『テラスハウス』の撮影場所だった物件の外観

 日本のNetflixオリジナル作品の中で、最も愛されていたといっても過言ではない『テラスハウス』。シェアハウスでの男女の恋愛模様を映し出してきた本作は、2020年5月19日に配信した42話を最後に制作が中止され、未完のまま打ち切りになった。数々の思い出に残るテラスハウス自体と、そこで時間を過ごしたメンバーたちは、打ち切りから半年以上経った今、どうなっているのか。

書類送検された男性とメンバーの今

 12月16日、最後のテラスハウスメンバーの一人だった木村花さんが5月23日に自殺したとみられる問題で、彼女のSNSに誹謗中傷する内容の投稿を繰り返したとされる20代男性が、警視庁により書類送検された。

 東京都内に緊急事態宣言が発令されていた5月、木村さんが自ら命を絶ったことに対してSNSのタイムラインは瞬く間に彼女の話題で埋め尽くされた。8月には政府が相次ぐネットの誹謗中傷への対策として、被害者がSNS運営会社に投稿者の電話番号を請求できる省令改正も行われた。

 著名人に対し、匿名のまま誹謗中傷の言葉を浴びせる人が増え、さらに、その誹謗中傷をした人に対し、また別の人が言葉の暴力で攻めるという負のループ。「ペンは剣よりも強し」という言葉があるように、直接的な暴力よりも言葉で人を傷つける行為は大きな社会問題となり、SNSとの付き合いかたを考え直す機会となった。

 その渦中にいた最後のメンバーたちは今もSNSを使って発信を続けている。

 過激なキャラクターで、自身も多くの誹謗中傷を受けていたことを明かしていた“社長”こと新野俊幸は、経営している退職代行サービスの運営を現在も行っているようだ。最後まで、中立的な意見で本質を見出していた彼のSNSには、あの頃と同じ飄々とした新野がいる。

 小悪魔的なキャラクターでテラスハウスに出演していた林ゆめ。現在は、本業のグラビアを中心に、芸能活動を続けている。昨年に引き続き、2年連続で『世界で最も美しい顔100人』にノミネートされた彼女は、抜群のプロポーションを披露しネットニュースを賑わせる存在に。

 最年少にも関わらず、冷静なキャラクターでテラスハウス内をコントロールしてくれていた鈴木志遠は、ファッションモデルとして活躍。内気で心優しい振るまいで、誠実な印象が強かった彼は、通っていた立教大学を卒業しモデル業に専念しているようだ。

 39話からの出演で、数話しか出演がなかったプロサーファーの金尾玲生は、現在海外での生活を中心にSNSを更新。もともと1年の半分は海外にいると発言しており、テラスハウスがなくなった今は、海外を生活の拠点にしているのかもしれない。

 奇しくも最終話となってしまった42話で入居となったロン・モンロウ。出演時間10分ほどで番組自体が打ち切りになってしまい、ネット上では同情の声も上がっていた。日本に来てまだ2年足らずで、日本語も勉強中だと話していた彼女だが、現在も日本で生活や仕事をしている様子がSNSから垣間見れる。

 みな、今はテラスハウスから離れ、自分の人生を生きている。それでもきっと、あの場所での暮らしは、メンバーの心には一生残り続けるのだろう。

借り手つかずのテラスハウス

 撮影が行われていたテラスハウスの建物自体は、当初から東京・世田谷区にあることが噂されていた。公式Instagramに公開されていた間取り図を頼りに、近くの賃貸不動産屋を尋ねると、現在借り手は見つかっておらず、空き家になっていることがわかった。

 交通の便がいい立地とはいえ、400平米以上の大きな一軒家で、家賃は月100万円を超えている。貸主も法人契約などを考えていないらしく、なかなか借り手が見つからないようだ。

 実際に訪れてみると、世田谷区の高級住宅街の中に、変わらずあの玄関が佇み、カーテンが閉まっている窓からは、人の気配を感じることができない。目の前を通り過ぎる人々も、テラスハウスに目を向けることはなく、あのころの華やかな空気は微塵もなかった。

 誹謗中傷事件の書類送検のニュースを受け、またネットを賑わせている「テラスハウス」というワード。「再開してほしい」という声も上がっているが、公式からの発言はまだない。

(取材・文/久留米あぽろ)