BTS(防弾少年団)の最年長メンバーJIN(ジン)が28歳の誕生日を迎えるわずか3日前の12月1日。韓国の国会で兵役に関する法律の改正案が可決された。韓国では18歳以上の健康な男性に対し、約1年半から2年弱の兵役を課していて、入隊期限は原則28歳。しかし今回の改正で、国の国際的価値を高めた大衆文化のアーティストらは30歳まで期限が延期されることになった。
「兵役にはいつでも応じる」
と本人は言ってきたが…
「延長されるためには今後、行政機関の文化体育観光省から推薦を受ける必要がありますが、JINは事実上'22年末までBTSの活動を継続できることに。法改正がなければ原則としては'20年中に入隊する必要があったので、ぎりぎり間に合わせたのでしょう」(現地の事情に詳しいライター)
米ビルボードでの1位獲得などBTSが世界的な大成功を収める中、今年9月に韓国の一部の国会議員が「兵役延長を認めないのは国家的にマイナスイメージ」と兵役法の改正案を提議。一部で“BTS法案”とも呼ばれ、成り行きが注目されていた。
「“ファンの声が国会を動かした”とか“法改正でファンも大喜び”といったふうに報道されていましたが、私の周辺のアーミー(BTSファンの呼称)からは不安視する声が上がっている」
と語るのはファン歴6年の30代女性。
「今回のような特例で兵役が延期されると、必ず“特別扱い”といった声が世間から上がり、メンバーが批判の対象になるのは目に見えています。現に『BTS法案』と呼ばれ、名前が独り歩きしている状況。新型コロナウイルス感染症の流行で活動が限定されてしまっている今こそ入隊して、コロナが収束し通常の活動ができるころに戻ってきてもらいたいという意見も」
肝心のメンバー本人たちは、兵役に対してどのような意見なのだろうか。
「今年11月にソウルで行われた新アルバム『BE』の記者懇談会で、JINは『兵役は当然のことと考えている。招集があればいつでも応じる』ときっぱりコメント。『メンバーとよく話をしているが、兵役には全員応じる予定』とも答えました」(前出のライター)
彼らの意思関係なしに
“特別扱い”
法改正に世間が熱い注目を注ぐ中、粛々とした態度を示していたBTSのメンバーだが、兵役の話題に関して芸能人は特段に慎重にならざるを得ない事情がある。
韓国ではこれまで精神・身体疾患を偽装するなどし、兵役逃れをしようとした芸能人が複数人いて、明るみになるたび激しいバッシングを浴びてきた過去がある。
有名なのが'04年に起こった人気俳優ソン・スンホン、チャン・ヒョクの事件。兵役免除をあっせんするブローカーから薬物を入手し、腎臓の疾患を偽装。プロ野球選手なども含まれていたことから、大きな物議をかもした。
また、'96年に始まり一時は芸能人のお決まりコースだった「芸能兵制度」も、今や黒歴史。芸能兵は、国防省のPR活動などに従事するのが主な任務だが、通常の兵士より休暇を多く取得していたなど優遇措置的な事例が続き批判を集めていた。そんな中、'12~'13年に芸能兵による不祥事が相次いで発生し、'13年7月に撤廃された。服務中に風俗店に出入りし、撤廃のきっかけを作った歌手SE7EN(セブン)らは7年たった今もイメージ回復に苦労している。
「現在も『兵役で芸能人は特別待遇を受けている』という国民感情が強く残り、有名になればなるほどバッシングの標的になりやすい。最近ではEXO(エクソ)のD.O.(ディオ)のように年齢制限を待たずして早めに入隊したり、SHINee(シャイニー)のミンホのように訓練が過酷な海兵隊に進んで入隊するアイドルも少なくない。それだけに、BTSだけ過剰な特別扱いをされているイメージが付くのは大きなマイナス要素に」(前出のライター)
韓国の文化体育観光省が今年9月に発表した試算によると、ビルボード1位を記録したBTSのシングル『Dynamite』の経済効果は何と約1兆7000億ウォン(約1635億円)。また、所属事務所BigHitエンターテインメントの'20年上半期の売上高は、88%がBTSの関連事業によるもの。10月に韓国の株式市場に上場したばかりの事務所にとって、彼らは大事な虎の子だ。
「今の商機を逃すまいと国と事務所に搾り取られるだけ搾られて、30歳になったとたんポイっとされてしまう感じがして怖い。そもそも、1年半程度の空白でアーミーはBTSから離れません。
JINと一番年下のJUNG KOOK(ジョングク)は5歳差があり難しいとは思いますが、できるだけメンバー7人が時期を合わせて入隊し、誰かが欠けている期間をなるべく短くしてもらいたいというのが一番の望み」(前出のファン)
『BE』の記者懇談会の場で、BTSの兵役が大きなイシューになることについてリーダーのRM(アールエム)は「プレッシャーを常に感じているが、多くの愛を受けているから起こることだと考えている。運命として受け入れようとしている」とコメント。少しでもメンバーたちの望む形での入隊となることを望むばかりだ。