国民的健康食の代表格とされてきた『納豆』。
国立がん研究センターなどでは、大豆食品とみそや納豆など発酵性大豆食品の摂取と死亡リスクの関連を研究。「納豆などの発酵食品の摂取量が多いと死亡リスクが低くなる可能性が示唆された」との論文を今年1月に発表した。特に脳卒中や心筋梗塞といった疾患は、納豆の摂取量が多いほど死亡リスクが低下するとの結果が明らかになった。
食べる目安は1日1パック40グラム
納豆そのものには、どんな健康効果があるのか。管理栄養士の森由香子さんが説明する。
まず、大豆の健康要素。
「良質な『タンパク質』はもちろんのこと、コレステロールを下げる『リノール酸』、美肌作りや認知症予防にも効果があるといわれる『大豆レシチン』、女性ホルモンに似た働きをする『大豆イソフラボン』、骨を強くする『ビタミンK』が含まれています。アミノ酸値も高く、まさに完全食です」
そして納豆として発酵する段階で、血液をサラサラにし血栓を予防する『ナットウキナーゼ』や抗菌作用(試験管での試験)がある『ジピコリン酸』、カルシウムの吸収を促す『ポリグルタミン酸』といった成分も生成される。
そして欠かせないのが“納豆菌”。『ビタミンB2』『ビタミンB6』『ビタミンK』は大豆のときよりも増える。
また納豆菌の『タンパク質分解酵素』により、大豆の『タンパク質』の一部が分解されるため体内への消化吸収もよくなる。さらに余分な『ナトリウム』『コレステロール』も身体の外に排出。『水溶性食物繊維』が増えることから腸内では善玉菌が増殖し、便秘予防や腸内環境にも効果がみられるという。
完璧に思える納豆だが、『ビタミンC』『ビタミンD』などビタミン類の一部は含まれていない。ほかの食材と組み合わせて栄養素を補うことで、健康や美容の効果は爆上げされるのだ。
いくら身体にいいからといって、そればっかり食べたり、とりすぎるのも実は身体にはよくない。
「例えば『リノール酸』。とりすぎると逆に『HDLコレステロール』を下げてしまうおそれがあります」
では納豆は1日にどれくらい食べればいいのだろうか。
「目安は40グラム前後。1パックくらいですね」
朝ごはんで食べることが多い納豆。健康効果を期待するにはいつ食べればいいのか。
「ダイエットなら朝。納豆の『タンパク質』が体温を上げます。タンパク質の消化時がいちばんエネルギーを使うため、代謝が上がります」
『カルシウム』補強なら、吸収がよくなる夕方から夜にかけて。血液サラサラを狙うなら夜がおすすめの時間だ。
森さんがイチオシの健康爆上げの食べ方は、納豆+アボカド+マグロの赤身+卵。
「免疫力アップも美肌効果も兼ね備え、栄養のバランスも整えられるので完璧な一品になりますね」
気になる身体の状態に合わせて、食材をプラス。納豆を食べて毎日元気に過ごそう!
高血圧や貧血の予防にも効く!
ここからは、効能別にオススメの食べ方をご紹介。
《免疫力アップ》ビタミンCをプラスして風邪知らず!
「免疫力アップに必要なのが“抗酸化ビタミン”といわれているビタミンCです」(前出・森さん=以下同)
納豆には含まれないビタミンCは、多く含むイモ類や葉野菜で補おう。細かく刻んで納豆と混ぜ合わせて食べたい。
手軽なのはキャベツ。せん切りにして混ぜたり、煮たキャベツで納豆を包みロールキャベツのようにして食べてもいい。食物繊維もとれるので腸内環境も同時に整えられる。じゃがいもと合わせて納豆コロッケにしても食べやすい。
コロナ禍が続き、インフルエンザも流行ってくるこの時期、免疫力アップは必須だ。
ビタミンCが多く、キムチの調味料の唐辛子には発汗作用を促すカプサイシンが多く含まれている。カプサイシンは体温を上げ、内臓を温めることから風邪への抵抗力をアップには欠かせない。さらに脂肪燃焼を促進するのでダイエット効果も。
●イチオシの組み合わせ(2)……+黒酢(バルサミコ酢)
味つけを酢にかえて免疫力アップ。米酢や果実酢ではなく黒酢やバルサミコ酢といった見た目が黒っぽい酢がポイント。タンパク質分解の補酵素であるビタミンB6も豊富で、花粉症などのアレルギー症状を緩和する酢酸菌も多く含んでいる
●そのほかのおすすめ……+じゃがいも/+サツマイモ/+キャベツ/+マグロ/+サバ
《高血圧予防》ポイントは余計な塩分の排出!
血圧を下げるためには、体内の余分な塩分を排出させる、カリウムやナトリウムの過剰吸収を防ぐ食物繊維が豊富な食材を納豆と組み合わせたい。
代表的なのが食物繊維が多いモズクやメカブ、ヒジキなどの海藻類。塩分の多い付属のタレやしょうゆではなく酢や少量の塩で味つけを。
「食物繊維を手軽にとれる寒天パウダーは小さじ1、きなこは好みの量を納豆に混ぜましょう」
むくみ解消や血圧を下げる栄養素、『カリウム』が多い。ゆでた麺とからめるほか、そばがきなどにしてもいい。
●そのほか……+モズク/+メカブ/+ヒジキ/+寒天パウダー/+きなこ
《貧血予防》納豆に鉄分、ビタミンCをプラス
納豆は貧血予防に最適な鉄分やタンパク質のほか葉酸を含む。ただし、鉄分の吸収を良くするために欠かせないビタミンCは納豆には含まれないのでほかの食材で補おう。
チンゲンサイやかぼちゃはビタミンCが豊富。おひたしやてんぷらにして納豆と組み合わせたい。
「貧血予防には食事が大切。鉄分はサプリからだけでは吸収されにくいので、納豆とプラスした食材からとりましょう」
貧血予防には鉄分とビタミンCが同時にとれるレバーペーストを。スパイスがにおいを消すので食べやすい。
●そのほか……+チンゲンサイ/+かぼちゃ/+ブロッコリー/+芽キャベツ/+サツマイモ/+じゃがいも/+カリフラワー
身体を強化して病気知らずに
《動脈硬化予防》納豆には含まれないビタミンB12を補給
ホモシステインという物質が体内に増えることが動脈硬化の原因になるといわれている。ホモシステインを減らすためには納豆の栄養素のひとつ葉酸やニラ、グリーンオリーブ、イクラに含まれるビタミンEが効果的だ。
「納豆にはないビタミンB12を含む食材も動脈硬化の予防にはおすすめ。肉類やタラコなどの食品に含まれているので、組み合わせましょう」
ニラはビタミンA、ビタミンC、ビタミンEが豊富。キムチにすればカプサイシンによる代謝アップも期待できる。
●そのほか……+グリーンオリーブ/+イクラ/+タラコ/+玉ねぎ/+マヨネーズ
《骨を強化する》ごはんと相性もいい卵&しらすの最強タッグ
納豆の栄養素には骨を強化するカルシウムも含まれている。女性は閉経後、骨粗鬆症のリスクが高まるので、納豆とほかの食材を合わせて骨粗鬆症を予防したい。
一緒に取りたいのがカルシウムの吸収促進をするポリグルタミン酸やビタミンDを含むキクラゲだ。細かく切って混ぜて食べよう。
カルシウム豊富なしらすやサクラエビと納豆を食べ合わせてもいい。
納豆との相性がいい卵も実はビタミンDが多い。Mサイズの卵2個には1日に必要な量の3分の1が含まれている。
●そのほか……+キクラゲ/+しらす/+サクラエビ
《疲労回復》ビタミンB1と睡眠で元気いっぱいに!
疲労回復にはビタミンB1など、ビタミンB群が欠かせない。納豆のほか肉類、ウナギ、芽キャベツなどに多く含まれている。中でも枝豆にはビタミンB1のほか、納豆には含まれていない疲労回復を促すビタミンCもある。混ぜれば、豆の食感の違いも楽しめる。
さらに納豆には快眠効果もあるという。納豆に含まれるトリプトファンという栄養素は毎日食べることでメラトニンという睡眠ホルモンを出す原料となる。体力回復には睡眠も大切だ。
「朝の光を浴びてから、14〜16時間後、暗くなるとメラトニンが出るので特に朝、食べると夜ぐっすりと眠れるでしょう」
エノキやまいたけなどのキノコ類からもビタミンB1が摂取できる。エノキは味が淡白で食べやすく、納豆とケンカしない。なめたけを利用してもよい。味がついているので、タレやしょうゆを使わなくてもキノコの風味がプラスされた調味料で十分。
●イチオシ(2)……+豚肉
100グラム当たりのビタミンB1の量は豚肉がナンバーワン! 納豆と合わせるときは脂身の少ない赤身がおすすめ。ゆでて余分な脂を落としたほうが食べやすいが調理法はお好みで。ポン酢や塩で味つけた納豆をソースのようにかけてもいい。
●そのほか……+ウナギ/+芽キャベツ/+枝豆/+まいたけ/+スイートコーン
「美」に全力でアプローチ
《腸内環境を整える》健康+ダイエットの相乗効果
腸内環境が悪くなると下痢や便秘を起こし、栄養の吸収が悪くなる。便通を整えるためには食物繊維が必須。豊富に含む海藻や根菜類と納豆を組み合わせよう。
玉ねぎやアスパラガスには食物繊維のほか、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えるオリゴ糖が含まれている。
玉ねぎはすりおろすと抗酸化作用などが生成される。辛みも少なく、納豆にもよくからむ。
惣菜コーナーでも手軽に手に入るヒジキは食物繊維も豊富。大豆のかわりに炊き上がったヒジキと納豆を組み合わせて。
●そのほか……+大根おろし/+白滝/+こんにゃく/+玉ねぎ(すりおろし玉ねぎ)/+アスパラガス
《ダイエット》秘訣は食べごたえと良質なタンパク質
納豆と食材を組み合わせることでさらにダイエット効果が期待できる。
「ダイエット食品としてもよく食べられるところてんやきゅうりは食べごたえもあり、カロリーも低いので、納豆と合わせて間食にぴったり。量を食べることが大切です」
よく噛んで満腹中枢を刺激することも食べすぎやリバウンドを防ぐポイント。タンパク質を分解するときに代謝が上がるので身体づくりにも最適。
アミラーゼには胃腸の働きを助ける作用がある。便秘が解消されるのでダイエットにはピッタリ。
●そのほか……+ところてん/+きゅうり/+タコ
《アンチエイジング》野菜をしっかり食べて内側から若々しく
アンチエイジングにはビタミンB群のほか女性ホルモンに必要な大豆イソフラボンを納豆からとりたい。加える緑黄色野菜には抗酸化ビタミンといわれ身体を錆びさせないビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどが含まれ、体内から美しくなるためには必須。
小松菜など葉物はざく切りにしておひたしに。
「かぼちゃなどは天ぷらで納豆といっしょに食べてもおいしいです」
カロテンは体内でビタミンAとなり、肌の健康を維持する働きを担う。皮に多いので一緒にすりおろしたほうが効果的。
●そのほか……+小松菜/+かぼちゃ/+赤パプリカ
《美肌に効果的》最強食材『アボカド』で美しく
美肌を作るアボカドは納豆との相性は抜群。カロリーが高いので1度に食べる量は半分くらいにしたい。
スイートコーンやピスタチオにもアボカド同様の美肌成分が多く含まれている。ただし、カロリーも高いので加える量は小さじ1杯を目安にプラスして。
ピスタチオは濃厚で香ばしい風味だけでなく、ポリポリとした食感も楽しめる。
美肌を作る人気の最強食材。ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンEが含まれている。角切りにしてよく合わせて。
●そのほか……+スイートコーン/+ピスタチオ/+ブロッコリー
【PROFILE】
森由香子さん ◎管理栄養士。日本抗加齢医学会指導士。四谷メディカルキューブにて栄養指導などに従事。『間食ダイエット』(文藝春秋)、『管理栄養士が教える美肌スープ』『老けない人は何を食べているのか』(ともに青春出版社)など著書も多数。