「胃腸が弱っている、疲れやすい、食後に眠くなる、イライラする……これらはすべて食べすぎが原因かも」というのは、あおき内科院長の青木厚さん。
「ほとんどの人が1日3食をとっていますが、最近の研究で、食べない時間を増やすほうが、健康によいという結果が出たのです」
食べすぎの身体はトラブルのデパート
ノーベル生理学・医学賞を受賞した“オートファジー研究”がそれ。オートファジーとは細胞が飢餓状態になると活性化する、身体の仕組みのこと。
「オートファジーが活性化すると、古くなった細胞が内側から新しく生まれ変わります。老廃物が一掃され、細胞や組織、器官の機能が活性化し、病気になりにくく若々しい身体になるのです」
最近、オートファジーを活性化させることで新型コロナウイルスの感染症が減ったという医学論文も発表された。
「体内にウイルスが侵入しても、異物として分解し、身体に広がるのを食い止める……本来の免疫力がより強靱(きょうじん)になるからだと考えられます」
食べ物が、ひっきりなしに体内に運ばれてくると、内臓はフル回転。内臓は疲弊し、機能は低下。栄養素を十分に吸収できない、老廃物を排出できないなどさまざまな問題が生じる。加えて肥満になれば、内臓脂肪からは悪玉ホルモンが分泌され、高血圧、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)、がんなどを引き起こす原因にもなる。
「処理できる量を超えた食べ物は腸に残り、有害物質を発生させて腸内環境を悪化させます。体内に侵入するウイルスなどの異物を排除し、身体を守ろうとする免疫細胞のうち、約80%は腸にあるといわれています。腸内環境が悪ければ、免疫機能も十分に働かなくなります」
空腹が身体を元気によみがえらせる
青木さんが推奨するのは、10時間、できれば16時間は食べ物を口にしない間欠的断食、いわゆる“プチ断食”だ。
「食べない時間が10時間ほどたつと、肝臓に蓄えられた糖がなくなり、脂肪を分解してエネルギーとして使うように。さらに16時間をこえると、身体に備わっているオートファジーが活性化してきます」
身体の不調は細胞が古くなったり壊れたりすることで生じる。オートファジーによって、これらが生まれ変われば、身体のリセット効果が期待でき、免疫力は向上、病気を遠ざけることができるのだ。
「まず試してみて身体が楽になるのを実感してください」
【青木式プチ断食のやり方】
1. 理想は16時間の断食
最初は空腹でドカ食いをしてしまうこともあるが、身体が慣れ“空腹力”が鍛えられるとドカ食いもしなくなる。まずは週に1回、12時間で試すなど、自分にとってムリなく続けられるように調節を。
2.空腹時にはナッツ類を
お腹がすいたら、空腹をやわらげて栄養価も高いナッツ類なら、いくら食べてもOK。またはチーズやサラダをつまんでも。飴などの糖分のあるものはNG。
3. 食事は好きな物を食べてOK
プチ断食は毎日するのが理想。食事も、野菜中心や糖質を抑えるなどがベストだが、それより大切なのはムリなく実践し続けること。食事はおおいに楽しんで。
■生活スタイル別実行パターン
2つのモデルパターンを紹介。自分の生活リズムに合わせて実行しやすいほうを参考にして。
・夜に空腹時間を作るパターン
6時ごろに起床し、朝食は10時。夕食は18時までに終えて、それ以降、朝まで食べないスタイル。夕食を早めに食べられる高齢者や主婦におすすめ。
・昼に空腹時間を作るパターン
6時ごろ起床して朝食。その後は食事をせず、22時に夕食をとるスタイル。仕事に集中している間はお腹がすかないというサラリーマン向け。
(取材・文/樫野早苗)
《PROFILE》
青木厚さん ◎医学博士。あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。自身も舌がんを患うも完治。食事療法を実践してがんの再発を防いでいる。近著『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)が話題。