「2つの手は、人を助けるためと、自分のために使おう」
と4年前、前任校の離任式で述べていた中学校教員がその両手を、教え子を痛めつけるために使ってしまった──。
生徒に寝技と投げ技をかけ、背骨を骨折
兵庫県の宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問・上野宝博(たかひろ)容疑者(50)が9月25日、1年生の部員Aくん(12)と部員Bくん(13)に、暴力行為を働いたのだ。
柔道部OBが差し入れした冷凍庫のアイスを無断で食べたとして激怒。
「ごめんなさい」とAくんは3回謝ったが、「今ごろ言っても許さん」と黒帯・三段の容疑者は無理やり投げ技をかけて失神させた。
その後、両頬を数回殴り覚醒させ、寝技と投げ技を10回ほど繰り返し、背骨を骨折する全治3か月のケガを。Bくんにも同様の暴行を行い、首に軽傷を負わせてしまった。
部の副顧問もこの現場にいたが、あまりの剣幕に止めることができなかったようだ。
「その後、被害者の親が警察に相談。10月上旬に被害届が出され、12日に逮捕となりました」(地元メディア記者)
ところが容疑者は、
「(暴力の)事実は間違いないがAの意識がもうろうとしていたため平手で頬をビンタしただけ。殴ってはいない」
と犯行の一部を否認。逮捕直後は、反省や謝罪を口にしていなかったようだ。
「怒った姿なんて1度も見たことがない」という声も
実は容疑者の体罰という名の「暴力」は、これが初めてではない。前任校で生徒に頭突きをくらわすなど計3回の処分を受けていたのだ。
また、事件の1か月前には怒りをコントロールする指導者研修を受けたばかり。日ごろから暴力的な問題教員だったことは想像がつくが……。
「いや、とても優しい数学の先生ですよ。怒った姿なんて1度も見たことがない」
と現役の2年生男子。別の2年生男子も、
「口数が少なくて冗談も言わんけど優しくて、教え方がうまい。ボクの中ではNo.1のいい先生。あんなことをしたなんて、信じられへん」
と驚いたようす。元教え子もこう証言する。
「すごくソフト。授業中、寝ている生徒がいても、優しく起こして“頑張ろう”と言ってくれる。わからないところがあれば、放課後に自分の時間を削って、理解できるまで丁寧に教えてくれました」
容疑者は約8年前、西宮市郊外の見晴らしがいい高級住宅街に引っ越してきていた。
「えっ、あの事件は上野さんのこと? 奥さんも働いているようで、子どもさんはいないかと。旦那さんは無口で、近所付き合いはまったくないですね」(近所の住民)
部活とそれ以外のギャップが激しすぎるようだが……。
新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(犯罪心理学)は、
「授業は優しく丁寧に、柔道は厳しくと容疑者が思い込んでいた可能性もあります」
と指摘しながら、次のように解説する。
「普段はおとなしいが、車を運転すると荒々しくなる人がいます。ただ普段の性格というのは一方的な見方で、運転中の荒々しい性格も本当の性格。環境によって性格が変わるのが人間です」
アイスを無断で食べるのは褒められたことではないが、これほどの事件を起こした容疑者は今後も教壇に立つつもりなのだろうか……。