11月末、高橋がフィギュアスケートNHK杯に出場し、アイスダンスで再デビューした。転向からわずか1年足らずの挑戦は関心を集め、フィギュアファンは大盛り上がり。母も息子の挑戦にエールを送った。'16年には両親に豪邸をプレゼントするなど、親孝行ぶりも話題の高橋。しかし最近はLINEに既読がつかないなど、連絡無精になっていて──。
高橋大輔、アイスダンスで復活に歓喜
「やっぱりシングルのときに比べると、常に神経を遣っていると思います」
11月22、23日に行われたフィギュアスケートのグランプリシリーズNHK杯。試合後にこう語ったのは、アイスダンスで再デビューを果たした高橋大輔(34)だ。
「'19年の9月にアイスダンスへの転向を発表し、12月の全日本選手権を最後にシングルスケートから引退。平昌オリンピックにも出場した村元哉中選手とペアを組み、今年の2月には渡米してアイスダンスの練習を始めていました」(スポーツ紙記者)
フィギュア界はスターの復活に大盛り上がり。
「初日のリズムダンスは大きなミスもなく演技を終え2位でしたが、2日目のフリーダンスでは演技後半のスピンで高橋選手がバランスを崩し転倒。このミスが響き、残念ながら結果は3組中3位でした」(同・スポーツ紙記者)
それでも、スポーツライターの折山淑美さんは彼の努力を高く評価する。
「1年足らずで、あそこまでちゃんとできた、ということに驚きました。筋肉の使い方や滑り方もシングルとは感覚がまったく違うので、苦労したと思います。わずかな時間で評価されるところまで仕上げたのは、さすがです」
適応能力を称賛するが、厳しい眼差しも。
「シングルとは全然違う競技であること、いくら経験があっても一朝一夕でできるものではないと本人も実感したでしょう。高橋選手のシングルの素晴らしさを知っているからこそ、まだまだ全部を出し切れていないと思ってしまいますね」(折山さん)
高橋の転向は、世界にも衝撃を与えた。
「シングルから始めて、最終的にペアやアイスダンスにキャリアを移す選手は多くいます。でも高橋選手のように、ここまでシングルで大活躍した選手がアイスダンスに転向するというのは世界でもいないと思いますね」(折山さん)
高橋が活躍すれば、日本フィギュア界の展望は明るい。
「かつて女子シングルばかり注目されていた日本のフィギュア界に高橋選手が登場し、男子シングルにも光が当たるようになりました。アイスダンスは海外では昔から人気のある競技ですから、日本でも高橋選手の活躍でシングルと同じくらい話題になってほしいですね」(折山さん)
12月24日からは全日本選手権が控えている。
「未完成な部分も多く、1位を狙うのは難しいでしょう。大切なのは、ミスを減らし自分たちの色をしっかりと出すこと。焦って結果を求めるのは少しかわいそう。再来年の北京オリンピックまでにしっかりと練習を積み重ねてほしいと思います」(折山さん)
高橋大輔の群を抜く「才能」
高橋が中学生のころにコーチをしていた佐野稔さんは、才能に驚いたと話す。
「初めて大輔を見たときは、ジャンプする能力の高さ、氷上を滑るステップのうまさを感じました。中学生の時点で当時の一般選手の平均的なレベルは超えていましたね」
その強みが、アイスダンスではまだ生かされていない。
「アイスダンスの命は“ダンス”なので、ステップのスキルは生かせる部分があるでしょう。氷上での振る舞いを美しく見せるのは基礎としての滑りの技術ですから。それでも、2人での競技というところに難しさがある。シングル競技は“ひとりで好き勝手にできる”ところがいちばんの醍醐味。アイスダンスで重要なのはパートナーとのミックスの度合いです。コミュニケーションを常にとりあう難しさはありますね」(佐野さん)
NHK杯の演技にも物足りなさを感じていた。
「まだダンスはぎこちないな、というように感じました。パートナーとの世界を氷上で作り上げていくことに慣れるのが大切です。氷の上で勝負したい気持ちはあふれているので、オリンピックにも出場できる希望はあると思いますよ」(佐野さん)
新しく登場した競技にも表彰台のチャンスが出てきた。
「'14年のソチオリンピックから採用された団体競技は、シングル、ペア、アイスダンスそれぞれで順位ごとにポイントをつけ、総合の得点でメダルを決める競技なのですが、日本はシングルで上位の成績を獲得しても、ペアやアイスダンスで遅れを取ってメダルを逃しています。大輔の転向でアイスダンスに興味を持つ人が増え、将来的にメダルのチャンスが広がるといいですね」(佐野さん)
母「LINEの既読つかない」
再デビューを家族はどのように見守ったのか。高橋の地元、岡山県倉敷市の理容店で働く母・清登さんは、試合の様子をテレビで観戦していた。
「25年以上ずっと1人で滑っていたのが、2人になるっていうのは大変なことだろうと思っていました。親の欲目かもしれませんが、短期間で大会に出られるほどに完成させることができたのはすごい。よく頑張ったなと思います」
3組中3位という結果も気にならない。でも、ちょっと寂しく思っていることがある。
「もう1年くらい、全然会ってないんです。電話もなくて。LINEも送ったんですが、既読すらつかないんですよ」
'16年に両親に豪邸をプレゼントしたというほどの親孝行な息子が、どうして連絡をしてこないのだろう。
「もともと、こまめに連絡をとるのは苦手みたいで。親と頻繁に連絡するような年ごろでもないですし。それがNHK杯のときに私じゃなくてお姉ちゃんのほうに“がんばります”ってひと言だけ返信があったんです。もう何か月ぶりよって家族で笑いました」
連絡がなくても、日々の動向は把握している。
「おかげさまでメディアの方からいろいろお話を聞きますから、頑張ってやっているんだなと安心しています。本人はキングカズを目指す、なんて言っているようですから、それを見守っていきたいです。あとはペアを組んでいる哉中ちゃんをリフトで落とさないでねって(笑)。そこは唯一、心配しているところかな」
オリンピックに向けて注目が集まれば、高橋自身が報告をしなくても家族に活躍は届く。でも、たまにはLINEに返信してあげてね!