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 資産1億円と聞くと、さぞや華やかな生活を送っているのだろうとイメージしがち。しかし、実家が代々資産家だったり結婚相手が大富豪でもなく、自力で1億円もの資産を築いたとなれば、話は別。

お金持ちは“裕福バレ”を望まない

「よく言われる“お金持ちはケチ”は本当の話。しかもただのケチではなく“誇り高きケチ”です」と教えてくれたのは、15年以上、家計の見直しを行い、資産家のクライアントも多いファイナンシャルプランナーの藤川太さん。

「しっかり稼いで資産は億超えという人ほど、チェーン店の居酒屋で数百円のクーポンを自慢げに出します。なぜなら数百円でも無駄に消費しないことに誇りを持っているから。それほど徹底しなければ1億円は貯められません」

 しかも、どうやらこのケチ伝説は、日本だけに限らない。シンガポールを拠点に活動するファイナンシャルプランナーの花輪陽子さんも、

「ローカルの方、シンガポール在住の日本人など、1億円以上の資産をお持ちで相談にこられる方々を見ていると、普段の生活は総じて質素。結婚指輪も10万円以下、旅行は2年に1回しか行かないなど、普通の人たちよりもお金を使っていない印象です」

「贅沢(ぜいたく)なんてしてないのに全くお金が貯まらない」と愚痴っている人は、そもそも贅沢の基準が違っているのかも!?

 今後、本気で貯め体質にシフトしたいなら、億万長者たちの考え方や習慣を学んだほうがよさそうだ。

 では億万長者の思考とは、一般人と何が違うのか?

「決定的に違うのは、常に他人ではなく自分にフォーカスして考えていること。他人にどう見られるかや、ほかの人がどうしているかなんて、お金持ちは意識していません。そもそも裕福に見られたいどころか、周りにバレたくないと思っていますしね。例えば飲み会に誘われたときも、本当に行くべきか、そのつど自分で考えて判断します。ナシ崩し的にお金を使っていては、いつまでたってもお金は貯まりません」(藤川さん)

 思い当たりすぎて心が折れそうな人も諦めるなかれ。何歳からでも、習慣を変えることは可能!

「そのためにまずおすすめなのが、財布の中をスッキリ保つこと。最近はキャッシュレス化が進み、財布だけですべて管理できるわけではありませんが、財布はいちばん身近なお金との接点。しっかり管理することで、お金への意識も変わります」(藤川さん)

 さらに花輪さんからは貯まる仕組み作りの提案が。

「貯まっている方の多くがやっているのが、収入の15%など、決まった金額を真っ先に別の口座に移して投資をするという方法。運用が不安な人は定期預金でもいいですが、とにかく一定額を簡単に引き出せないように確保し、残りのお金で生活するようにしていくと、細かな家計管理が苦手な方でも定着しやすいと思います」(花輪さん)

 次のページにまとめた「10の習慣」もぜひまねて、貯め体質を目指そう!

お金が貯まる10の習慣(前編)

1. ケチであることに誇りを持つ
 無駄遣いしない生活が染みついており、ケチであることを隠すどころか、むしろ誇りに思っている。「例えば、通常10000円以上かかるホテルでの食事が4000円になるプランを予約サイトで見つけた! なんてときは、うれしそうに自慢されます(笑)。投資で大損することよりも100円、1000円を無駄に消費するほうが悔しい。そんな感覚なのです」(藤川さん)

2. ATMでお金をおろさない
 ATMを金庫がわりにして頻繁にお金を引き出し、その結果、いくら使っているのかわからなくなるのが貯まらない人のパターン。「お金持ちは、記録が残って管理しやすい電子マネーをメインにする方が多く、ATMからの引き出しはほとんどしません。1、2年引き出さないという方もザラです」(花輪さん)

3. 服にお金はかけない
 お金を使うときには、その価値があるかどうかをしっかり考え、使いどころは常に明確。「ホームグラウンドとなる家にはこだわりますが、洋服などの消耗品、すなわち“すぐに価値が下がるもの”にはあまりお金をかけません」(花輪さん)「女性にありがちな“がんばった自分にご褒美”といった買い物もしませんね。ストレスは消費より投資で発散します」(藤川さん)

4. 頼り上手
 “時は金なり”の意識を持ち、無駄を省き効率よく自己管理するのがお金持ちのスタイル。「仕事でもお金の管理でも、税理士などのアドバイザーをつける人が多い。時間の節約になるし、専門家の意見をうまく取り入れられます。身近なママ友でも有意義な情報交換が上手だと思います」(花輪さん)「ちょっとしたアドバイスも税理士に聞いたり、何をどう使えば節税になるか、自分のメリットになるかを常に考える人が多いですね」(藤川さん)

5.見栄のための消費はしない
 貯まらない人ほど、他人から裕福に見られたい“見栄”にお金をかけがち。「コーヒーはスターバックスよりもマックカフェ、飛行機はエコノミー。孫と遊びに行くのも自治体の無料スポットなど、資産家の生活は意外に質素。その分、月に1回だけいいレストランに行くなど、お金の使い方にメリハリがあります」(花輪さん)「お金の使い方が非常にシビアなので、お子さんが“自分の家は貧乏だと思っている”といった家庭も実際に多いんですよ」(藤川さん)

お金が貯まる10の習慣(後編)

6. お金に対してマメである
 節約情報をチェックし、投資も積極的に行うなど、お金との関わり方がとにかくマメ。「お金はみんな好きですが、ほとんどの人がお金に好かれる行動をとっていない。ほったらかしなんです。一方、お金が貯まっている人たちは、お金が大好きかつ、マメに世話をします。財布の中は常にスッキリで、お財布自体もきれいですし、お金が入ってくるよう願かけをして、お守りを入れていたりします」(藤川さん)

7. 余計なものは持ち歩かない
 お財布もバッグもなるべく小型化。持ち物はその日の予定に合わせて使うものだけを毎日入れ直すのがお出かけ前のルーティン。「かさばりがちな診察券やクーポン、ポイントカードなどは、お財布には入れず透明のジップつき袋やポーチに収納。見やすく分けることで、クーポンの期限切れや使い忘れも防げます」(花輪さん)「入れすぎを防ぐために、あえて小さい財布を選んでいる人も」(藤川さん)

8. クーポンを使いたおす
 節約できるお金は100円でも無駄に払いたくない! との考えから、クーポンなどの割引はフル活用が鉄則。「クーポンやポイントはもちろんのこと、いま話題のGoToキャンペーンのように申請手続きがちょっと面倒なものも、手間をいとわずに活用します」(花輪さん)「資産家グループでの飲み会で行くのは大衆居酒屋。さらに全員が率先してクーポンを持参します」(藤川さん)

9. 他人と同じを求めない
 1億円もの財を築くには、長い間しっかり稼ぎ続けることも必要となる。そこで注目なのが、仕事や生活環境に対する視点。「稼いでいる方々が共通して口にするのが“人と同じことをやっていたら、同じにしかならない”という言葉。常にみんなと違うことを探し、人より先を見ています。普通の人は他人と違うことをやるのは怖いと思いがちですが、稼ぐ人たちは、むしろ人と同じことをするほうが不安なんです」(藤川さん)

10. 持ち物にはとことんこだわる
 持ち物は、流行やブランドよりも自分のこだわりを重視。「例えば財布。札入れは2つに分かれていて、カード入れはいくつで……など、細部までこだわりがあり、条件がそろっているものを見つけたら10年ぐらい大切に使い続けます」(藤川さん)「靴などはわりと高いものを買いますが、壊れたら直して10年ぐらいはく。バッグも質のよいものを大切に使って、売ってから新しいものを買うなど、1回あたりのコスパを考えて選びます」(花輪さん)

これが資産1億円超え女子の持ち物だ!

 実際に1億円超の資産を持っている人は、どんな生活をしている?  “貯め体質”へのヒントが見つかりそうなバッグと財布の中身を拝見させていただきました。

シンガポールのお金持ちにならい割引特典つきカードを活用……元・浪費家女子/花輪陽子さん

花輪陽子さんのバッグの中身。これひとつで出かけることもあるという

 現在はシンガポールを拠点にFPとして活躍し、夫婦で資産形成&運用に励んでいる花輪さん。しかし、20代のころと移住直後の2回、浪費期間があったそう。資産運用に関する本を読んだり、仕事で携わった著名な投資家の倹約ぶりに感銘を受けたのが転機に。 銀行のカードは現金は引き出さず、デビットカードとして使用。また、カードに提携レストランでの割引サービスが付与されているので、仕事の打ち合わせにも必ず対象店を利用。必要なものを、ミニマムにすっきり持ち歩くために、日々整理も欠かさない。

「写真は仕事用のバッグですが、カードも入るキーケースをお財布がわりに使ったり、メモはスマホでとるなどして、荷物はできるだけ少なくしています。また、ストラップつきでバッグにもなる財布には、現金もタクシー用に少し入れていますが、ほぼ使いません。カード類も無駄遣い防止のため必要最小限に。シンガポールの銀行のカードは、3種類持ち歩けば行く先々でたいてい割引サービスが受けられるので重宝しています」

花輪陽子さんのバッグの中身。毎日入れ直す

必要な贅沢はOKだが生活用品はコスパ追求でストレスを軽減……資産家ブロガー女子/ふくちゃんさん(40代)

ふくちゃんさんのバッグの中身その1
ふくちゃんさんのバッグの中身その2

「夫婦で目指す、富裕層から超富裕層!」と題したブログを綴(つづ)っているふくちゃんさん。外資系勤務で将来が不安定なこと、夫が結婚当時は年収が低かったことから、ゆとりある資金計画の重要性を感じ、貯蓄をスタート。ANAカードはマイルを貯めて旅行に活用。デビットカードはスーパーでの買い物に。条件を満たせば利用額の1%がキャッシュバックされる点もお気に入り。中身はシンプルかつスッキリ。

「入浴剤は既定量の半分以下しか使わないセコさもある一方で、趣味の旅行には思い切りお金を使い、ストレスのたまらない持続可能な資産づくりを目指しています。ポイントを貯めたいのでキャッシュレス払いが基本。カードは2枚で目的別に使い分けています。現金は2~3か月に1回、5万円引き出しますが、ほとんど減りません。バッグの中身はもともと少なめでしたが、コロナ後、週5で在宅勤務のため、最近はさらにスカスカに」

ミニ財布を愛用中

(取材・文/當間優子)


《PROFILE》
藤川太さん ◎ファイナンシャルプランナー。「家計の見直し相談センター」代表。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに精通し、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。著書に『1億円貯める人のお金の習慣』(PHP研究所)など。

花輪陽子さん ◎ファイナンシャルプランナー。外資系投資銀行勤務を経てFPに。2015年から生活拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。