「まさか、あの先生が……どころの意外性ではありませんよ。保護者の人気はナンバーワン。子どもたちには自慢の先生なんですから」
と、在校生の母親は呆然。
東京都あきる野市の公立小学校で児童の上履きを隠したとして警視庁五日市署は10月15日、器物損壊容疑で同校の教諭・井上浩一容疑者(38)を再逮捕した。
上履きを隠す行為が器物損壊にあたるのは、片足だけでは使えなくなるためという。
児童の防災頭巾に「しね」と落書き
9月26日に別件で逮捕されており、余罪が発覚したかたち。いずれも教職にあるまじき卑劣かつ低レベルな犯行で、児童・保護者らの間に動揺が広がっている。
全国紙記者が犯行の手口を明かす。
「最初の逮捕は、黒色の油性ペンで、児童の防災頭巾に『しね』、絵の具セットに『きしょい(気色が悪い)よきみ』などと落書きした疑い。わざとひらがなで書いて児童の犯行を装った。
次は下駄箱から児童3人の上履きの右足用だけを持ち去った疑いで、教員用更衣室の容疑者のロッカーから3足とも発見された」
落書きについては、
「ほかの教員が仕事をしないので憂さ晴らしでやった」
などと容疑を認めているが、上履きを隠したことは、
「心当たりがない」
と否認している。
ほかの教師たちは職務怠慢なのか
「校内に設置した防犯カメラの映像や同僚教師の話などから井上容疑者が浮上した。落書きはあっさり認めながら、自分のロッカーから現物が出てきたにもかかわらず、上履きを隠したことは認めないのが不思議」(前出・記者)
同容疑者が赴任した約3年前から児童のリコーダーや文房具などが紛失する被害が約100件発生しており、逮捕以降はピタッと止まった。
五日市署は、その関連を調べている。
ほかの教師たちは、そんなに職務怠慢なのか。
「いいえ。先生たちは、みな一生懸命です。朝早く登校して授業の準備を進め、教室で“おはよう”と児童を迎えます。放課後は、クラブ活動を見たり、テストの採点や児童のノートの分析、ひと言書き添えたり、残業代は1円も出ないのに遅くまで残っている。働き方改革で“早く帰るように”と言われても、“あと少し”などと粘るし、子どもたちへの愛情からやりたがるんです」
と、同小の校長は“見当違い”との見方を示す。
児童の犯行と考えて内部検証を続けてきた
学校関係者によると、本来の勤務時間は午前8時15分から午後4時45分まで。同小では午後10~11時ぐらいまで残業する教員もいる中、井上容疑者は午後8~9時には退勤することが多かった。ただ、出勤はいつも同容疑者が一番乗りだった。
「毎朝5時に登校していました。授業の進め方も上手で、知識を教え込むだけでなく、子どもの考えを引き出すのがうまかった。何らかの不満があったのかもしれませんが、相談などはなく、事件は残念でなりません」(前出・校長)
小学生のことだけに、すべての紛失例が事件性をはらんでいるとは限らない。それにしても学校で学用品がなくなることが多すぎるし、落書きは明らかに故意。なぜ学校は約100件も累積するまで警察に相談しなかったのか。
市教育委員会の関係者は現場の苦悩をこう打ち明ける。
「教師が犯人とは誰も想像していなかった。隠されたモノや落書き内容を見ると、児童がやったと考えるのが自然で、こういう行動を取る児童やクラス内のいじめを心配し、内部検証を続けてきた。
しかし、気になる点を改善しても解消せず、井上容疑者も一緒になって考えたり、なくなったものを探していたらしい。真相を知ったときはショックで涙ぐむ教員もいた」
近所の住民の評判は「とってもいいパパ」
井上容疑者は東京・八王子市の出身。2017年4月に赴任する以前は産休の代替教師を務めたり、私立小で教鞭をとっていた。
前出・市教委関係者によると、転職の理由について、
「私立小は受験対策がメインなので、公立で学級運営に力をそそぎたい」
と熱意をみせていた。
日野市の自宅から片道約20キロのマイカー通勤。赴任当時は府中市のアパートから通っていたが、約半年後、3000万円弱のローンを組んで中古の2階建て住宅を購入。妻と幼い娘2人と暮らす。
近所の住民は「夫婦円満で、とってもいいパパ」と話す。
「夜明け前の午前3~4時ごろ起きて出勤し、帰宅も午後9~10時と遅い。休日には娘さんと川沿いを散歩したり、家族で外食に出かけるなど身体を休めようとしなかった」
大型高級車で登校、運動会でバク転も
近隣住民には積極的に挨拶し、自宅には両親や親戚がよく遊びに来るなどにぎやかな一家だった。
「ただ、大企業の重役が乗るような黒色の大型高級車で通勤していて、先生らしく見えなかった。少し自己顕示欲が強いのかもしれない」
と別の住民。
この車は生徒の間でも有名で、「井上先生はすごい車に乗っている」と憧れの的だったという。
「それに井上先生は『元ジャニーズJr.』と自己紹介しているんです。芸能界に興味津々の子どもたちは、もう、それだけで尊敬しちゃいますよ。“きょうは先生と『嵐』の櫻井翔クンの話をした”とか、話題も派手ですしね。実際、シュッとしたイケメンだからキュンとする保護者もいて」(前出・在校生の母親)
別の保護者は言う。
「外見だけじゃなく、指導熱心でめちゃくちゃいい先生ですよ。子ども目線で接してくれるし、怒るべきときは机を蹴飛ばして怒ってくれるらしいから信頼していました。教科書のお手本のようなきれいな字で板書して、運動神経も抜群。運動会ではキレッキレのダンスやバク転を披露してくれました」
児童のダンスパフォーマンスのセンターで踊る姿に、わが子を見るつもりが自然と目を引かれてしまったという。
「事件を知ってもなお感謝の気持ちが強く、どうしても悪く思えない。子ども好きな井上先生はいま“この世の終わり”と思っているかもしれませんが、多くの保護者は許したい気持ちでいます」(同)
同情する声は少なくないが、井上容疑者の受け持ちクラスでは、被害は確認されなかった。
ほかのクラスでは、いじめがあるように見せかけて相対的な自己評価アップを狙ったのか、あるいは同僚を困らせたくていじめ発生を偽装したのか、それとも深淵なる別の理由があるのか。
どうであれ、井上容疑者が被害児童の心を傷つけたことに変わりはない。