松本潤

 松本潤は、5人の中で誰よりも早く、俳優として頭角を現した。

「‘01年の日本テレビ系のドラマ『金田一少年の事件簿』で主演を務め、‘02年のドラマ『ごくせん』では、成績優秀でスポーツ万能な、クラスをまとめるリーダー役を演じました」(テレビ誌ライター)

『ごくせん』で共演した脇知弘は、松本と打ち解けるまで時間がかかったと話す。

「最初は、ちょっとツンケンしている印象でした。ドラマの中では、僕と幼なじみという設定なので仲よくしようと思ったのですが、近寄りがたい雰囲気だったので困りましたね(笑)。以前共演したことのあった小栗旬くんが間に入ってくれて、しゃべってもらえるように。彼はツンデレなのか、仲よくなってからはすごくいろいろ話してくれるようになりました」

小栗旬、成宮寛貴と仲良しで

 クラスのまとめ役だった松本は、カメラが回っていないところでもリーダーシップを発揮していた。

教室内での大事なシーンの前に、ほかの生徒役の人たちがザワザワしてしまうことがあったんです。すると、彼は、“うるせー、静かにしろ!”と注意していました。役者としてシリアスなシーンの前に準備するのは当たり前ですからね。周りがうるさいときは、ひとりで教室を出て車の中で台本を集中して読んでいたことも。きちんと全体を把握していて、“ここは脇くんに譲るよ”など、誰がどう動けばいいかをきちんと考えていましたね」(脇)

 真剣に芝居に取り組んでいたが、休憩時間はリラックスしていた。

「僕はマジックが好きで、よく教室内でみんなに見せていたのですが、松本くんは“これ、この前ニノ(二宮和也)がやってたから知ってるよ”とトリックを見破られたことも。彼はよくいたずらをしかけていました。後ろから前の席の人にボールを投げて、当てられた人が振り返ると知らん顔をするというのをよくやっていましたね。眠くなると猫みたいに寝ていました。普段はきちんとしているのに、眠くなるとナヨナヨして、僕が隣にいるとベタベタしてくることも(笑)」(脇)

 ほかの出演者と遊びに行くことも多かったという。

特に、小栗くんや成宮(寛貴)と仲がよかったですね。撮影が終わった後にみんなで食事をしたり、仲間由紀恵さんも呼んでカラオケにも行きましたね。カラオケはだいたい、小栗くんが提案して周りに声をかけて行ける人が参加していました。カラオケに行ったとき、松本くんの歌がとてもうまかったので、僕が“うまいな!”と言ったら、成宮に“そりゃプロなんだから!”とツッコまれたことも。彼はバックストリート・ボーイズをよく歌っていました。残念ながら、嵐の曲は歌ってくれませんでしたね(笑)」(脇)

 出演者同士で集まった際には、こんな話題で盛り上がったことも。

V6が歌う主題歌『Feel your breeze』が、いつもいいシーンで流れるのですが、“次は誰のどのシーンで流れるのかな?”とみんなで話していました。オンエアを見た後に、“今日は俺のこのシーンで使われた”と自慢し合っていましたね(笑)。松本くんは、まじめなときはきちんと取り組んでいましたが、ふざけるときは思いっきりふざけて、メリハリをつけていた印象です」(脇)

「“道明寺”の足りない部分は何かな?」

『ごくせん』の2年後の‘04年には、舞台『WEST SIDE STORY』に出演した。

「松本さんのほか、櫻井翔さんと大野智さん、生田斗真さんや風間俊介さんなど、豪華なメンバーがそろっていました」(スポーツ紙記者)

 この舞台で照明を担当した吉川ひろ子さんは、松本との出会いを鮮明に覚えている。

「初めてキャストのみなさんと顔合わせしたとき、松本さんは私のところに来て、“この前、友達の舞台を観に行ったときに照明がすごく素敵だったので、一緒に仕事ができるのを楽しみにしていました”と言ってくれたんです。その舞台には成宮さんが出演されていて、彼は小栗さんと一緒に見に来ていたそうです。演技だけでなく、照明にも目が行くなんて感性が豊かだなと思いました」

 嵐のコンサートの演出を担当している松本は、日ごろから裏方の仕事を意識しているのだろう。そんな彼の“プロフェッショナル”を感じさせるエピソードが。

「松本さんは自分の出番でないときは、客席に来て舞台を見ていました。舞台作りや照明、美術など、裏方に興味を持っている印象でしたね。あるシーンで、ランダムな色の照明を当てる場面がありました。その際、彼が1つの照明を見て“これ前より少し明るいですよね?”と聞いてきたんです。私は“変えていませんよ”と答えたのですが、後で確認したら0・1%明るくなっていたことがわかりました。私たちでもわからなかったほどのわずかな違いに気がついたんですよ」(吉川さん)

 最後の公演が終わった後は、劇場の近くの焼肉店を貸し切って打ち上げが行われた。

「会では、キャスト同士が座るテーブルとスタッフが座るテーブルに別れていました。普通は役者同士で盛り上がることが多い中、松本さんはスタッフが座っているところにきて、お酒を注いでくれました。女性スタッフはみんなキャーキャー言っていましたし、男性スタッフも“あいつ、いい奴だな”と話していましたよ。

 松本さんは、“あそこは、なんでああいうふうにしたんですか?”など、裏方の技術的なことを興味深そうに聞いていましたよ。スタッフが座るテーブルはいくつかわかれていましたが、松本さんはテーブルごとに話題を切り替えて話していましたね。打ち上げが終わって帰るときには、お店の入り口に嵐の3人が立って、スタッフ全員とハイタッチしてお見送りしてくれました」(吉川さん)

 松本にとっても、嵐にとっても出世作となったのが、‘05年に放送されたドラマ『花より男子』(TBS系)だ。

「お金持ちの生徒が集まる高校に一般家庭の女の子が入学し、友情や恋愛に奔走される物語。主演は井上真央さんで、学園の中でも特にお金持ちの4人組“F4”を松本さん、小栗さん、松田翔太さん、阿部力さんが熱演しました。その中でも、松本さんが演じたわがままで“俺様”ながら、誰よりも一途にヒロインを愛する道明寺司はハマり役でしたね」(芸能プロ関係者)

 2年後に放送された『花より男子2』はさらに好評で、平均視聴率21・6%の大ヒット。同作で共演した加藤夏希には、忘れられない思い出が。

松本さんとの初めての会話は“いち視聴者として、俺が演じる道明寺の足りない部分は何かな?”という質問でした。私は緊張のあまり、曖昧(あいまい)な回答しかできなかったのですが、芝居に対しては周りの意見を柔軟に受け止め一緒に作って行こうとするタイプの方だと思いました。自分だけでなく、スタッフの方のモチベーションも上がるように全力で芝居に取り組むまじめな姿が印象に残っています

 松本の勢いに引っ張られるように、ほかの4人も新たな才能を開花させていく――。