2020年の流行語にノミネートされた面々

 2020年の新語・流行語大賞のノミネート30語が5日に発表された。

「ソーシャルディスタンス、アベノマスク、緊急事態宣言にステイホーム……パッと浮かぶ言葉を挙げていくだけでも、新型コロナウイルス関連の言葉で30に達するかもしれません。『新型コロナウイルス』そのものが候補にあがってもいいぐらいだと思います」

 と言うのは、ある夕刊紙記者。

コロナ以外、2020年の世相は?

 実際に発表された30のうち、新型コロナウイルス関連用語に分類されそうなのは、以下の言葉だ。

「新しい生活様式/ニューノーマル」
「アベノマスク」
「アマビエ」
「エッセンシャルワーカー」
「おうち時間/ステイホーム」
「オンライン◯◯」
「クラスター」
「GoToキャンペーン」
「3蜜」
「自粛警察」
「Zoom映え」
「ソーシャルディスタンス」
「テレワーク/ワーケーション」
「濃厚接触者」
「PCR検査」

 全30語のうち、実に15語! 前出の記者は言う。

「ノミネートされた『ウーバーイーツ』や『あつ森』も、おうち時間が増えたことで流行した言葉なので、実質コロナ関連と言っても過言ではありません。流行語大賞は、古くは『Jリーグ』('92年)、『がんばろうKOBE』('95年)、『自分で自分をほめたい』('96年)……近年も、『なでしこジャパン』(2011年)、『お・も・て・な・し』('13年)、『そだねー』('18年)など、その言葉ひとつで、どんなことがあった年なのかをすぐ思い出せるという、大きな役割をもっています。

 2020年は、世界中すべての人が『新型コロナウイルスの年』と認識しているはずなので、ノミネートの半分が関連ワードでも不思議ではありません。おそらく大賞はコロナ関連のどれか、複数受賞の場合でもコロナ関連は間違いなく入ってくるでしょう」

 では、コロナ関連以外の流行語はどうだろうか。コロナ関連を除いた言葉こそ、まさに2020年、本来の世相を反映していると思われる。文化・芸能・エンタメ関連で見ると、なんと言っても『鬼滅の刃』の大ヒットが目につく。

「今年前半では、まだ『ヒットしているらしい』とか『面白いらしい』という程度でしたが、10月に公開された劇場版が、異常な数の公開劇場数、そしてソーシャルディスタンスのための空席設置を解除しての公開も加わり、歴代邦画興行収入の新記録も夢ではない大ヒットを記録しています。コロナ直前には『100日後に死ぬワニ』などもありましたが、年の初めの流行語は後半になると印象が弱くなり、流行の鮮度が落ちてしまう。そういう意味でも『鬼滅』は、コロナ関連と並ぶほど、インパクトの大きな流行語でしょう

芸人にはうれしくないジンクス

 ヒットしたといえば、今年は音楽業界が非常に苦しい年となったが、TikTokなどで人気が拡大した瑛人の「香水」もノミネートされた。

「ステイホームをモチーフにした星野源の『うちで踊ろう』が、さまざまな有名人や一般人にコラボやカバーをされ、人気を獲得しました。その下敷きがあったことも後押しし、『香水』も多くの人にモノマネされ、それが動画やテレビ番組で拡散し人気につながった。2020年ならではのヒットのかたちでしょう」(同関係者)

 流行語大賞といえば、その年に流行った芸人のギャグも目玉のひとつだ。近年では「ダメよ〜ダメダメ」('14年)、「ワイルドだろぉ」('12年)、「グ〜!」('08年)、「なんでだろう〜」('03年)などがノミネートされたが、前出のテレビ関係者は、

「顔ぶれを見るとわかりますが、一発屋芸人となってしまうことが多いため、流行語大賞を取ると消えてしまうのではないかという、うれしくないジンクスが生まれてしまいました(笑)」

 と、ノミネートはうれしいが、選ばれた芸人はやや複雑な心境になりそうだ。そこで、今回ノミネートされた芸人枠を見てみると、ぺこぱの『時を戻そう』や、ぼる塾の『まあねぇ〜』が、ソレに該当すると言える。

「『第7世代』というくくりでノミネートされるかと思ったのですが、そうではありませんでした。EXITや四千頭身、霜降り明星など第7世代の人気芸人たちには、誰もが知っているフレーズがないからかもしれません。ユーチューバーのフワちゃんのノミネートは、存在そのものが流行したということですね。見ない日はないぐらいの活躍ぶりでした」

 ドラマ関連で見ると、大ヒットした『半沢直樹』(TBS系)で香川照之演じる大和田暁の『顔芸/恩返し』が選出されている。

「『おしまいDEATH!』ではなかったですね(笑)。半沢は2013年に『倍返し』で大賞を受賞していますが、視聴率でいうと前作を超えられなかったので、今回は大賞とまではいかないのではないでしょうか」(テレビ関係者)

 さらに、今年の流行語ノミネートの大きな特徴は、スポーツ関連の言葉が入っていないということ。前出の記者が分析する。

「本来だったら、今年は東京オリンピック・パラリンピック一色の年だったと思います。コロナの影響ですべてのプロスポーツの中止、そして開幕の遅れ、試合数の縮小、無観客開催など、大きな影響を受けました。さすがにこのような状況では、試合後のインタビューで名言など生まれようがありません。これは仕方がないですね

 流行語のトップテン、大賞の発表は12月1日を予定されている。2020年を象徴する言葉として、いったい何が選ばれるだろうか。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉