「お前が逃げたら、家まで行って親まで殺すからな!」
男性従業員Aさん(62)を、今年1月22日から5月7日までの107日間、脅すなどして軟禁し、働かせた男が11月16日に逮捕された。
岡山西署によると、その男は、岡山市の不動産管理会社「グローバルパートナー」の社長・横田育弓生(やすゆき)容疑者(55)。嫌疑は労働基準法違反(強制労働の禁止)というものだったーー。
日常的な暴力で洗脳
容疑者の両親も加担
容疑者は、Aさんが逃げ出さないように「人感センサー」を使い自宅に帰らせず、月給の支払いはわずか2万円。恫喝(どうかつ)、殴る、蹴る、木刀で殴る、板の間に正座させるなどを繰り返していたという。
そんな傷害などの容疑で5回も逮捕され、すでに起訴されていた。非人道的な扱いはさらにあり、
「Aさんは職場の椅子で寝る程度。トイレにも行くことが許されず、排尿・排便でさえ自分の席のビニール袋にさせられていたようです」
とAさんの知人。
「さらに、日常的に暴力を受けていていたため、洗脳、マインドコントロールをされていたようです。
加えて、Aさんと同居する親に不審に思わないように、“仕事が忙しくて帰れないから”と、ときどき電話をかけさせていました。
さすがに何度か逃げ出したことはありましたが、そのたびに会社の役員である容疑者の父親が連れ戻していました。母親もAさんに暴力をふるうなどして、家族ぐるみの犯行の可能性もあります」(同・知人)
4か月近くも従業員を帰さずに働かせ続けるとは、ブラック企業も真っ青だが、人を人とも思わぬ横田容疑者はどんな人物なのか――。
週刊誌や書籍に
実名で不倫を暴露
岡山市育ちで、地元ではガキ大将として知られていた容疑者だったが、剣道で頭角を現して、中3から大阪の名門PL学園へ。明治大学進学後も活躍して、さまざまなカテゴリーで日本一に何度も輝き、教士七段の腕前で、剣道雑誌に取り上げられたことも。
身長170センチくらいだが、体重は90キロあり、精悍(せいかん)な顔つきには迫力がある。
「元の名前は林美昭(よしあき)ですが、名家だという父方の横田家が途絶えそうになったので、それを継いで下の名前も改めました」(親族)
大学を卒業後は、地元の岡山で教員になったが、剣道の指導時に生徒に暴行を加えて、解雇されたという。
剣道界では有名だった横田容疑者の名を世間的にも有名にしたのは2007年。当時の民主党・姫井由美子参院議員(61)との不倫を暴露したことだった。
「“姫の虎退治”と耳目を集め、自民党の重鎮だった片山虎之助参院幹事長を姫井さんが破り、議席を獲得しました。その後、横田容疑者が既婚者だった姫井議員と過去に不倫関係だったことを、週刊誌や書籍に実名で明かしました」(地元メディア記者)
姫井議員から共同経営を持ちかけられた喫茶店で、横田容疑者が不利益をこうむったことなども公にしたが、
「あれで姫井さんの正体がわかり、次から選挙に受からなくなった。横田が利用されて捨てられたのも事実やろうけど、横田も姫井さんを利用しようと思い失敗したから、ネチネチ暴露するなんて男らしくない。どっちもどっち」(地元の住民)
その後、容疑者はレストランで飲食しながら芸術を鑑賞する「黎明(れいめい)美術館」を設立するなど手広くビジネスを展開。
居酒屋探訪家として知られる吉田類のラジオ番組などで紹介されるなど、地元ではちょっとした名士になっていたがーー。
「横田家はとんでもない一家。私も横田に暴力を受けて、洗脳された被害者。そのうえ、容疑者に土地や建物を乗っ取られ、その額は数億にもなるはず……」
と衝撃的な告白をするのは、岡山市内でいくつかの不動産を所有する男性・Bさんだ。10年ほど前、 Bさんは家族がトラブルを抱えてしまい、裁判対策が必要になったところで頼ったのが横田容疑者だった。
「そのとき、裁判費用やなんや、金がかかってな。それで横田にときどき数十万円単位の金を土地や建物を担保に借りてね。すると、あっという間に土地や建物を奪われたのよ。竹刀でたたいたり蹴ったりして脅すだけではなくて、やつは頭もええからね。知能犯の詐欺師や。弁護士や警察に相談すればよかったけど、当時の私はうつ状態で……。結局、横田のなすがままになってね」
岡山市内の横田家や容疑者が所有する土地や建物の登記簿をみると、確かにかつてBさんが所有していたものが多数。
しかし、容疑者などの所有になったものがBさんの所有に戻ったり、差し押えを受けたりするなど権利関係は複雑でわかりにくい。
「横田容疑者は政治家、企業経営者から、暴力団まで付き合いが広い。司法書士や公証人役場、銀行員まで丸め込んで、偽造の文書などを作らせることもできたはず。金のためならなんでもやる男ですよ」(地元関係者)
息子の逮捕について
「何かの間違いでは」
横田容疑者の母親に、Aさんの事件について尋ねたところーー。
「Aさんこそヒドいんですよ。始末書を何枚も書いて、どれだけ会社に損害を与えているか。実際に訴訟も起こしています。給料の2万円は、彼が保険だか手当を受けているそうなので……」
だからといって、従業員を奴隷のように扱っていいという話にはならない。Aさんの知人はこう証言する。
「Aさんはきちんとした会社を定年退職した人。仕事ができない人やない。ただ、人に逆らえないおとなしいまじめな人。理不尽なことを突きつけられ抵抗できなかったのでは……」
容疑者のAさんへの暴力行為について母親が続ける。
「いや、見てません。知りません。今回の警察の逮捕は間違いか? ええ、何かの間違いではないかと……」
Bさんが主張する不動産の乗っ取りについては、
「不正な土地や建物の取得などは一切やっていませんよ」(母親)
一方の父親は、
「帰れ、帰れ! こんな夜中に来て! 夜の7時だと? わしはさっきから酒を飲んどるから、夜中と一緒や。帰れっ!」
と取りつく島もない。
「この事件を契機として、今後は容疑者が過去に行ってきた不正な土地や物件の取得についても追及されるのではないでしょうか」(前出・関係者)
警察にも知己(ちき)が多く、教職についてからは出稽古のために、大阪府警や警視庁の道場を渡り歩いていた横田容疑者。
そこで鍛えた剣の力を不当に用いて、人を屈服させていたのであれば、そんな剣友たちも容赦はしないはず。
かつて姫井元議員が行為中に「ぶってぶって」と、せがんだことも暴露した容疑者だが、次に痛めつけられるのは……。