな人たちもいるんだね~』と、心のゆとりがあるときだからこそ許されるんです」
自戒の念を込め、徳光さんはこう言う。「芸がある人は『二世』の肩書を必要としません。タレントって才能って意味ですからね」
成功者ばかりだから自分も! とポジティブになる
続いては、「二世」が売りで成功派の二世芸能人を解説。
自身が過ごしてきた境遇を通じ、二世の芸能界入りが多い理由を語ってくれたのは木久蔵さん。
「僕は学生時代に野球に打ち込んでいて、高2まで『プロ野球選手になりたい』と本気で思うことができました。その理由は、『君だったらなれるよ』と父から言われ続けていたから。成功した人にそう言われると『できるのかな?』って勇気づけられるんです。
そういう意味で、IMARUさんは親だって知り合いだって全員が成功している人の集まり。彼女は『自分も成功しないわけがない』と思えるくらいの環境ですよね。親の説得力が子どもをポジティブにしてくれるんです」
徳光さんもIMARUとは面識があり、「世間からは生意気と思われているかもしれないけど、性格はすごくいい子。誤解されている女の子1位じゃないかと思う」と評価。「成功した親のもとで楽しく育てば、その子どももハッピーな人になるに決まってるんですよ」(木久蔵)
結婚などで早めに引退するのがベスト
続いては、「二世」しか売りがない二世芸能人を解説。
二世芸能人として、キムタク&工藤静香夫妻の二世としてデビューしたCocomiとKoki,ははずせない。
「この2人に関しては、いかにしゃべらせないかが肝だと思います。特に妹のKoki,ちゃんはキムタクそっくりの目をしているじゃないですか。全身のバランスは別としても、雑誌で見ると目を引く容姿はしている。今のままで正体不明で活動をし続け、結婚などで早めに引退するのがベストだと思いますね」(徳光)
もう1人、徳光さんが言及するのは渡辺裕太。
「犯罪を犯す二世と犯さない二世の差って、寸前で母の顔がよぎるかどうかなんです。『俺がこれをやって捕まったら母ちゃんは泣いて怒るよな』とよぎれば、抑止力になって踏みとどまれる。
僕は小さいころから『あなたが何かやったら、故意じゃなかったとしてもうちは破産するわよ』と言われ続けてきました。徹さんと郁恵さんは常識をお持ちのご夫婦ですから、裕太君も僕みたいなことを言われてきたと思います」
徳川幕府が二世芸能人ブームの先駆け?
続いては、親と比べられてかわいそうな二世芸能人を解説。
三浦祐太朗・貴大兄弟の芸能界入りは、徳光さんにとって意外だったそう。
「てっきり、電通とかテレビ局あたりに就職すると思っていたんです。でも、子どもが『芸能界に進みたい』と言ったとき、芸能人の親は断れないですよね。みんな、『芸の道は厳しいから務まらない』ときれい事では言います。
百歩譲って『それでもやりたいって言えば、しょうがないからやらせる』とか。でも、実際は最初に言われたときにたぶん許してますよね。自分に基盤があれば助けてあげられるし、なんだかんだ子どもは可愛いですから」
この関係性に、木久蔵さんは子の立場からこう語る。
「親の活躍を見ているから、やっぱり疼くんです。『自分も可能性を持っているんじゃないか?』って心が騒ぎますよね。徳川幕府だって、徳川家康という最初の人がいるから15代まで持っていけたんですから。親がすごくてそこまで行ったんだから、自分も将軍になりたいって疼きますよね(笑)」
外ヅラがよくないと生きていけない
最後に、いろんな意味で失敗してしまった二世芸能人を解説。
タレントにとって必要なのは「外ヅラ」だと徳光さんは説く。そういう意味で、花田優一は特筆すべき存在だろう。靴職人として苦情が寄せられても、悪評が立っても、どこ吹く風。
「最初、花田君とMatt君って出てきた時期も一緒で、同じ二世として双璧だったじゃないですか。で、Matt君はあの見た目ですから相当色物だったですけど、彼ってすごくいいやつですよね。そこで一気に花田君とゲーム差が開いた気がします。タレントって外ヅラがよくないと生きていけない。でも、花田君はそれすらできないでいる(笑)。
ならば、彼は徹底的なナチュラルヒールキャラで行くのがいちばんいいかもしれないですね。“嫌なやつ”と評判を蔓延させたら、逆に面白いかもしれない。今後、彼がどういう道を歩むのかわからないですけれど、俳優でシリアルキラーの役をやるとか、そういうこともできればいいですよね」(徳光)
●二世芸能人って? その2
「自分が下手を打つと、父が謝ることになりますからね」林家木久蔵さん
「小4くらいから、父のことで学校でいじられるようになったんです。あまりにキツいから『お父さん、座布団10枚とってよ!』と頼んだものの『1枚とるのもやっとだから10枚はさすがに無理』と言われました(笑)」
そんな木久蔵さんも「1度きりの人生」と落語の世界へ飛び込んだ。そして、今は二世にとってつらい時代である。
「二世が何かやらかすと、親が謝って自粛しなきゃいけないですよね。僕は出演してないのに、『笑点』が自粛になったらいたたまれないですよ。(司会の春風亭昇太が)『木久ちゃん、座布団マイナスからスタート!』とか面白くしてくれるならいいけど(笑)。
でも、二世って逃げようがないから信頼はされやすいですね。あと、僕の芸を見たことのない初対面の人に『お父さんの大ファンだよ!』と喜んでもらえたりする。それはそれで、みんなを楽しませる、いい人生だと思っています」
(取材・文/寺西ジャジューカ)