「お酒が毒になってしまうのは、自分のペースがわからずに相手に合わせてしまうから。お酒は飲んでから酔うまでにタイムラグがあるので、自分が楽しく飲める量を知っておかないと、つい飲みすぎてしまいます」
とは、秋津医院院長の秋津壽男先生。悪酔いせず楽しく飲むには、できるだけゆっくりペースで飲むことが大切だという。それで酔わないようなら、体調の様子を見つつ徐々に量を増やしていくのが正解。普段、飲み慣れていない人は、1種類のお酒を楽しみつつ飲む習慣をつけることからスタートしよう。
「誰かと一緒に飲むときは、ボトルやデキャンタで頼まずに、グラスで頼むようにすると飲んだ量を把握しやすいでしょう。そして、マイペースを保つこと。お酒は飲み方次第で薬にも毒にもなります。外飲みでも家飲みでも、お酒によって会話が盛り上がり、みんなが笑顔になること。これが身体にいいお酒の飲み方であり、お酒の持つ健康作用を最大限に引き出すコツなのです」(秋津先生)
お酒を飲む機会が増える年末年始。悪酔いや二日酔いをすることなく、お酒の効用を得る飲み方をしましょう! というわけで、お酒をもっと美味しく楽しめる知恵をクイズ形式でお届けします(以下、回答は秋津先生)。
何をどう飲む? お酒の選び方編
まずはどんなお酒を選ぶかが重要。肥満を避け、身体に負担がない飲み方はどっち?
Q. 酔いやすいのはどっち?
(1)白ワイン or (2)スパークリングワイン
(2)が正解。スパークリングワインやビールなどの炭酸には胃の粘膜を刺激して、血流がよくなる作用があり、アルコールの吸収も早いため、酔いやすくなります。また、のどごしがよく、飲みすぎてしまうのも理由のひとつ。
Q. 太らないのはどっち?
(1)焼酎 or (2)ビール
どちらも○。お酒の種類によるカロリーの量は、大差がありません。太ってしまう原因はズバリ「おつまみ」にあります。例えば、油たっぷりの揚げ物を山ほど食べたら、誰でも太ります。太りやすいお酒というものは基本的になく、おつまみの量と質で太るのです。
Q. 身体への負担が軽いのはどっち?
(1)毎日少量飲む or (2)1日おきに大酒
正解は(1)。よく、休肝日を設けるのが大事だと言われますが、適量であれば少量の酒を毎日飲んでもいいでしょう。休肝日を設けても、大量に飲酒すれば複数の器官や臓器を傷つけるリスクが高くなります。
Q. 血糖値が気になる人が選ぶならどっち?
(1)日本酒 or (2)ウイスキー
実はどちらでもOK。血糖値が気になる人は糖質を制限する必要がありますが、蒸留酒であるウイスキーは糖質ゼロ。少しでも糖質を減らしたい人は蒸留酒でもいいですが、1日1合〜1合半の日本酒であれば、問題ありません。
翌日スッキリ! 悪酔い防止編
翌日の二日酔いは絶対避けたい。おつまみの種類、焼酎の割材で選ぶべきは?
Q. 飲む前に食べるならどっち?
(1)直前にスープ or (2)ランチをしっかり
両方とも正解。空腹のままお酒を飲むと、胃でのアルコールの吸収が早まり、悪酔いや二日酔いをしやすくなります。飲む直前でもランチでもいいので、何かを胃に入れておくと胃の粘膜が守られ、吸収も穏やかになります。
Q. どっちの飲み方が悪酔いしない?
(1)ワイワイにぎやか or (2)静かに落ち着いて
正解は(1)ワイワイ飲む。仲間と楽しくしゃべることで代謝がアップし、アルコールの分解が早くなるのです。話をすることで飲みすぎ防止にもなります。話をしないと、手持ちぶさたになり、ついお酒が進んでしまいがちに。
Q. サワーを選ぶならどっち?
(1)トマトサワー or (2)生レモンサワー
正解は(1)トマトサワー。トマトがアルコール代謝にも効果的なことが、近年の研究でわかってきました。トマトをとると、体内のアルコールの消失時間も早くなります。トマトのお酒がなければ、おつまみでとってもOK。
Q. 豆腐のおつまみを選ぶならどっち?
(1)冷ややっこ or (2)揚げだし豆腐
おつまみには「温かいもの」「適度な油分があるもの」を選ぶと、アルコールの吸収が遅くなり、胃の粘膜を守ってくれます。正解は(2)の揚げだし豆腐。実は冷ややっこはさっぱりしているだけで、冷たいうえにすぐ食べ終わってしまうので、お酒のおつまみには向きません。
Q. 悪酔いを防ぎたいならどっち?
(1)ビール or (2)ブランデー
どちらとも言えません。ブランデーのように、高いお酒は悪酔いしないといわれますが、実際に悪酔いするのは「たくさん飲んだ」とき。ただ、高価なお酒は大事にゆっくり飲むため、酔いにくいとは言えるでしょう。
Q. 次の日までお酒が残りやすいのはどっち?
(1)日本酒 or (2)ワイン
「日本酒は次の日まで残りやすい」と言われてきましたが、正解はどちらでもナシ。最近はお酒の質が向上し、悪酔いするお酒は皆無になりました。悪酔いするのはお酒の種類ではなく、単に飲みすぎているだけなのです。
Q. アルコール代謝が早いのはどっち?
(1)ギョーザ or (2)もつ煮込み
アルコールの代謝にはビタミンBが必要。だからビタミンB群が多く含まれる食材の代表である豚肉を使った(1)ギョーザが正解。にんにくにもビタミンB群が豊富に含まれているので、ギョーザは最高の組み合わせなのです。
飲みすぎて後悔……悪酔いしたとき編
飲んだ後の体調の悪さ……。「飲まなきゃよかった」と後悔しないための方法は?
Q. 酔いを感じたとき食べるべきは?
(1)チーズ盛り合わせ or (2)鶏のから揚げ
良質なタンパク質が多く、脂質と塩分が少ないものがおつまみの理想。脂質が多いから揚げよりも、ほぼタンパク質で構成されているチーズがおすすめなので正解は(1)。ちなみにクリームチーズは日本酒にすごく合いますよ。
Q. お酒を抜くためにするべきなのはどっち?
(1)サウナに入る or (2)水を飲む
お酒は皮膚からは出ません。飲酒後にサウナに入ると脱水状態が進み、とても危険。水をたくさん飲めば、アルコールが早く抜け、アルコールによる利尿作用からの脱水も防げるのでおすすめです。正解は(2)。
Q. 飲み会の後にできる対策は?
(1)栄養をとる or (2)何も食べない
正解は(1)。飲み会でとれなかった栄養をとると、二日酔い防止に。野菜不足だったらサラダを、肉や魚などタンパク質が足りなかったらチーズを。ただしカロリーが高くないものを選びましょう。シメのラーメンは絶対NG。
Q. 気持ち悪いときやってはいけないのは?
(1)無理にでも吐く or (2)水分を大量にとる
正解は(1)。吐きけがあって自然に吐くならいいのですが、指を口に入れて無理やり吐く行為は、胃や食道にかなりダメージを与えるため、絶対にやってはいけません。どうしても吐きたいときは、水をたくさん飲んで胃をパンパンに膨らませると吐くことができます。
Q. 身体からアルコールが抜けるのが早い人は?
(1)体重80kgの人 or (2)体重50kgの人
体重1kgあたり1時間で約0.1gのアルコールを分解するといわれています。ですから、同じ量のお酒を飲んだら、体格が大きい人のほうがより多く処理できることになるため、正解は(1)。ただ体重はあくまでも目安。個人差や、状況によっても差が出てきます。
Q. 飲んだ後の入浴、おすすめはどっち?
(1)入浴しないかシャワーですます or (2)湯船にしっかり浸かる
正解は(1)。家ではお風呂に入らず、シャワーですますか翌朝、入浴するのがいいでしょう。湯船に浸かると、サウナと同じようにアルコールは抜けずに水分だけが抜け、脱水状態が進みます。入るならぬるめのお湯で短時間に。湯船で寝てしまわないように注意。
Q. アルコール依存症になりやすいのは?
(1)男性 or (2)女性
条件つきで(2)が正解。一般的に肝臓のアルコール処理能力は女性のほうが低いですが、それより大きいのはお酒を飲む習慣の差。女性は飲む習慣が男性よりも少ないので、コントロールができず、依存症になりやすいのです。
Q. 飲み放題をするならどっち?
(1)数種類のお酒を飲む or (2)1種類のお酒を飲む
自分でコントロールできるならどちらでもOK。大切なのはお酒の種類ではなく、アルコールの総量。酔っ払って飲んだ量も把握できずに、次から次へと飲むから悪酔いするのです。飲み放題でも冷静でスマートな飲み方を。
→家で飲むときは終了時間を決めておこう!
年末年始は居酒屋よりも、家飲みする人が多いのではないでしょうか。家飲みやオンライン飲み会は、終電の心配がないためいつまでも飲んでしまいがち。ポイントはお店に行ったつもりで“飲む前に”終わりの時間を決めておくこと。お酒は食事や会話を楽しむための潤滑油。お酒を飲むことを目的にしないことが大切です。
(取材・文/樋口由夏)
《PROFILE》
秋津壽男先生 ◎大阪大学工学部発酵工学科で酒造りの基礎を学ぶ。卒業後、社会人を経て和歌山県立医科大学医学部に入学。1998年に東京・品川区に秋津医院を開業。著書に『酒好き医師が教える薬になるお酒の飲み方』(日本文芸社)など多数。