全裸俳優・原田龍二は、自ら犯した過ちや反省を燃料に変えて未来に進んでいく。そんな原田と今回対談するのは、実業家の三崎優太。彼はかつて自社の青汁を大ヒットに導き、メディアは“青汁王子”ともてはやしたが、脱税容疑で逮捕。どん底を経験した彼は、焼き鳥店修業、ホスト転身、貧困家庭の支援など、新たな道を歩んでいる。
これまで交わることのなかったふたりの人生が、今、クロスする─。
“お金持ち”のイメージが先行
原田 よろしくお願いします! 三崎さんの著書やYouTubeも拝見しました。いろいろな経験をされてますね……!
三崎 よろしくお願いします。たしかに同年代の人よりは、いろいろな経験をしているかもしれません(笑)。
原田 この連載は、三崎さんのように荒波にもまれながらも人生を楽しんでいる方から、エネルギーのルーツをお聞きする企画なんです。ちなみに、幼いころから行動的なタイプだったんですか?
三崎 いいえ、まったく違いました。どちらかというと、部屋に引きこもって、ずっとパソコンをしているような学生だったんです。
原田 そうなんですね。これまでいろんな人生の分岐点があったと思うんですけど、いちばんの転機はいつですか?
三崎 アフィリエイト広告を始めた10代のころですね。当時は、集団生活になじめなくて高校を2回退学して、アルバイトにも受からないダメな人間だったんです。焦りや落胆を感じていたときに、近所のパチンコ店に朝から並んでいる人たちを見て「自分も将来、ああなるかもしれない……」と、危機感を覚えて。
原田 このままじゃマズい、と。
三崎 はい。それからすぐに書店に行って、アフィリエイトの本を手に取りました。本にならって実践したら、いつの間にか400万円稼いでいたんです。
原田 すごいですね! その後、フルーツ青汁が大ヒットして注目を浴びたとか。
三崎 そうですね。がむしゃらに頑張っていたら、メディアから声がかかるようになって表舞台に出ていきました。周りの経営者仲間からは「目立つとロクなことがない」と止められたんですけど、僕はそれなりにメリットを感じていたんですよ。
原田 どんなメリットがあったんですか?
三崎 例えば、採用募集で条件がいい人からたくさん応募があったり、知名度が上がって業界内で確固たる地位が築けたり、個人的には長所のほうが多い印象だったんです。
ただ、メディアに出るほど“お金持ち”のイメージが先行する感じもあって……。僕自身も歯止めがきかなくなっていて、世間の期待に応えるように高級車や競走馬を買っていましたね。
原田 僕には想像もつかない世界なんだけど、ずっと何十億のお金を見ていると感覚が麻痺してきませんか?
三崎 そうなんですよ。買ったものの中には“お金持ちなら持っておかないと”という義務感で購入したものもありました。とはいえ、お金があるのは事実なので、経済的に無理をしているわけでもない。すごく不思議な感覚でしたね。
原田 世間に「どうだ!」と、見せつけていたのかな?
三崎 それもあったと思います。でも、目立てば目立つほど、世間からの妬みやひがみという“見えない悪意”のようなものを感じるようになったんです。少しオカルトチックな話ですが、当時は夜中に急に体調が悪くなる日も多かったですね。
僕は社会的感情に殺されたのかも
原田 三崎さんは、実は繊細な人なのかもしれないですね。億の金が飛び交う世界に生きている経営者のなかには、周囲の声を気にせず邁進する人もいるけど、三崎さんは世間の外圧を感じていたんですね。
三崎 そうかもしれません。でも、そこで引くことができなかったんですよね。行き着くところまで行った結果、逮捕されてしまったのかもしれません。
原田 なるほど。実は僕、その事件についてあまりよく知らなくて……。どうしてそんなことに?
三崎 僕は、2019年に「法人税脱税容疑」で逮捕されました。自分自身は14億4000万を納税していたのですが、知人にお願いした1億8000万円が納税されていなくて、脱税の容疑がかけられてしまったんです。
僕はその人に預けるときに「納税してください」と伝えたのに、納めてくれなかった。僕に知識が足りなかったと言われれば、それまでなんですけどね。
原田 悪意を持った脱税ではなかった、と。
三崎 はい。ただ、どん底まで堕ちたときに「僕は“社会的感情”に逮捕されたんじゃないか」と考えるようになりました。経営者仲間が言っていた「目立つとロクなことにならない」とはこのことかと、言葉の真意を悟りましたね。
原田 社会的感情……。
三崎 当時を振り返ると、いい車を買ったとか、馬を買ったとか自慢ばかりして、社会に貢献している姿を見せていなかったように思います。それは反感を買いますよね。
原田 たしかに、日本には“出る杭は打たれる”という文化があるから、なかなか成功者を受け入れられない人が多いかも。
三崎 そう思います。日本はちょっと息苦しいです。
お金よりも大切なものに気づいた
原田 今日、絶対にお聞きしようと思っていたことがあるんです。三崎さんにとって“お金”って何ですか?
三崎 うーん、なんなんでしょうね……。その答えは、自分でも出せていないかもしれないです。
原田 不思議ですよね。僕は、1日のうちでお金について考える時間がほとんどないんですよ。それよりも「今日は何食べよう」とか「夕飯はあれが食べたい」とか……食べ物のことばっかり考えてるわけじゃないけど(笑)。僕にとってのお金と、ビジネスのプロの三崎さんにとってのお金は絶対に違いますよね。
三崎 そうですね。僕自身、お金持ちになりたいと思ってお金を追っていたけど、ある意味で、お金に溺れてしまった。僕にとってお金は味方にも敵にもなりうる存在かも。
原田 お金は生き物なんですね。三崎さんはお金で買える娯楽は、ほとんど手に入れてきたと思うんですけど、今は何をしているときがいちばん楽しいですか?
三崎 楽しみというか、今は自分の運命と戦うのが人生のテーマになっていますね。自分の身に起きた出来事を本やYouTubeで発信して、運命に抗うのが楽しいです。
逮捕されて、SNSではすさまじい誹謗中傷を受けましたし、社会的な信用もなくなって実生活の不便さは今も感じています。たくさんのものを失ったのでいまだに「あの事件があってよかった」とまでは思えてないんです。なので、いつか「あの事件があってよかった」と心から言えるようになりたいです。
原田 受け入れるのは時間がかかりますよね……。三崎さんの、逆境を乗り越えるパワーの源は何なんでしょう?
三崎 僕の場合は“時間”ですね。お金を得てから「お金を出しても若いころの時間は買えない。お金にはたいした価値がないんだ」と気づいたんです。失った時間のことを後悔するくらいなら一日一日を一生懸命生きようと。とにかく毎日、後悔しないように生きています。
原田 それはいちばん大事なことかもしれないですね。
三崎 過去や未来よりも“現在”を見るようになってから、なんでも挑戦するようになりました。今の僕は、失うものは何もないのでチャレンジもしやすいんです。
原田 もしかして、今の三崎さんには怖いものもないんじゃないですか?
三崎 そうですね。ないかもしれないです(笑)。
原田 やっぱり! 僕もスキャンダルが怖いと思っていた時期があったけど、自分で不祥事を起こしてからは、怖いものがなくなりましたから。
三崎 アハハ!
【本日の、反省】世間のイメージや先入観はいいかげんなものですよね。実際にお会いした三崎さんは、自分に課せられた運命を乗り越えられる、とてもパワフルな人でした。今は自分の人生や過去と向き合って、彼だけが歩める道をしっかり歩んでいるように思います。多くの人がうらやむ成功を手にして、どん底も味わっても彼はまだ31歳。これからどんな人生を進むのか、とても興味があるなあ。「あの事件があってよかった」と言える日がきっと来ると思います!
《取材・文/大貫未来(清談社)》