「朝ドラは今回が初めて。以前は、実家に帰るたびに家族や親戚の人たちによく”朝ドラ出てね〜“って言われて、期待されても自分の力だけじゃどうにもできないのになって思っていたんです。だから、今回『エール』に出演させていただいたら、僕以上に周りの方々が喜んでくれていますね。反響の多さにびっくりしています」
課題曲の練習で発狂しそうに
作詞家となり、作曲家の裕一(窪田正孝)や歌手の久志(山崎育三郎)とともに“福島三羽ガラス”として活躍する村野鉄男を演じる中村蒼。ドラマでは、久志とともに居酒屋で流しをするシーンでギターにも初挑戦。毎日の練習は想像以上に大変だったそう。
「足を引っ張ってはならないプレッシャーもあり、できる限り練習しました。家では披露する課題曲(『船頭可愛いや』)をひたすら弾いて、指がつったりし発狂しそうになったことも(笑)。森山直太朗さんに、“いかに自信満々の顔で演奏するのかが大事”と教えていただいて。本番はその教えを忘れず、うまく弾いているんだって自信満々で臨みました」
現場ではこんなエピソードも。
「裕一や久志とのシーンが多いんですが、育さん(山崎)とは歌の話やミュージカルの話をしたり。僕の知らない分野なので、いろいろと聞いて教えていただいてます。
窪田さんはメイク部屋に健康器具を持ってきてくださるんです。懸垂できるマシーンや身体をほぐすものとか。それを貸していただいて、使い方を教わったり、メイクさんと一緒に試したりしていました」
この先、物語は戦中から戦後へと移り佳境へと突入していく。
「最終回はまだ何も知らないんです。予想ですか? 年をとっても純粋に裕一や久志らと一緒に音楽を楽しめるようになったらいいなと思います。あと、みんな結婚して幸せになっているのですが、鉄男だけはまだ独身だったりして。ひとりくらいそういう人がいてもいいなと思うんです。なので、最後に鉄男は独身貴族を満喫していてほしいです(笑)」
人の喜びが自分の幸せ
'06年に主演舞台『田園に死す』で芸能界の門をくぐった中村。しかし、当初は戸惑いばかりだった。
「もともと芸能界にあまり興味はなかったんです。高校生のときに福岡から上京してからですね、変わってきたのは。普通、両親は“ダメだったら帰っておいで”って感じで送り出すじゃないですか。でもうちは”成功すると信じている!“としか思ってなかったので、これはダメだからって帰れないなと(笑)。自分で上京すると言い出したこともあり、本腰を入れてというか、より真剣に向き合うようになりました」
また、この作品との出会いで、より強く俳優の道を志すように。
「上京したばかりのころに、『ひゃくはち』という野球の映画をやらせていただいたんです。共演者も同年代の方が多く、みんなで合宿して野球の練習したり、監督にもよく怒られましたが、初めて作品作りをがっつりと体験させていただいた作品。
体力もメンタルもきつかったですが、この映画の現場の大変さを知ったおかげで、その後の作品はどんなにつらくても乗り越えられたという感じです」
そこから数々の作品に出演し、来年で30歳。「身体は全然元気です」と笑うも、気持ちの面でオトナになってきたと話す。
「上京したときは、両親が喜ぶためにという思いで俳優をやっていたんです。それが少しずつ強くなってきて、『エール』もそうですが、演じることで自分や両親以外にも喜んでくれる人がたくさんいる。人の喜びが自分の幸せになってきたのが、オトナになってきたのかなと思います」
また演じたいと思っていた
『赤ひげ』では青年医師に!
この秋、『赤ひげ3』にも出演する中村。小石川養生所の医師”赤ひげ“こと新出去定(船越英一郎)と青年医師との交流、多彩な市井の人たちを描く本作で、医師の保本登を演じている。
「第2シリーズが終わったとき、どうしてもまた保本を演じたいと思っていたんです。撮影初日にはそれが解放されて、その熱量を一気にぶつけました。今回、新しくつぐみ(優希美青)という才能を秘めた女性医師が加わります。彼女の存在に振り回され、どこか争うような、男の小ささじゃないですけど、保本たちの可愛らしい部分を見ていただければと思います」