「どう見ても写真でしょ!?」。はい、違います。こちらは、会社員・古谷振一さんによる鉛筆画。リアルすぎて、絵だと知っていても、やっぱり写真に見えてしまう……。もはや写真を超越した(!?)、極めて精緻な人物画をご覧あれ。
正確な輪郭取りがミソ
でも「企業秘密です」
この写真にしか見えない鉛筆画の作者は、富山県在住の古谷振一さん(56)。メーカーで電気回路の設計をするサラリーマンだという。もしや、美大卒ですか?
「いえいえ。中学のときは美術部でしたが、その後は高等専門学校へ。絵とは無縁の生活を送っていました」
気分転換がてら水彩画を描こうと思い立ったのは25歳のとき。ただ、道具がなかった……。
「部屋にあるもので簡単に描けたのは、鉛筆画。手元にあった雑誌のグラビアを見て、宮沢りえさんや工藤静香さんを描いたのが始まりですね」
その後、描くことから離れるも7年前に再開。すでにYouTubeが普及し、古谷さんは自分のチャンネルを持っていた。
「ビデオカメラで描いている様子を撮ってアップしてみたら反響があって。そのときは、北川景子さんでした」
今やその作品は80作以上。トータルの再生回数は1700万回超え。A4のケント紙が基本で、完成までに1週間から10日ほど。でも、どうやったらこんな写真のような絵が描けるの?
「トレース専用の機材などは持っていません。独自に、正確な輪郭取りの方法を編み出しまして。企業秘密です(笑)。下書きの段階で輪郭取りを正確に行うので、後は目、鼻、口……とパーツごとに一気に仕上げています。美術の時間に習うデッサンの手法とは全然違いますね」
この手法により“イマイチ似なくて困る……”ということは皆無なのだいう。とはいえ、描きにくいのはどんな人?
「みなさん、一律に難しいです。顔に絞って言えば、もっとも気を遣うのは瞳。最初に色を置くときがいちばん緊張します」
そんな古谷さんが描く人物は、今をときめく芸能人ばかり。
「ミーハーだと思われがちなんですが(笑)、まったくそんなことはなく。テレビもあまり見ませんし。YouTubeアップが前提なので、みなさんに見てもらえる旬のタレントさんを選んでいます」
芸能人のみなさん。古谷さんに描いてもらえたら間違いなく“超・売れっ子”ですよ!
古谷さんのYouTubeには、描画の早回し動画が多数アップされている。こだわりのBGMが感情を揺さぶり、まるで映画作品のよう。「感動した」との声多数
https://www.youtube.com/c/shtt4881
リクエストが殺到したのは
吉沢亮
今年5月。「片側の頬だけに光が当たり、もう片方は暗い。そのリアルさを出すのが大変でしたが、やりがいがありました」(古谷さん、以下同)
上白石萌音
今年6月。佐藤健(次ページ)の鉛筆画完成後“萌音ちゃんも描いて”とのリクエストが殺到。「手は難しいです。毎回必ず描くわけではないので」
佐藤健
『恋はつづくよどこまでも』の余韻が残っていた今年5月。「YouTubeにアップして1週間で30万回以上、再生され、びっくりしました
石原さとみ
'16年4月。「彼女の特徴である唇は、ちょっと苦労しました。あと、瞳に映り込んだカメラマンまで描いたのが面白かったです」
顔の濃淡のつけ具合が難しかったのは……
山崎賢人
'18年9月。「目や眉毛のリアルさを出すのが面白かったですね。デニムジャケットの質感を出すのには、すごく苦労しました」
有村架純
'16年4月。「左のほうから太陽を浴び、髪が光っている加減を表現するのがちょっと難しく、テクニックの見せどころでした」
横浜流星
今年7月。「現在の最新作です。顔の濃淡のつけ具合がちょっと難しかったです。袖のボタンのリアルさを出すのは面白かった」
故・志村けんさん
今年6月。所属事務所を通じ、志村さんのお兄さんにこの絵をプレゼントしたそう。「お礼の電話に加え、お礼の品まで送っていただき、すごくうれしかったです。なんだか恩返しができたような感じがして」
浜辺美波
今年1月。「リアル度は髪の毛の質感で変わってきます。あと背景と衣装との境目がぼやけているところには気を遣いました」