アイドルがいちばん輝いていた'80年代。その時代を作り上げたアイドルたちが語る“あのとき”とは? 浅香唯(51)、松本明子(54)、布川敏和(55)、森尾由美(54)が無我夢中で駆け抜けた10代、恋バナ、今だから言える話をぶっちゃけます!
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松本 ええと……、この中でいちばんの先輩は布川さんだよね。'82年デビューで……。
森尾 私とアッコ(松本さん)が'83年。
浅香 私が'85年ですね。
布川 唯ちゃんは'85年なんだ。まあ、この年になったらみんな一緒ということでいいじゃん(笑)。
森尾 “この年”ね(笑)。
松本 布川さんは“花の'82年”と言われてる年じゃないですか。唯ちゃんの年もアイドル大豊作の年じゃない?
浅香 同じ年だと、中山美穂さんとか、南野陽子さんとか……。
森尾 そうだよね。だから私たち'83年組だけなんだってば、不作だったのは(笑)。
松本 もう、'82年組の勢いがすごくて……(涙)。布川さん、自分たちの代がすごいって思っていたでしょ?
布川 そんなの思っていないよ(笑)。“花の'82年”なんて言われても自覚ないもん。
森尾 いや、布川くんは特別かも。ほかの人はそういう自覚はあると思うよ。
松本 だって、当時、何をしたか覚えてないくらい忙しかったでしょ?
森尾 公“私”ともにいちばん忙しかったんじゃないの~?
布川 いや、それは……(笑)。俺は15歳でジャニーズ入ったじゃないですか。そのとき、もうトシちゃんもマッチもデビューしていて『金八先生』でブレイクしているわけ。ほぼ一般人の俺からすれば“たのきんが目の前にいる”なんだもん。自分たちが特別なんて思わないよ。
浅香 その感覚、わかります。
布川 それで“ユーたちデビューだよ”ってジャニーさんに言われて。もう、わけのわからないうちに、あっという間に時間が過ぎたよね。
松本 それをうらやましく見ていましたよ……。私らがデビューした年には先輩たちはよりパワーアップしていて。
森尾 私たち、かすみまくっていたよね。2年目って普通落ち着くじゃないですか。ルーキーは、何もしなくても“フレッシュ”というだけでラッキーをもらえるはずなのに、それすらも持っていかれた感じ(笑)。
松本 私たちの代、2年目に活躍した人に贈られる『金の鳩賞』は該当者なし、でしたからね。
布川 ハハハッ(笑)。とりあえず、誰かにあげればいいのにね(笑)。
アイドルが、今以上にもてはやされた時代。10代でデビューした4人は、その先の人生を当時、どう思っていたのか―?
布川 ずっとはやっていけないと思ってましたよ。俺、18歳のときに事務所に“辞めます”って言ったから。
森尾 それ、早くない!?
松本 だって、デビューしたのは16歳でしょ?
布川 15歳で事務所に入ったけど、デビューは16歳だね。
森尾 18歳って、『シブがき隊』のとき?
布川 そう。3人のとき。1年間、ドラマ『仙八先生』に出演してから『シブがき隊』を'82年に結成して。でもさ、アイドルってそんなに長続きするものだとは思ってなくて。18歳のときに“すみません、辞めます”って。
浅香 それはジャニーさんに言ったんですか?
布川 んー……。まず部長だったかな。そのとき俺、親父の会社を継ごうと思っていたから。
松本 へぇー、それで事務所はなんて?
布川 まあまあまあ、って。そのあと温泉連れて行かれて、大人たちに丸め込まれて……(笑)。
森尾 そりゃあ、そうなるよ。
布川 18歳でまだまだ稼げると思っているからね。辞めさせてはくれなかったですよ。
森尾 私は20歳で辞めようと思ってた。当時はなんとなく、アイドルは10代までと思っていて。
布川 そうだよね。今ならジャニーズの人たちが30歳とか40歳までグループでやっているけど、当時はそんな人っていなかったから。
森尾 だから19歳、20歳で考えなきゃ、って。歌手でいくのか、女優でいくのか。それとも違う道なのか、なんとなく決めなきゃって。
浅香 私もそうですね。19歳くらいで、これからどうしようって悩んだ時期があって。実際、23歳で1回お休みしよう、って休業して。
森尾 え、休業したんだ。どれくらい?
浅香 結果として、4年半休みましたね。
松本 4年半!? けっこう休んだんだね。それは自分の時間がないから休ませて、みたいな感じ?
浅香 そうですね。
布川 松本さんの場合は、休まされていたんだよな。
松本 そうなの! 私は“とにかく休みをなくしてください。何でもやりますから”って。
布川 あの放送禁止用語の騒動で、何年間休まされた?
松本 2年間(笑)。これ以上休みたくない、って。だから、みなさんのように辞めることを考えたことは1度もなかった。
森尾 2年間休んでいて、それでも辞めることを考えないって偉いよね……。
松本 でも、唯ちゃんの4年は長いよね。
浅香 本当は1年くらい休みたいな、と思っていたんですけど、のんびりしすぎて。結果として4年半になってしまいました(笑)。
森尾 忙しかった反動だったの?
浅香 反動もあったと思います。すごく時間に縛られていましたから。
松本 『スケバン刑事』だったよね。
布川 ああ、東映ドラマの撮影は厳しいからね。
台本を読まない、セリフも覚えない
松本 でも、そうやって辞めることも考えたことがある芸能界で、今も活動を続けているわけじゃないですか。それはどうして?
布川 『シブがき隊』が解散する23歳くらいまで、ダラダラ過ごしていたんけど……。
森尾 あれだけ忙しかったんだから、ダラダラじゃないでしょ(笑)。
布川 まあ目いっぱい働かされて(笑)。で、もう限界だなと思ってみんなと話してね。解散してから26歳で結婚、27歳で子どもができて。そのときに“あ、ちょっとまじめにやらないといけない”って。
松本 家族ができたことが大きかったのね……。
布川 それまでは台本とかも読まなかったし、セリフも覚えていかなかったり(笑)。そんなアバウトな人間でも、子どもができると、ちゃんとやらなきゃ、って考えるんだなと思いましたよ。
留年や中退も…仕事と学業のバランスに悩み
浅香 『シブがき隊』が解散した布川さんの23歳と同じ年に、私も休業して、27歳で復帰しているんですよ。
布川 おお、そうだ。同じタイミングだね。
森尾 唯ちゃんは何がきっかけで復帰したの?
浅香 ファンの人たちが『浅香唯新聞』というのを作ってくれて、浅香唯を忘れないようにしよう、ってずっとやってくれていたんです。
松本 熱烈なファンがいてくれたんだね。
浅香 本当にありがたいです。あと、芸能界から離れている間に、初めて気がついたことがたくさんあって。テレビを見る側になって、私を支えてくれていたスタッフさんの力とか、芸能界や芸能人の存在の大きさが、すごいなって思えて。
森尾 出演する側ではなく、見る側になって気がついたんだ。それって誰の番組?
浅香 テレビを見ることで励まされたり、楽しませてもらえたり。見る人に笑顔を届けることを目指したいと思ったのが、お笑いの方がきっかけだったんですけど、言っていいのかな……。『アンジャッシュ』さん(笑)。
布川 タイムリーだね(笑)。『アンジャッシュ』は面白いもんね。
浅香 笑うことですごいエネルギーをもらえる、って。その気持ちとファンの後押しで復帰しました。由美さんは20歳でやめようと思っていたとお話ししてましたけど……。
森尾 私はそう思っていたんだけど、高校を留年して20歳になってしまい……。
浅香 そうだ! 明中(明治大学付属中野高校)で由美さん先輩でしたけど、当時、“由美さんが迫ってくる”って(笑)。
森尾 そうなの。私だけ止まっているから、みんな追い越していくの(涙)。
布川 俺も同じ学校で丸4年通ったけど、もうヤバイと思って中退したからね。
浅香 学校はけっこう厳しかったですよね。
森尾 学年が上がれないんだもの。事務所の社長に学業を優先させてもらって、21歳になる年に卒業できたの。その恩返しをしなきゃいけないな、って思って働いているうちに結婚して。そうしたらまた恩返ししなきゃって……(笑)。
それだけ忙しくても、当時はみなさん思春期の10代。周りを見れば美男美女が―。今は“恋愛禁止”を掲げているアイドルたちがいるが、当時の恋愛事情はどうだった?
布川 俺らの時代も、それは暗黙の了解であったよね。彼女がいます、とは公言できなかったし。
森尾 当然のこととしてあったよね。
布川 俺、当時のことで話せないことのほうが多いな。今話している雑誌が『週刊女性』だから(笑)、大変なことになっちゃう。みんなはないの?
森尾 私は全然ない。
松本 いま思い返しているけど……。男子との交流なんてまったくない。
布川 あれ? ヒデちゃん(中山秀征)とさ……(笑)。
松本 あ、そうだ! ヒデちゃんとは一緒にお風呂に入った。
森尾 えぇ~!? やることが違いすぎる(笑)。
松本 私、地方出身のタレントが高校を卒業するまで入れる事務所の寮にいたんです。そこには河合その子ちゃんとか中山ヒデちゃんもいて。
浅香 その寮でお風呂に一緒に入ったんですか?
松本 うん。
森尾 なんでそういうことになるのよ(笑)。
松本 私から“アイドル崩れのバイ菌が感染る”って。女湯の鍵を閉められちゃったことがあったの(笑)。
森尾 えー……、かわいそう……。
布川 それで男湯に入ったんだ。
松本 うん。先にヒデちゃんがいて。“一緒にいい?”みたいな。
森尾 ふたりとも、なんだかなぁ(笑)。
松本 あとさ、布川さんも1回、寮を抜け出して一緒に遊んだことあったよね。
布川 そんなことあったな。うちのマネージャーの家でね。
松本 いま思えば健全だよね。遊ぶといっても若い子ふたりで会うというわけではなく、大人たちがちゃんと守ってくれていたというか。
布川 そうそう。俺ら普通に遊べなかったからね。だからさ、水泳大会の収録のときも、前乗りしてさ。フジテレビのスタッフの部屋に集まって、みんなで遊んだりね。
森尾 私、誰からも声かけられなかったよ、前乗りしても。
布川 え、本当!? おかしいな。
松本 あの日はみんな修学旅行状態だったよね。でも唯ちゃんも出演していたよね?
浅香 私たちの代って、基本、前乗りとかできなかった。
森尾 そうなの?
浅香 たぶん、前乗りするとロクなことがないからということなんでしょうけど……。
松本 それは先輩たちで何かがあったからなのかな(笑)。
浅香 あと事務所から“できるだけ個人的な情報を話すな”とか言われてましたし。それは男性に対してだけじゃなく、女性に対しても同じ。アイドルって仲よくなる機会がないんだな、って思っていました。
松本・森尾 へぇー……。
布川 でも、フジテレビの控室って大部屋じゃなかった? そこで話したりとか……。
浅香 パーテーションで仕切ってありましたね。
松本 スタッフのガードが固かったんだね。
浅香 トイレもひとりでは行けなかったし。当時はそういうものだと思っていましたけどね。
布川 歌番組の生放送中くらいしか、女子に近づけなかったよね。だから、みんな生放送中に電話番号渡したりするの(笑)。
森尾 あのときって、すごい瞬発力あったよね。番号聞いたら、パッて覚えられた。
松本 今は電話番号、覚えられないなぁ(笑)。
布川 あのね、俺の知っている中で、電話番号覚えるのが得意なのは田原俊彦。
松本 トシちゃん!?
布川 合宿所にいたとき、トシちゃんの部屋で電話借りて女の子と話していたんですよ。その電話をかける指の動きを見ていて覚えて、あとでその子に“田原俊彦です”って電話するの(笑)。
森尾 すごい……。
布川 本当にあの人はマメだよ、マメ(笑)。
30年以上、芸能界という華やかな世界でファンを魅了してきた4人。もし“あのとき”に戻れるなら、またアイドルを選ぶ? の問いかけには―。
森尾 これまでの経験を持ったまま戻れるなら、やりたいかな。今なら大人の顔色をうかがわずにいろんなことを落ち着いて考えられると思う。
布川 面白いだろうね。今の感覚で『シブがき隊』やれたら、すごい楽しいと思う。当時はわけわからず突っ走っていた子どもだったから。
浅香 私は違うことをやるかも。アイドルではなく……お笑いのほうに(笑)。
布川・松本・森尾 『アンジャッシュ』だ(笑)!
浅香 アイドルも素晴らしいけど、お笑いって直接笑顔を届けられるじゃないですか。
松本 私は絶対にアイドルとしてまたデビューしたいです。もう今度は、そそのかされても言ってはいけないことを言いません(笑)。もう2度とアイドル人生を踏みはずしたくないですね。
布川 今度のコンサートはテレビじゃないから、俺、言わせようと思ってるんだけど。お客さんも待っているよ(笑)。
森尾・松本・浅香 絶対にやめてー(笑)。
『松本明子 presents 黄金の80年代アイドルうたつなぎ ~うれしなつかし胸キュンコンサート~』【日時・会場】2021年1月16日(土)(1)13:30 (2)18:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール 【出演】松本明子、布川敏和、森尾由美、浅香唯、西村知美 【料金】全席指定8,000円(税込み)【HP】 https://www.bsfuji.tv/80utatsunagi/【お問い合わせメール】 event@befuji.co.jp(BSフジ)
(取材・文/蒔田稔)