注目のワクチン、治療薬から、身近なアレを使った予防法まで。第3波に備えて知っておきたい「コロナ研究」「コロナに効く」のホントのところを調べてみました!
A型の人はコロナにかかりやすい割合が高い
秋が深まるにつれ、再流行が懸念されている新型コロナウイルス。重症化すれば命にかかわる深刻な病気である一方、感染しても軽症ですむ人もいる。どんな要素が感染リスクにつながっているのか世界で研究が進められる中、驚きの報告が。血液型が新型コロナに関係しているというのだ。
感染症に詳しい、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師が解説する。
「ヨーロッパの研究グループが新型コロナの死者が多く出たイタリアやスペインの重症患者と、健康な人の遺伝子を比較したところ、A型の人はかかりやすかったり重症化したりする割合が高く、O型の人はかかりにくいという結果が出ました。同様の研究報告が複数あるほか、B型でRhプラスの人はリスクが高まるというデータもあります」
なぜ血液型によって、かかりやすさに違いが表れるのだろうか?
「身体の細胞の表面には“糖鎖(とうさ)”という物質がついています。一部のウイルスは、特定の糖鎖にだけくっついて体内へ侵入しようとしますが、血液型の糖鎖もそのひとつ。A型にはA型の糖鎖が、B型にはB型の糖鎖がついている一方、O型には両方ありません。それにより感染しやすさが決まってくるのではないかとみられています」
日本人に最も多い血液型はA型。思わず心配になってしまうが「かかりやすさと重症化しやすさとは必ずしも一致しません。A型だから危険、O型だから大丈夫というわけでもない」と、久住医師。血液型のほかにも年齢や持病など、いろいろな要素がコロナの発症に影響しているからだ。
「リスクとしては高齢であることがいちばん大きい。血液型の比ではありません」
薄毛の人はコロナ重症化のおそれが?
意外なリスク要素は、ほかにもある。ソフトバンクグループの孫正義氏が思わず「マジか!?」とツイートした、こんな仮説に注目が……。
「“薄毛の人はコロナが重症化するおそれがある”というものですね。
男性ホルモンのアンドロゲンはプロテアーゼという酵素を増やしますが、この酵素にはウイルスを活性化させる働きがあるんです。そのため、新型コロナウイルスの能力も高めてしまう危険性を海外メディアが報じて、話題を集めました。実際、スペインの研究報告では、新型コロナの男性患者のうち、71%が男性型脱毛症だったというデータもあります」
そう話すのは、医学博士で医学ジャーナリストの植田美津恵さん。新型コロナは、女性より男性のほうが重症化しやすいといわれている。
「男性ホルモンとの関連が指摘されていることは確かですが、ストレスや皮膚病で薄毛になる人もいますし、薄毛だから重症化しやすいというわけではないと思います」
ワクチンはいつから使えるのか
ワクチンや治療薬の開発も世界中で進められている。
感染を防ぐにあたり「ワクチンを上回る予防はありません。いちばん確実です」と語るのは、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師だ。
「イギリス、アメリカ、中国などが開発中で、特に日本はアメリカとイギリスから提供されるという話になっています。さらに国内でも、大阪大学や塩野義製薬、第一三共といった製薬メーカーが開発を進めている。来年には国産ワクチンが出てくるのではないかと思います」
各国がワクチン開発を急ぐ中、臨床試験の中断が相次いでいる。9月初めには、英アストラゼネカが開発するワクチンで参加者に神経系の症状が出て中断(のちに再開)。今月12日にも、米ジョンソン・エンド・ジョンソンが最終段階に入っていたワクチンの臨床試験を「説明のつかない病気が参加者に出た」として一時、中断した。
「発見から1年もたっていない新しいウイルスですから、どのような副作用が生じうるのか誰にもわかりません。ワクチンを接種して抗体が上がったとしても、それがウイルスを中和するのかどうかも未知数です。また、人種によってワクチンの有効性に差があるかもしれない。
ただし日本の場合、イギリスやアメリカでの試験結果を前例としてみることができますから、副作用に関して慎重に検討可能といえそうです」(大谷医師)
国産ワクチンに先立ち、今月にも承認申請されようとしているのが治療薬候補のアビガン。審査の結果、有効性や安全性が認められれば、国内3例目のコロナ治療薬が誕生することに。
「政府がアビガンの審査を3週間で終えて、11月中に承認する方向で計画しているという報道がありました。それが本当なら形ばかりの審査になってしまいかねません」
とは、前出・植田さん。今年5月には、安倍前首相がアビガンの承認を月内に行うよう厚生労働省に指示したとして、批判を集めた。
「当時は緊急事態宣言が出されていましたし、承認を急いで、国民へ安心感を与える狙いが大きかったのでしょう。幸いなことに、今は死亡率がずいぶん下がってきています。ここは慎重に、きちんと審査すべきです」(植田さん)
柿と緑茶のパワーに注目が集まるワケ
身近な食品を使った「コロナ対策」の研究も話題を集めている。奈良県立医科大学の研究チームが注目するのは、秋の味覚・柿。渋柿を発酵・熟成させた高濃度の“柿タンニン”に、新型コロナウイルスの感染力をなくす効果が実験で確認されたという。
植田さんは、「あくまで試験管内での研究。人を対象にしたデータを待たなければなりません」と前置きしながらも、「タンニン自体に抗酸化作用や抗菌力があります」と指摘する。
「有効な濃度の柿タンニンをどうやって日常的に取り入れるのかが、次の課題になってきますよね。例えば、赤ワインなどに含まれる成分のレスベラトロールには、老化を遅らせ寿命を延ばす“サーチュイン遺伝子”を活性化させる働きがありますが、これをワインで取り入れようと思ったら1日に数十本も飲まないといけない。柿タンニンにも、それと同じ問題がいえるのでは?」(植田さん)
奈良医大は特許を出願し、アメやガムなどでの実用化を目指すらしいが、まだ先の話になりそう。
また、緑茶などに含まれる茶カテキンにも注目が。京都府は京都大学と共同で、茶カテキンの新型コロナウイルスへの感染防止効果を確かめる研究を進行中だ。カテキンには抗酸化力や抗菌作用があることから、自民党内では「茶カテキン研究会」を設立し関心を寄せている。
「インフルエンザでは緑茶に予防効果を認める論文がいくつか出ています。この時期、コロナだけでなくインフルエンザも予防しなければなりませんから、身近で取り入れる習慣としてはアリかと思いますね。実際、私も緑茶はいただいてます」(大谷医師)
手洗いやマスクはもちろん、できる対策は万全にして第3波の襲来に備えたい。