華やかな色遊びと、ベーシックな服をカッコよく着崩すスタイルで話題を集め、フォロワー数7・3万人のインスタグラマー木村眞由美さん(82)。販売部数30万部超、女性誌No.1雑誌『ハルメク』の人気連載「マダムのつくり方」でファッションやライフスタイルを披露する美容家の川邉サチコさん(82)。
そんなおふたりが建て前なしで語り合った「おしゃれな女の心得」とは─?
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川邉 木村さんは、もともと教師をしてらっしゃったそうですが、どうしてファッションのほうに?
木村 原点は高校時代ですね。仲のいいお友達が2人とも美人で、お人形さんみたいだったんですよ。うちは母が美人で、父はちょっと不細工な人でね。私はよく告白の手紙を友人に渡す役目をしていて。おしゃれだった母に「あなたがモテるためにはファッションしかないわよ」って言われたんです。美人な友人と洋服で差をつけようと、おしゃれに凝り始めました。
川邉 そうだったの。木村さんは、自然体で自分らしいおしゃれを楽しんでる感じがします。だから、みなさん「素敵」って言うんでしょうね。
木村 そんな、先生に言われると恥ずかしいわ。川邉さんはどうしてファッションに?
川邉 私は嫁いだ先が老舗の美容家でね。23歳で義母にパリへ連れて行かれたんです。そのままメイクの学校に入れられて。そこの先生が女の人を作っていくとき、ファッションもトータルで考えていく。それを見て、ヘアメイク、ファッション全部やっていいんだなと。
帰国したら、ちょうどディオールから義母のところに委託仕事がきて。まだ何もできないのに、「行ってこい」と(笑)。現場に出てみたら、やっぱりヘアメイクも洋服もトータルでわかっていないと、全体を仕上げることができないんだってわかった。それが最初かな。
パリの女の大胆さを見習わないと!
木村 おしゃれに目覚めたという意味では、私もパリで大人の女性を見たときですね。
川邉 パリの大人はカッコいいわよね。
木村 そうそう。47年間お洋服を扱うセレクトショップをやっているんですけどね。40代、50代は、パリやイタリアの展示会によく行きました。パリの街を歩いていると、服を「はずす」特技を知ってる。私と一緒やん! と思って(笑)。「はずす」「くずす」「色遊び」この3つが私のおしゃれの原点ですね。
川邉 娘が大学生になったときにヨーロッパの旅に行ったんですけどね。パリの空港で娘が「大人がカッコいい!」って言ったんですよ。あぁ、若い子から見てもそう思うんだって印象に残っていて。
木村 今は日本の大人もある程度、世界と肩を並べられるようになりましたね
川邉 なりましたね。でも30年前の日本は、高齢者が遠慮してた。特に渋谷、青山あたりは若者がすごく元気だから、一方で大人の女性がこそこそ自信のない感じで歩いているのがすごく嫌だった。大人がカッコよくないと、街もきれいに見えない。
ちょうど母の介護もあったもんですから、40代後半で一般の女性をトータルで変身させるサロンを始めたんです。
木村 日本人って隠すじゃないですか。年を重ねるとなるべく肌の露出も控えて。それが奥ゆかしい言葉とつながるのかなとも思うんですけど。なんか勇気がないというかね。
川邉 地味にまとめすぎちゃうのよね。
木村 私がパリの大人から学んだのは大胆に出すこと。首から胸元まで14センチあいたシャツしか買わないし、仕入れない。おっぱい見えるか見えないか……くらいなんだけど、向こうの人ってへっちゃらなんですよ。堂々としている。今日は川邉さんがいらっしゃるんでちょっとね(笑)。 いつもは胸元あけてガチャガチャとアクセサリーつけてます。
川邉 遠慮なんていらないのに(笑)。私ね、日本人ってもともと美意識が高い人種だと思うの。着物の時代は特に着こなしも遊びも上手だった。ところが明治から洋服文化がどんどん入ってきたら、遠慮がちでまどろっこしい。見ていると着ちゃいなさいよ! って思うんだけど、なかなかできないのね。
もっと柔軟に新しい服に挑戦する
木村 私のお店に50代、60代のお客さんがいらしたときに「こういうの、いかがですか?」って私が言うじゃないですか。そうしたら、「いや~もう恥ずかしい~」って。そういうときは必ず聞くんです。「奥様はおいくつですか? あなたはおばさんになりたい? マダムになりたい?」と。
私がはっきり言っちゃうから、「失礼な!」って店のスタッフにはいつも怒られるんだけど(笑)。でもね、みなさん「そりゃマダムでしょ」って答えるのよ。「じゃあ着なさいよ!」「でも……」「誰も見てぇへん!」って押し問答ね(笑)。
川邉 関西弁って便利ね!(笑)
木村 あんたを誰も見てへんって。一歩がなかなか踏み出せないんでしょうね。
川邉 時間がかかりますね。私も最初は丁寧にカウンセリングしながらうかがって、お客様の好みのほうに寄せるんだけど。女の人って頑固。その頑固さはいいところなんだけど、もう少し柔軟性があってもいいと思いますね。
木村 私はこの服は勇気がいるな~とか全然関係なく、着たいものを着てきました。本の表紙の撮影日も、オレンジとピンクを上下で合わせた服で行ったらカメラマンが、「えー!? それでいいんですか?」って、びっくりしてましたね。いいんです、どうぞって(笑)。でも、ミニスカートだけはもう20年もはけないんですけどね。
川邉 あら、私はきますよ?ロングブーツと長めの丈のコートを合わせれば大丈夫よ。足さばきがよくて歩いていて気持ちがいい! ヨーロッパの大人の女性はみんなミニスカートで颯爽と街を歩きますから。木村さんがはけば、神戸のマダムがみんなミニになるかも。オススメですよ。
木村 そうですか? じゃあ頑張ろうかな(笑)。
「黒を着ておけば安心」だなんて大間違い!
木村 私、ずっと気になってたことがあるんです。「黒を着ると安心する」言う人が多すぎる。違うっちゅうねん! って。難しい色ですよね。
川邉 大人になって黒を着こなすのは難しいんですよね。
木村 そう! あんな難しい服はないのに。黒は気合入れて着てくださいって言いたい。おばさんたちがいちばん安心して着られる服やと思うてる。
川邉 私、今日、黒ですけど別に気合入れてませんよ? 寒かったから……(笑)。
木村 いやいや、川邉さんは慣れてらっしゃるからです。
川邉 いい例が、黒い喪服を着たときに若い子ってきれいに見えるでしょ? おばあさんが着たら、おばあさんになるでしょ? 喪服を着てきれいに見えた大人って昔はいたのよ。カッコいいおばあさんが。
ブランドで固めるより自分らしさ
木村 グッチやなんやってハイブランドが大流行りして、日本人が漁るように買った時代がありましたよね。
川邉 あの時代、日本人はバカにされていましたよね。今やブランドで全身固めるのはダサい。私はユニクロやZARAの服も着ます。特にユニクロのシャツやデニムは素材も縫製もすごくいい。例えば、ユニクロの上下にブランドのコートをさっと羽織る。
私はシンプルな装いをベースに、小物やヘアメイク、眼鏡で遊ぶのが好きですね。マニッシュなスタイルのときは、足首や手首を出して、上品に女らしさを加えたりね。
木村 私もワイシャツとチノパンがいちばん好きなんですよ。それをどう自分らしく、女らしさも残しつつ着崩すか。
だから私もユニクロにグッチのコートをバシッと着たりするの、大好きですね。
川邉 それが本当のおしゃれですよね。
木村 インスタグラムをやっていると、うれしいことに「ありがとう」ってよく書いてあるんです。なんでありがとうなんやろうって不思議だったんですけど、コメントを読むと、ご自分のことがまだわからない方がたくさんいらっしゃるんだと。あ、私の写真が役に立ってるんやって感じなんですよ。
川邉 迷子になってる人多いわね。私はパリコレやショーのヘアメイクをしていた当時、何でも着こなすモデル、宇宙人のような人たちが周りにいたわけじゃないですか。すると、自分をよく見るようになる。
自分のよさを生かすにはどうすればいいかって原点に戻る。そういう環境がないと、自分らしさと向き合えないのはある意味、当たり前かもしれない。
でも迷子になってる人を助けるのが私の仕事だから、頑張らなきゃと。木村さんみたいに頑張る方がいっぱい増えてくれるといいなと思って、今日はのこのこ神戸まで来ました(笑)。
木村 まぁ、うれしいわぁ!
姿勢のよさこそ、おしゃれの大前提!
木村 おしゃれをする人は長生きしますよね?
川邉 それは絶対あるわね。
木村 次、何着ようかなって高揚感が常にあるし、人の視線をある程度は意識するじゃないですか。それでホルモンみたいなんが出る、もうホルモン少ないですけど(笑)。
川邉 (笑)
木村 おしゃれ忘れたらとたんにおばあさんになっちゃいます。言葉汚いですけど、それでなくても年をとると汚くなりますからね。おしゃれしなくなったら、汚いのダブルでしょ? 洋服で着飾っていかないと。
川邉 私、電車に乗ってるとき、よく女性を見るんです。もったいないなぁ~って思いながら観察する。職業病ですね。でも、ときどきものすごくカッコいい人に会うと、思わず声かけちゃう!「素敵ねぇ! とっても素敵ね」って。すると相手もとても喜んでくださる。やっぱり相乗効果ってあると思うから。おしゃれをして自分自身に気を入れることが元気になる源ですよね。
木村 そうね! それから年とるとね、姿勢が悪い! 腰と背中が丸くなると、もうどんなおしゃれしてもダメ! 年寄りだからこそ背筋を伸ばしなさいよって。
川邉 私もいつもそれ言います。お客さんが姿勢悪いと喝を入れて返しますからね。
木村 気合を入れることと、姿勢をよくすること。大事ね。
川邉 それから、若者に媚びるんじゃないよ! これがいちばん大事なことね。いつまでも若く見せたいと張り合うんじゃなくて、年齢にふさわしい自分を磨きなさいってこと。姿勢をよくする、新しい服を着てみる。気持ち次第で、一歩ずつですよ。
木村 よく年相応って気にされる方がいるけど、年齢相応なんて考えるのがおかしい。勇気がないだのなんだの言う。
川邉 勇気じゃないですよね。自分を甘やかしてると思う。
木村 そうそうそう! それでなくちゃいけないっていうのはないですよね。
川邉 ミニスカート、ぜひ挑戦してよね?(笑)
木村 どないしたん? って言われそう……(笑)次はお酒でも飲みましょか!
木村眞由美さん……神戸で子ども服と婦人服のセレクトショップ『hananoki』を経営。2015年よりInstagramを始めると鮮やかな色合わせ、品よく着崩すスタイルが話題に!
川邉サチコさん……パリコレや国内外のショーでヘアメイクを担当。現在は東京・渋谷のサロン『カワベラボ』で一般の女性向けにヘアメイクからファッションまでトータルコーディネートを行う
《撮影/森田晃博》