「あの明るかった妻が外を歩くこともできなくなり……」
悔しそうに語るのは、広島県尾道市の『四一餃子』店主の川端眞一(47)さんだ。
同店は、9月にホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(48)とマスク着用をめぐるトラブルでもめて入店を拒否。以降、日本中からバッシングを受けて休業に追い込まれていた。
クラファンで1200万円に迫る支援が
本誌が店主に取材をした10月上旬にはイタズラ電話などの被害が深刻で、体調を崩した妻と娘は親戚の家に避難している最中だった。最近はどうしているのだろうか。
「先日、妻が家に戻ったのですが、人に話しかけられるのが怖いようでゴミ出しにも出られなくて。街で会った人に騒動について聞かれると、思い出すのもつらいようで、涙を流してしまうような状態です……」(以下、川端さん)
毎月の返済などが30万円ほどあるなかで収入はゼロ。廃業の危機が迫る状況で始めたのが、クラウドファンディング(クラファン)だった。それが大きな反響となり、意外な展開を見せている。
「ネットでの資金調達に抵抗はありましたが、まさかこんなに支援してもらえるなんて」
クラファンとは、インターネットを通じてさまざまな支援を募るサービスのこと。支援者は金額に応じて、あらかじめ設定された返礼を受け取ることができる。
川端さんは今後の事業再開に向けた施設の増強やスタッフ確保のために目標額300万円を掲げた。それがネットで話題を呼び、10月29日時点ですでに1400人以上から1200万円に迫る支援が集まった。
驚きを隠せないといった様子で川端さんが続ける。
「この1000万円で冷凍餃子のネット販売を始めます。発注を受けて発送するまでの流れを作るまでに半年以上かかるでしょうからその間、収入がないのは不安です……」
クラファンの返礼の1番人気が、1万円の支援で店の冷凍餃子を発送するもの。ほかに店のスタッフTシャツ贈呈や、出張での餃子焼き方教室などが予定されている。
なぜ、クラファンを始めようと思ったのか。そもそも、このアイデアを川端さんに授けたのは、堀江氏とも仲のいいあの人物だった……。
「クラファンを実行できたのは、“ひろゆき”さんのツイッターの助言からなんです」
世界最大のネット掲示板サイト『2ちゃんねる』の創設者・ひろゆきこと西村博之氏(43)はツイートで、クラファンを活用して資金を調達し、通販を行うことを提案。
「クラファンなんて考えたこともありませんでしたが、ひろゆきさんがテレビなどの発言でやりやすい雰囲気を作ってくれて、これだけ支援をしてもらえたのだと思います」
テレビ番組のスタッフを通じて、ひろゆき氏本人からも“手伝いますよ”という申し出が川端さんにあったというが、感謝の気持ちだけ伝え、遠慮して断ったそう。
マネージャーの不祥事をタレントが後始末
支援の返礼でいちばん高額なのが10万円で「店主(川端さん本人)1日貸し出し権」だという。応募定員2人のうち1人が、ひろゆき氏のようだ。
「メールで“無理せず頑張ってください”というメッセージを送ってくれました。オファーがあれば、喜んでどこへでも行きますよ!」
当のひろゆき氏は友人である堀江氏が引き起こした今回の騒動、クラファンでの支援について、どのように考えているのか。本人に聞いてみた。
「堀江氏のマネージャーがマスクをしてなかったんですよね。それで、 “隣の薬局にマスク売ってますので”と伝えられたのに、マスクを買いにいかなかったので、マネージャーの問題じゃないかと思っています。タレントの不祥事をマネージャーが後始末をするのはよく見ますが、マネージャーの不祥事をタレントが後始末をしていて、当のマネージャーはだんまりというのはどうなのかなぁ、と思います」
10万円の「店主1日貸し出し権」へ応募したことについては、
「ある程度の金額があったほうが安心感が生まれるので高額のものを選んだのと、フランスに住んでいるので餃子を送ってもらうコースが選べないので、『店主1日貸し出し権』にしました」
貸し出し権の使い道については、川端さんにフランスまで来てもらうわけにもいかないので、
「特になんも考えてないんですが、面白い企画とか思いついたら、相談させていただくかもしれません」
堀江氏は今回のクラファンを批判
堀江氏は今回のクラファンについて、
《私が怒鳴ったことにされて悪者にされて、金儲けのネタにされてさらに居た堪れない思いなんですが》
とツイッターで批判している。しかし自身も騒動の渦中に参加費1万1千円の餃子食べ放題企画を開催しており、人に文句を言えるのか疑問だ。
気の休まらない日が続く川端さん一家だが、取材時の10月下旬には、休暇を取るために広島県内のコテージを借りて英気を養っていた。
「一時は一家離散の危機でしたが、やっと一緒に過ごすことができています。人目を気にせずのんびり山を散歩したり、ドライブに行ったり……。ネットもあまり見ないようにしていますね」
不安定な状態が続いていた妻や娘も、やっと笑顔を取り戻しつつあるという。それでも、騒動の発端となった堀江氏らには思うところが……。
「妻を傷つけられたことは決して許すことができません。今回の件があるまでは家族3人で楽しく毎日、過ごしていたんです。コロナから立ち直って順調だったのに、戻れるならあのころに戻りたいですよ」
そう肩を落とすが、気持ちは前向きだ。
「応援してくれた方々には心から感謝していますし、勇気づけられました。初めは絶望しかなかったのが、“生きていていいんだ”と思えるようになりました」
今後はネット販売が中心となるが、店の再開については、
「妻の状態を考えると、長ければ完全復活まで3年、早くて1年はかかるでしょう。それまで店は閉まったままになりますが、地道に頑張ります」
と時間をかけて復活していく考えのようだ。前出のひろゆき氏も店主に対して、
「家庭が第一なので、無理して急がないでゆっくりでいいと思います」
と気遣っている。
堀江氏との思いがけないトラブルがきっかけで生活が狂わされてしまった川端さん一家。立ち直れる日がくるのをじっと見守りたい。