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 もともと人間の身体には、ウイルスや病気から身体を守る“免疫”機能が備わっている。ところが、気温の低下や、年齢、生活習慣などが原因となり免疫機能が低下すると、本来持てる力を発揮できず、病気を引き寄せてしまう。

「免疫力は生命力と言い換えられます。生命を保つために必要なのは、なんといっても呼吸」とは、芝大門いまづクリニック院長の今津嘉宏さん。呼吸力が衰えると、身体の機能が十分に働かなくなり、ウイルスへの防御力もダウンしてしまう。

 そこで今津さんに、毎日続けても負担にならず、手間もお金もかからない、とっておきの呼吸法を伺った。日々の生活に取り入れて、元気な身体をキープしよう。

臓器の働きを高める!“息止め深呼吸”

「人は、息を止めればすぐに死にます。食事や水はとらなくても、1週間は生きられる。でも息を止めれば3~5分もあれば死ぬ。呼吸は生きることといちばん、直結しています」と今津さん。呼吸は生命を維持するのに必要不可欠。基本に立ち戻り、しっかりとした呼吸をすることは、生命力、つまりは免疫力を高めることにつながる。だから、コロナ禍が続くいまこそ、呼吸を見直すべき。

「巣ごもりや人と会うことが減るなど、生活のスタイルが大きく変わりました。新たな環境に順応しようと心身もバランスを崩しやすくなっています。バランスを崩した状態では免疫力も十分に発揮できません」

【あなたの免疫力は大丈夫? セルフチェックリスト】
■風邪をひきやすい
■眠りが浅い(よく夢を見る)
■起きたときに疲れを感じる
■寝ている途中で起きてしまう
■便秘ぎみまたは下痢ぎみである
■冷え性である
■ストレスを多く感じている
■食事をすると胃もたれがする
■食べすぎ傾向だ、または食欲がない
※1個でも当てはまれば免疫ダウンのサイン。多ければ多いほど、病気を引き寄せやすい身体に。

 ライフスタイルの変化は、ただでさえ心身に負担がかかり、免疫力も落ちやすい。健やかな毎日を過ごすために、まずは老若男女だれでもできる呼吸を整えることが先決だ。

 今津さんは呼吸についてさまざまな論文、書籍で研究。共通して書かれていたのは“ゆっくり鼻から吸って、ゆっくり吐き出す”ということ。

「深い呼吸がもたらす役目は主に2つあげられます」

 まずは、脳と身体に十分な酸素を送り届けるということ。特に各臓器に指令を出している脳に酸素が不足すると、各臓器の働きが低下する。各臓器の働きが悪くなれば、免疫力も下がってしまう。それを避けるためにも、深い呼吸が必須。

 さらに深く呼吸をするためには肺を大きく膨らませる必要がある。グッと膨らませるには筋力が必要となり、関わってくるのが横隔膜だ。

「人間の身体でいちばん大きな筋肉が横隔膜です。深呼吸をすれば、この大きな筋肉が動くのだから、エネルギー代謝として熱を発し、体温を上げる効果があります」

 体温が上がれば、血流がよくなり、免疫力の向上がのぞめる。

息を止めると肺の容量が格段にアップ!

 今津さんが提唱するのは、ゆっくり吸ったら息を止める“息止め深呼吸”だ。

「吸いきったあとに息を止めると、止めている間も肺は広がっていき、肺を隅々まで広げることができます。肺が広がれば、呼吸のスペースが広がり、横隔膜もより大きく動けるようになるのです」

 実践してみると、身体が温かくなるのを実感できる。数分も続けていれば、汗ばむほどだ。

「3回ワンセットが目安。トイレの中でもテレビを見ながらでもいいので、毎日の習慣にしてみてください。姿勢がよくなり、ダイエット効果も期待できますよ」

【息止め深呼吸のやり方】
1~3を3セット行う。1日に何回やってもOKです。

1. 普通に深呼吸
 ゆっくり鼻から息を吸って吐き出す。吐き出すときは、鼻と口、どちらからでもよい。座っていても立って行ってもOK。また、手はどこにおいても大丈夫。

2. 吸ったら息を止めて
 1のときよりもゆっくりと、たくさん鼻から息を吸う。2~3秒、息を止め、1よりもゆっくりと息を吐き出す。

3. 可能な限りゆっくり深呼吸
 2のときよりもさらに長い時間をかけて、ゆっくり鼻から息を吸う。可能な限り息を止め、2よりもさらに長い時間をかけてゆっくり息を吐き出す。

(取材・文/樫野早苗)


《PROFILE》
今津嘉宏さん ◎芝大門いまづクリニック院長。病状のみでなく、その人を取り巻く環境や性格にも留意し、患者の心に寄り添う医療を実践。『病気知らずの名医が食べている 長生き朝ごはん』(ワニブックス)など著書多数。