コロナ禍でライブツアー中止、恒例の夏イベントは初めて配信ライブで行ったTHE ALFEE。最新シングル『Joker-眠らない街-』は、かつて経験したことのない時代にメッセージを込めたバラードだ。ウィズコロナの1年と来年への展望に思いを馳せる“切り札”とは──。
僕にとって切り札は「アルフィー」
──新曲『Joker-眠らない街-』は、6年ぶりのドラマ主題歌。『記憶捜査2~新宿東署事件ファイル~』(テレビ東京系)で北大路欣也さん主演ドラマでした。
高見沢俊彦(以下、高見沢) 新宿を舞台にしているので都会的なバラードというリクエストに沿って作りました。刑事ドラマなので、なぜ罪を犯したのか、犯人は悔い改める。人生にはいろんなアクシデントがつきもの。抗いながらも、どう未来につなげていくか、メッセージ性が強いバラードにしたいと思って作りました。
タイトルのジョーカーは、切り札を意味しています。人生の切り札は、そうたくさんはないと思う。今のコロナ禍で、自分たちの切り札を探していかないとダメなんじゃないかという気持ちもありました。
──メンバーそれぞれの切り札は?
高見沢 僕にとって切り札は常に変わっていない、アルフィーです。これは永遠。学生時代から付き合って、仲間としてやってきているので常に切り札です。ただ、いまは切り札を使う場所が全然ない。
3人とも歌って、演奏して、コンサート活動をしてきたグループなので、そこを生かせないのはつらい。その切り札を早くいかせるようなときがくることを今は祈るしかないです。
坂崎幸之助(以下、坂崎) 高見沢と桜井ですね。自分ができないこと負けそうなときに、桜井を出そう、高見沢に登場してもらおう、と。よく言うんですが、3人じゃないとここまで長くは活動できなかった。
たぶん、偶然が重なって、1人ではやっていけない3人が、この業界で40数年もやれたのは、ありがたいことだと思う。ピンチのときに3人が一緒に切り札になるときもあるけど、ピンチのときにそれぞれの切り札が効いて、うまく乗り越えてきたんだと思います。
音楽は決して不要不急のものではない
桜井賢(以下、桜井) コロナ禍になるとは思わなかったけど、なってしまったからには正面からぶつかっていかないといけない。世界中の人が今までの生活が成り立たなくなって、誰もがいろんなことを考えていると思う。
そういう今こそ、自分の中に切り札を探さないといけないときじゃないか。切り札がない人もいるけど、多くの人はそこを考えて乗り越えるために日夜、努力していると思う。
今の状況を逆手にとって、自分にとっての切り札を見つけていくことも必要なんじゃないか。日本中を回ってライブをみんなと一緒に楽しむことが、まったくできない世の中になってしまった。そこをどう乗り越えていくのか。できることを模索し、考えていくことだと思います。
──模索してできたのが、8月に行った初めての配信ライブ。その感想は?
高見沢 夏のイベントは、ずっとやってきた。今の時代だから配信を使ってできることはありがたいけど、実際にやってみると観客のパワーというのにかなり助けられてきたと感じましたね。
これまでは派手で重量感のあるギターの重さを感じたことはないけれど、無観客ライブで初めてギターが重いなと感じました。コンサートは(観客との)キャッチボールなので、それができない配信ライブは何回もできるものではないと思いましたね。
そして、音楽は決して不要不急のものではないと改めて感じました。最初に言われたときは、ちょっと落ち込みましたけど、やってみてそんなことはないと身をもって感じました。
坂崎 お客さんがいるといないでは疲労の質が違いました。テレビ収録で20数曲やっているような感じ。(収録は観客の)反応がないから1曲でも疲れるし、どこがいいのかもわからない。(ライブは)お客さんが喜んでくれれば、僕らも多少ミスったとしても、お互いのキャッチボールだから声援や拍手があると伝わったなと思える。
高見沢 あとMC。しゃべってもウケているのか、いないのかというのがない。MCは僕らにとって重要なひとつなので、そこも苦労しましたね。
坂崎 ツアーだと30公演ぐらいやって、セットリスト(曲目)は基本的には変わらない。それを無観客で30本やれといわれたら、絶対にできないね。前日と同じセットリストでも、お客さんがいるから全然違う気持ちでできる。
高見沢 配信ライブは何回もできませんね。
桜井 今まで2800本近くコンサートを続けてこられたのもお客さんにパワーをいただいたから。もうひとつは(コロナ禍で)生活がガラッと変わった。リハーサルを10日ぐらいして、本番を半年重ねてきて、夏のイベントをやるというリズムがあった。ツアーをやりながら自分の身体やのどを鍛えている。
野球選手と同じで試合勘がないとダメ。それと似ているところがあって(ライブが)まったくないのは結構つらい。ライブを続けているから歌に自信も出てくる。
本番は練習の何倍も力を使い、その積み重ねでライブの声になれる。配信はあくまで単発。本番をやることが自分たちにとってどれだけ大切かを健康面含めてすごく感じていますね。
あと4年でデビュー50周年
──体調にも影響が?
高見沢 緊急事態宣言(4月)のころはツアーがすべて中止になってしまい精神的、肉体的、両方に影響した。ニュースを見ていると、事実関係や悪い状況ばかりで希望がなかった。へこみましたけど、気持ちを切り替えて希望を作ろう! と。
それには新曲しかないと思って、緊急事態宣言のときは猛烈に曲を作りました。何か新しいものがあれば次につながると思った。コロナ禍でツアーがないことで、創作活動に火がついた。小説も新たなものを書き始めました。
あと4年でデビュー50周年、そこまでは何とか頑張っていかないといけないので。バンドを組んでから途中で1回も休んでいないし、活動停止もない。同じメンバーでやっている矜持、誇りがあるので新曲があったほうがより未来が見えるかなと思います。
坂崎 ツアーが延期になった春ごろは心身ともに調子が悪いなって。動かないといけないと思いながらもどうすればいいのか、縄跳びかな、とか。夏を過ぎてからは生活に春ほどの違和感はなくなってきている。でも、これを当たり前にしない。
来春にもツアーを再開するときのために、ライブ用の身体に戻しておかないといけないと思っています。
高見沢 来年は、ライブを何とかやりますよ!
年末年始の過ごし方は?
例年は、年末にコンサートを行い、年明け1月は活動がないため静かなお正月を迎える。3人で一緒に過ごす予定は?「ないない」(高見沢)、「気持ち悪いですよ。でも、配信の企画としてはありかも(笑)」(坂崎)
衛生管理はバッチリ!
「(コロナ禍以前から)ツアー中は移動のときにマスクをずっとしていて、マスクや除菌用品もファンからいただき、衛生管理は行き届いていたグループ」(高見沢)。新曲の限定盤のカップリングにはヒット曲『星空のディスタンス(抗コロナ編)』を収録し、歌詞の一部が変更されている。「ディスタンスが巷で騒がれるのは初めてですか ら、新たに収録しました」(同)