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「国や自治体から受けられるお金のサポートは、申請しないともらえないケースがほとんどですね」

 そう話すのは、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん。夫の死と突然、向き合うと何も考えられなくなるものだが……。

「それはわかります。ですが残された家族は、これから生きていかなければならない。受けられるべきサポートを知り、安心につなげたいですね」(風呂内さん、以下同)

死後の手続きは効率よくこなす必要アリ

 受給できる給付金の申込期限は2年や5年などが多い。

「一方で、7日や14日など期限が短い手続きもあります」

 夫が亡くなって最初に行う手続きは、役所に死亡届(7日以内)を出すこと。

このとき旦那さんが国民健康保険の被保険者であれば、役所で夫の保険証の返却(14日以内)も行いましょう。そのままにしておくと、保険料を支払い続けてしまうことも」

 支払った保険料を取り戻せる場合も多いが、

「手続きが遅れると保険料が戻ってこないケースもあります。また、死後の手続きは多いため、手間は減らせるといいでしょう」

 これから紹介するサポートも、すべて役所で手続きができるわけではない。

「例えば、死亡届や国民健康保険証の返却は役所で手続きしますが、死亡一時金や遺族年金は年金事務所が窓口のことも多いです」

 死後の手続きは、効率よくこなしていく必要があるようだ。

 では、具体的に見ていこう。

 受けられるサポートは大きく分類すると、『お金がもらえる』ものと『お金が戻ってくる』ものの2つだ。

 まずは、前者から。夫を失ってすぐにまとまったお金が必要となるのが“葬式”。この出費をカバーしてくれるのが、『祭費・埋葬費給付金』だ。

「夫が国民健康保険の加入者は自治体によって幅があり1万~7万円、そのほかの健康保険の加入者は5万円などがもらえます」

 ただし国民健康保険の場合、自治体によってはお葬式をせずに火葬のみでは支給されないケースもあるので注意。

 また、加入している保険によって申請先も変わり、

「前述したとおり、国保なら役所の国保年金課、そのほかなら夫の勤務先の健康組合や健康保険の窓口、年金事務所などになります」

 続いて『死亡一時金』。通常、年金事務所に申請する。

「生きていれば、受給できるはずだった年金がもらえなくなった。そういう意味では、今まで支払い続けてきた国民に対する国からの香典と考えてよいかもしれません」

 そのため、国民年金保険料の納付期間によって、もらえる金額が変動する。

「3年以上15年未満は12万円で、最大は35年以上で32万円。一括で支払われます」

夫が亡くなっても遺族が困らないために

 次に『遺族基礎年金』『遺族厚生年金』について。

 国民年金の被保険者は前者、厚生年金の被保険者は後者となる。

「年金と聞くと、老後にもらえるお金というイメージですが、老後にもらえる年金の正式名称は『老齢年金』。遺族年金は夫が亡くなって残された遺族に渡される年金です」

 生計の支えとなっていた夫が亡くなっても遺族が困らないようにする制度だ。『遺族基礎年金』は子どもがいる場合のみ支払われるため、ややシビア。

 金額は年78万1700円をベースに子どもの数で加算される。では『遺族厚生年金』はどうなのか──。

「夫がもらう予定だった厚生年金の約4分の3がもらえます。加入期間が短くても25年加入として計算しますが、収入の影響もあり、妻だけなら月5万円未満のことも」

 続いて、『労災保険の遺族(補償)年金』

「こちらは今までのサポートとは違い、夫が業務中や通勤中に死亡した場合にもらえるお金です。労災保険は企業が加入する義務があり、会社員であればすべての人が対象となります」

 金額は、年金額の受給権者の人数によって変動する。

「例えば、受給権者が1人なら、夫が生きていたらもらえた給与の153日分、4人以上なら245日分のお金を6回に分けて毎年もらえます」

 ただし、場合によっては会社とモメる可能性も。

「例えば、過労が続いていて夫が自宅で亡くなるなど、労働上の事故であったのかどうかは会社と遺族で意見が食い違うこともあります」

 そういった場合は、労働基準監督署に相談しよう。

 お金をもらうことに後ろめたさを感じてしまう人もいるようだが、

「これらのサポートは、私たちが支払った税金や保険料が基となっています。旦那さんがご健在で生活に余裕があったときに支払っていたお金であり、困ったときには堂々と受け取っていいと思いますよ」

 最後に『戻ってくるお金』にも触れておこう。

夫が病気やケガなどで高額な医療費を払っていた場合、介護サービス費を払っていた場合は、自己負担額を超えていた分を取り戻せます。これらは意外と忘れがちなので、注意しましょう」

【まとめ】申請すればもらえるお金一覧

■祭費・埋葬費給付金
・国民健康保険、もしくは健康保険の被保険者が死亡し、故人の葬儀を行った場合
・支給される金額は1万円〜7万円など(国民健康保険の場合。故人が加入していた保険によって変動する)
・申込込期限は国民健康保険は葬儀から2年、健康保険は死亡日の翌日から2年

■死亡一時金
・国民年金保険料を「3年以上納めた人」が老齢基礎年金・障害基礎年金を両方とも受け取らずに死亡した場合、故人と生計をともにしていた遺族に支給される
・金額は最大で32万円など(国民年金保険料の納付期間によって変動する。最大は35年以上の場合)
・申込込期限は死亡日の翌日から2年

■遺族基礎年金
・国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合、故人によって生計を維持された子のある配偶者または子に支給される
・金額は78万1700円+子の加算(第1子、第2子は各22万4900円。第3子以降は各7万5000円)
・申込込期限は死亡日の翌日から5年

■遺族厚生年金
・厚生年金の被保険者が死亡したとき、または被保険者が病気やケガが原因で初診日から5年以内に死亡したとき、故人によって生計を維持されていた遺族に支給される
・金額は故人がもらう予定の厚生年金の4分の3
・申込込期限は死亡日の翌日から5年

■労災保険の遺族(補償)年金
・労災保険加入者が業務中や通勤中に死亡した場合、死亡当時、故人(夫)の収入で生計を維持していた遺族(妻)が給付基礎日額に応じて受給できる
・金額は最大で245日分(年金額は受給権者の人数によって変動する。最大は4人の場合)
・申込込期限は死亡日の翌日から5年

《「戻ってくる」お金もチェック!》

■高額療養費
・国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険加入者の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えて支払った分が払い戻される
・自己負担額は所得、年齢、外来または入院の種別により変動する
・申込期限は診療を受けた月の翌月を初日とし、2年間

■高額介護サービス費
・介護サービス費における自己負担額の合計が上限額を超えた場合、申請することで超過分の払い戻しを受けることができる
・限度額は所得などにより変動する
・申込期限は該当月の利用料支払い日から2年(高額総合事業サービス費については5年)


【PROFILE】
風呂内亜矢さん  ◎ファイナンシャルプランナー。テレビなどでお金に関する情報を発信。近著『ケチケチせずに「お金が貯まる法」見つけました!』