好評の中で最終回を迎えたドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)。『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)などを手がけた中園ミホが脚本を務める本作は、7人の秘書が日本社会の裏で暗躍する“影の軍団”となり、上級国民に鉄槌(てっつい)を下す──という痛快“秘書”ドラマ。
令和版『必殺仕事人』とも言える勧善懲悪&スカッとする内容がウケて、世帯視聴率は第1話からふたケタ台をキープし、11月19日放送の第5話では15・2%と過去最高を記録。秋ドラマの中ではひとり勝ち状態だ。
間口が広く人気を集めやすい“7人モノ”
テレ朝といえば、'15年から6年連続で放送されている東山紀之主演『刑事7人』も人気作。'98年に放映された『7人の女弁護士』では第3シリーズで平均視聴率14・1%をとるなど、“7人モノ”がお家芸になりつつある。
「異なる個性や性格づけができることに加え、何かしらのエキスパートという設定もあって、視聴者からすれば自分好みのキャラクターを探しやすい。また、各人にフォーカスを当てれば7回分のストーリーも担保できますから、連続ドラマを作るうえで計算が立てやすい」
と、“7人モノ”のメリットを分析するのは、ドラマの現場取材や記事を数多く執筆するライターの成田全さん。
「例えば『ドクターX』の場合、米倉涼子が演じる大門未知子にハマれるか否かが大きなポイント。一方、主人公こそいますが“7人モノ”のような軍団系は、ハマるポイントがひとつではないですから、間口が広く人気を集めやすい」(成田さん、以下同)
『七人の秘書』では、木村文乃は元ホステスという経歴を持つ機転がきくリーダー格、菜々緒は男勝りで空手有段者の武闘派、広瀬アリスはドジっ子、江口洋介は彼女たちを仕切る総司令官──。そんな具合に、7人がバラバラの個性を持ち、ストーリーが進むにつれて彼女たちの過去も明らかになっていく。
『七人の侍』以来、人気を集める7にまつわる作品
過去をさかのぼれば、“7人”がつく作品は多い。最も有名なのは、昭和29年公開の巨匠・黒澤明監督『七人の侍』だろう。この金字塔的作品があるからこそ、“7人モノ”の系譜が紡がれているといっても過言ではない。
「『七人の秘書』『刑事7人』のようにタイトルに7人が入るとイメージがわきやすい。年配の人でも7人のチームで何かひとつのことをやるのだな、とタイトルから理解できる」
'80年代には『男女7人夏物語』、『男女7人秋物語』(ともにTBS系)、'90年代は映画『七人のおたく』、つい最近でも『勇者ヨシヒコと導かれし七人』など、7人モノは時代が変わっても人気を呼ぶケースが目立つ。映像作品以外でも、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』など、“7人”に話題作は多い。
また、タイトルに7人こそ含まれていないが、『ショムニ』(フジテレビ系)の第1シリーズも総務部庶務二課の登場人物は7人。さらに、白雪姫のこびとは7人、映画『アベンジャーズ』(2012年)も主要キャラが7人というように、国外でも7にまつわる作品は少なくない。
認知心理学の世界では、「7±2」をマジカルナンバーと呼ぶそうだ。人間が一度に知覚できる情報の最大数は5~9の間と言われ、多すぎると情報処理ができなくなるという。同じ画面に7人が活躍する姿に手に汗を握るのは、そんな人間の脳の仕組みも関係しているのかもしれない。
「日本では七草、七福神というように、七にゆかりのあるものが多く、ポジティブなイメージがある。一方で、海外では古代ギリシャの人たちが正七角形の作図を示せなかったことから、ミステリアスな数字としてとらえられています。しかしラッキーセブンという言葉もあるように、さまざまな側面を持つ数字だからこそ惹きつけられるのでは」
7人というタイトルから金脈を掘り当てたテレビ朝日。今後は、他局でも7にまつわるドラマが増えるかもしれない。
《取材・文/我妻アヅ子》