コロナの影響か気分は鬱々、体調もすぐれない……実はそれ、自律神経の乱れが原因かも!? “人類史上、最大に目を酷使している”現代。コロナ自粛で家にこもり、スマホが手放せずにいる人も多いはず。
「秋から初冬にかけては気候の変化が大きく、自律神経が乱れやすい時期。特に自律神経の調整機能が弱っている40代以降は注意が必要です」
と、語るのは女性の不調に詳しい眼科医の大原千佳先生。
「男性は30歳から、女性は40歳から自律神経が衰え始めます。寒くなる季節に自律神経を整える習慣をつけておくといいですね」(大原先生、以下同)
自律神経の乱れは肉体にも精神にも影響
「頭痛、肩こり、精神的な落ち込みなど、心と身体の不調は自律神経の乱れからくることが少なくない。パソコンやスマホの操作は、同じ姿勢をとり続けることによる不調もありますが、同時に自律神経の乱れも起こっています」
自律神経を整え、不調が改善した患者も多いそう。
ところで、よく耳にする自律神経だが、ここで意味をしっかり理解しておこう。
「自律神経とは、脳からの指令で生命を維持する機能を自動調節する神経のこと。例えば体温や呼吸などを24時間、休まず調整しています」
気温華氏10度の部屋で寝ていたら、体温も摂氏10度になった……なんてことになったら大変だ。身体の恒常性を整える働きをするのが自律神経なのだ。
「自律神経は2つあり、これを車にたとえるとアクセルとブレーキ。呼吸や心拍数を早めるなどアクセルの働きが交感神経、逆にそれらを緩めるブレーキの働きが副交感神経です。これらは連携し、バランスをとりあっています。車の運転ではアクセルを強く踏んだり、急ブレーキを何度もかけると、快適なドライブができず、タイヤやエンジンも傷む。身体も同様で、アクセルとブレーキを過度に使うと不調が起こります」
車は自分で操作できるが、自律神経は困ったことに自分の意思でコントロールできない。車のエンジンを止めるように、心臓をちょっと止めておこう、なんてできる人間はいないはずだ。
「自分の意思でコントロールできないからこそ、乱れに気づかず、不調につながってしまうのです。例えばパソコン。仕事をしているときは交感神経が活発に働きますが、パソコンなど近くを見ると副交感神経が活発化し、バランスを崩しやすいのです」
自律神経の乱れによる不調は以下のとおりで、肉体と精神の両方に現れる。
【自律神経に伴う症状】
◎肉体的症状
便秘、下痢/首こり、肩こり/頭痛/肌あれ/耳鳴り、めまい/動悸、息切れ/慢性疲労/手足のだるさ/冷え性/多汗
◎精神的症状
気力低下/イライラ/くよくよ/緊張感/不安感/孤独感/喪失感/焦燥感/恐怖感/自殺願望
目つぶり5秒で脳疲労を解消
生命維持機能を調節する自律神経が乱れると、身体に不調が起こるのは当然の流れ。しかし、自分の意思でコントロールできないとなると、どうすればいいの?
「自律神経を操作することはできませんが、整えることは可能。いちばんオススメなのは、目を閉じることです」
目でものを見たり、耳で音を聞くと、脳がその情報をせっせと整理をして認知したり、記憶をしている。
「脳が整理する情報の8割は目からです。目から次々と情報が入ってくると、オーバーワークとなり、脳疲労を起こしてしまいます」
脳が疲れると、記憶力や思考力が低下するのはもちろん、自律神経にも影響する。
「脳が情報整理する時間を“デフォルト・モード・ネットワーク”といいます。ボーッとしているときがそれです」
では、積極的にボーッとしたらいいか? というと、それよりも情報をシャットアウトすることが有効。
「8割の情報をシャットアウトすれば、脳は休まります。自律神経は脳が指令を出しているため、たとえ5秒でも脳を休ませることが、整えることにつながります」
5秒の休憩をこまめに行うことがポイントだ。仕事中や接客中など、目を閉じるのが不自然な場合は、考えるふりをして、5秒目を閉じよう。
「同時に深呼吸をすると、さらに自律神経が整います」
例えばオフタイムならテレビのCM時間や、いやなニュースなどが流れている間に目を閉じるのがオススメだ。
「メンタル的にマイナスな情報はシャットアウトして」
有効性を考えると、目を閉じる時間は、5秒以上が望ましいという。
「厚生労働省のガイドラインでは、パソコンなどの作業で、目を1時間使ったら15分休憩をとることが推奨されています。休憩時間がとれるときは蒸しタオルを閉じた目の上にのせたり、ツボを軽くたたくと効果がアップします」
目を酷使しすぎると若くして失明も
目を閉じることで別の効果もある。
「パソコンやスマホを見ると、瞬きの回数が約3分の1に減る。すると涙が蒸発し、ドライアイが進行してしまいます。目を閉じれば涙が目の表面を覆うのでドライアイの予防にもなります」
ドライアイは、自律神経の乱れを促進するリスクも。
そもそも、現代人は目を使いすぎている。朝から夜中まで電気をつけて活動していることに加え、
「スマホの普及で、電車での移動中も休憩時間も、寝る直前まで画面を見ていることが多いと思います。画面を見続けることは、目を酷使しているということ。確実に目の機能は弱っています」
白内障、緑内障、加齢黄斑変性など失明につながる病気のリスクが、現代人は大きく高まっているという。
「目が見えなくなったら、生活の質は大きく低下します。目の病気は高齢者だけの問題ではなく、現代人は若くても失明する危険性が高まっています。目に関心を持ち、目を閉じる習慣をつけるとともに、かかりつけの眼科医に定期的に目の病気をチェックしてもらうことも重要です」
自律神経を整えて体調をよくし、失明を避けるためにも、こまめに目を閉じよう!
(取材・文/山崎ますみ)
《PROFILE》
大原千佳先生 ◎大原ちか眼科(福岡市)院長3つの大学病院、市中の病院勤務、8つの学校医を経験し、5万人以上を診察。YouTube「ちか眼科チャンネル」が大好評。テレビ、ラジオ出演、新聞、雑誌掲載多数。著書『目を5秒閉じれば自律神経は整う!世界一かんたんなセルフケア』