山崎育三郎(34)が、NHKの朝ドラ『エール』での共演がきっかけで森山直太朗が作詞&作曲した新曲『君に伝えたいこと』をリリース。撮影現場で意気投合したふたり。森山は、山崎のために10曲程度を書き上げ、そのなかから山崎が、大切な人に思いを届けるバラード曲を選んだ。
「ホームグラウンドにしているミュージカルのナンバーは演じている役や作品として歌うけど、それとは違う等身大の自分として音楽を届けることに憧れがあり、この曲がいちばんストレートに響きました。
『エール』での藤堂先生(森山)と久志(山崎)との関係にも重なっています。聴く人にとって、それぞれの物語としてハマるような歌になっていると思うので、人の心に寄り添える楽曲になれたらと思います」
歌い方はミュージカルとの違いを意識した。
「大劇場で何千人を前に歌う表現ではなく、目の前にいる方に語りかけるように歌っています。いままでやったことがない歌い方で、新しい自分の声の響きや音色が新鮮でした。伴奏はオーケストラで華やかにする案もありましたが、シンプルにピアノだけにしました」
吹奏楽部員とコラボ、いちばん震えた瞬間
カップリング曲は『栄冠は君に輝く』。久志のモデルとなった歌手の伊藤久男が歌い、夏の全国高校野球大会のテーマソングとして知られる。当初、『エール』の関連番組の企画で、同曲を作曲した古関裕而氏の母校、福島商業高校の吹奏楽部の生徒とコラボレーションする予定だったが、コロナ禍で中止に。
「自粛期間中に生徒たちが演奏を練習している動画が送られてきていました。夏の甲子園野球だけでなく、部活に打ち込んでいる生徒たちの大会が次々と中止になってしまった。演奏を披露する場がなくなった彼らの思いや、コラボをいい形でパフォーマンスできたらと思い、リモートで録音しました」
コーラスには、福島大学付属小学校合唱部と森山が参加している。
『栄冠――』は、戦争によって自暴自棄になった久志が再起するきっかけになった曲で、朝ドラでも歌声を披露。感動的なシーンになった。
「甲子園球場の真ん中でアカペラで歌いました。役を越えて、いろんな人の思いを考えながらエールを送る気持ちで歌い、いままでの撮影で、いちばん震えた瞬間でした」
夢はオリジナルミュージカルの製作
ミュージカル俳優として人気を博し、近年はドラマや映画の映像でも活躍の場を広げている。
「29歳のときに映像の世界に飛び込んで以来、ひとつひとつ必死にやってきた感じです。コロナによって明日、何があるかわからないという経験をしたことで、どれだけ今に集中できるのか、その繰り返しだと思っています」
俳優仲間で友人の尾上松也(35)、城田優(34)とは、3人の名前の頭文字から命名した演劇プロジェクト「IMY(あいまい)」として昨年から活動。来年秋には、オリジナル舞台の上演を予定している。
「僕は、デビュー作( ’98年)が小椋佳さんのオリジナルミュージカルだったこともあって、オリジナルへの思い入れが強く、オリジナルミュージカルを作るのが夢。松也は、新作歌舞伎で新しいエンターテイメントに挑戦し、優は、俳優としてだけでなくミュージカルの演出もしています。
3人だけでなく、いろんなクリエイターや役者にも参加してもらって日本発の作品を作るための準備をしています。オリジナルに勝るものはないと思っているので、楽しみにしてください」
森山とのコラボ、伏線はラジオ番組
今年1月、山崎のラジオ番組(ニッポン放送『山崎育三郎のI AM 1936』)に森山がゲスト出演。森山のギター弾き語りで『さくら』を合唱した。
「そのときが初対面でしたが、リハーサルなしでも、すてきなハーモニーが鮮烈に残りました。(コロナ)自粛後の7月に朝ドラで一緒になり、直太朗さんもラジオでの印象が強く残っていたみたいで、トントン拍子で楽曲提供の話が進みました」(山崎)