2021年3月をもって、日本テレビ系バラエティー番組『火曜サプライズ』が終了することが明らかになった。2010年4月にスタートして10年、同局の人気番組の一つだっただけに業界内では惜しむ声と、驚きの声が上がっている。
「『火サプ』はスタート以来、安定して視聴率二桁を超える人気番組。ヒロミさんやウエンツ瑛士さんを中心としたMC陣のスタジオトークに加えて、DAIGOや石塚英彦ら好感度タレントによる“街ブラ”ロケが好評でした。また、番宣ゲストを呼びやすいことから局内で重宝されていて、本来なら打ち切り対象になるはずもない番組。やはり、新型コロナウイルスの影響は大きい」(テレビ誌記者)
新型コロナ感染拡大により、各局が対応に追われた2020年。ドラマやバラエティーなどの番組撮影において、感染防止対策はもはや当然のことになった。
「各局で“マニュアル”が作られて、それに基づいて撮影や収録が行われています。でも、当初こそ“クラスターを起こさせまい”とばかりに上層部が目を光らせて、密を避けてこまめな消毒を徹底させるなど厳しく取り組ませていましたが、秋以降は現場任せになっている感はあります。
すると中断時には雑談が多くなり、マスクをしない演者さんも見受けられるように。こちらから“マスクしてください”とは強く言えませんし、芸能界で感染者が目立ってきているのも納得です」(番組制作会社スタッフ)
マスクを着用してもう1度カメラを
もちろん「第3波到来」とされるだけに、コロナ意識が薄まっているのはテレビ局内だけではない。それこそ“街ブラ”を中心とした、グルメ・旅番組のロケは現場の苦労が絶えないようだ。地方で1日に3〜4件の飲食店や土産店を回るという、旅バラエティー番組に同行するディレクターが明かす。
「ウチは表向きは“アポなし”風の構成ですが、お店には予め“この時間帯にお邪魔するかもしれません”と連絡を入れています。で、いざタレントさんが“許可取り”で店内に入ると、ご主人や店員さんがまさかのノーマスク(苦笑)。コロナ感染者が少ない地域、また個人経営店では珍しいことではありません。もう慣れたもので、予備のマスクを大量に持参して、マスクをつけてもらってからもう1度カメラを回します」
店内での撮影が始まっても、扱う料理によってはこんな気苦労もあるのだとか。
「例えばお寿司。カウンターで目の前で握ってもらいますが、やはり素手ですよね。しっかり手を洗っていても、中には人一倍、感染に“注意されている”出演者もいて。申し訳なく思いながらも、大将にビニール手袋の着用をお願いしたところ嫌な顔をされたことがあります(苦笑)。職人さんの仕事を否定された気持ちでしょう」(前出・ディレクター)
また、都心の飲食店ではすっかりお馴染みとなっている、アクリル板などを使った飛沫防止のパーテーション。こちらも常設している飲食店は多くはないそう。
「自作した簡易パーテーションをその都度、テーブルに設置させてもらっています。持ち歩くのにけっこうかさばるんですよ(笑)。でも、番組としては感染防止対策をしているところを見せなくては、ちょっとしたことでクレームが入ったり、それこそネット上の炎上案件になるので些細なことも気を付けている現状です。
仮に、ロケ先でスタッフがマスクを外していたり、密になって大声で話していれば、すぐに“○○番組のスタッフが〜”などとSNSに告発されてしまう時代。コロナ禍での“自粛警察”といった監視の目は、私たちテレビ関係者、特に現場のスタッフには厳しく向けられがちですね」(前出・ディレクター)
番組に批判やクレームがきやすい
ニュースやワイドショーでは連日、「〜でクラスター発生」「本日の感染者数は〜」などと伝え、中には感染拡大の不安を煽るような報道も見受けられる。一方で、感染拡大に拍車をかけるような、大人数でロケを行うグルメ・観光スポットの紹介番組に、視聴者が矛盾を感じている状況もある。
「ただでさえ広告収入が落ち込んでいる中で、番組スポンサーに批判やクレームが寄せられるような事態になれば、たとえ数字を持っていても対応を検討せざるを得ません。ならば、コロナでロケに支障が出やすい街ブラものよりも、スタジオでのトークバラエティーや、スポンサーに添ったVTR番組に切り替えた方がいい。
特に『火サプ』のように、“アポなし”を売りにしている番組であればなおさらのこと。以前であればアポなしも歓迎されたのでしょうが、コロナ禍の現状では何の前触れもなくやってくる突撃取材は飲食店にとってリスクでしかない。取材を断られることも多くなり、スタッフも現場で店探しに苦労していると聞きます。同様の手法をとっているロケ番組の打ち切りは今後続いていくかもしれません」(テレビ局関係者)
私たちの生活を一変させたコロナは、テレビ局のあり方も変えそうだ。