世界各地で変異種が確認され、猛威をふるい続けるコロナ。例年より発症は少ないとはいえ、インフルだって怖い。この状況下で最終的に頼りになるのは、自分の身体の免疫力だ。焼いて食べて、この冬、命を守り切ろう。
焼き梅干し
主な効能
・血流がよくなり、新陳代謝が活発に
・ウイルス抑制効果
日本が誇る健康食・梅干し。その効果は一般にも広く知られているが、“焼き梅干し”にすることで、さらなる効果が期待できると教えてくれたのが焼き梅干しに関する著書もある「梅干し博士」こと、宇都宮洋才先生だ。
「梅干しで期待できる健康効果は、まず肥満や高血圧などの生活習慣病の予防・改善があり、そしてインフルエンザや風邪を予防する抗菌・抗ウイルス効果があります」(宇都宮先生、以下同)
和歌山県南部の保育園では、毎年、風邪やインフルエンザが流行する季節になると、水で薄めた梅酢でうがいをするよう指導している学校があり、その地域では学級閉鎖が少ないのだという。
「調べたところ、梅に含まれるエポキシリオニレシノールという成分がインフルエンザウイルスの増殖を抑えることがわかりました。さらに、風邪の細菌の増殖を抑えるシリンガレシノールという成分も梅には含まれています。梅干しを1日に1〜2粒程度食べればウイルスの抑制が期待できるのです」
脂肪を燃焼させる効果も
さらにウイルスの抑制効果を高める方法が。
「梅干しを焼くことで、栄養がアップします。梅干しを加熱すると、クエン酸と糖分が結合し、ムメフラールという物質ができます。この物質は血流をよくする作用があり、代謝を活発にします。新陳代謝が活発になることで、ウイルスに対抗できる、免疫力の高い身体に生まれ変わるのです。
また、梅干しには、梅の香り成分バニリンという成分が含まれています。これには脂肪を燃焼させ、脂肪細胞を小さくする効果があります。このバニリンは、加熱で増加します。このことから、焼き梅干しにはダイエット効果があると言われるようになったのです」
免疫力の高い身体になれば、風邪やインフルエンザはもちろん、にっくき新型コロナウイルスにもかかりにくくなるのだ! 現時点で特効薬の見つかっていない新型コロナウイルス。焼き梅干しを毎日食べることで、まず感染のリスクを減らすべし。
「焼き梅干しといっても、べつに焼かなくてもいいんです。加熱すればバニリンも増加しますし、ムメフラールも発生しますから。レンジで温めるだけでもOKです。僕は炊飯器で米と一緒に炊いて加熱していますよ。女性は冷え性の人が多いですから、焼き梅干しで血流をよくして抗酸化作用で若さを保つのも、基本的な免疫力アップにつながる。せっかく梅干しを食べるなら、加熱して!」
毎日の焼き梅干し習慣で強く元気なボディに!
*作り方*
■レンジ
梅干し(約100グラム)を耐熱容器に入れ、ラップをかけ、600Wで1分加熱。表面が軽く乾いて中までほっくりと温まれば完成。加熱後は1週間程度で食べ切って。
■トースター
天板にアルミホイルを敷き、梅干しを並べ、1000Wで5分程度焼く。中央が温まるまで加熱。トースターの機種によって焦げやすいこともあるので、ときどき確認して。
■フライパン
フライパンの上に梅干しを間隔を置いて並べ、弱火で焼く。油はひかずに転がしながら1分程度焼く。表面に軽く焼き目がつき、中まで温まったら火を止める。
和歌山県立医科大学准教授
大阪河崎リハビリテーション大学客員教授
宇都宮洋才先生
医学博士。大分県出身。民間に言い伝えられる梅干しの効能を医学的に解き明かす研究を続けている。「梅干し博士」として講演や、メディア出演多数。著書は『やせる! 元気になる! 焼き梅干しパワー』ほか多数。
焼きみかん
主な効能
・身体を温める
・呼吸器の不調を整える
日本の冬といえば、こたつにみかんが定番。ところが今年は、焼いたみかんが話題だ。生で食べるより効果がある、と噂の“焼きみかん”を推す医師・石原新菜先生にその健康効果を聞いた。
「みかんの皮を乾かしたものを漢方では『陳皮(ちんぴ)』といい、その効能は古くから知られてきました。果物は実よりも皮に栄養があります。みかんの場合、ポリフェノール、ビタミンC、β-クリプトキサンチンなどの抗酸化作用を含む成分が、皮により多く含まれています」(石原先生、以下同)
例えば、温州みかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチンは体内でビタミンAに変わって、体内のIgA抗体を増やす。このIgA抗体は、人の粘膜免疫を高める。粘膜免疫が高まることで、外から侵入してくるウイルスや病原菌と戦う力が増すのだ。
「みかんを冬に食べるのは、風邪やインフルエンザが流行する季節なので、とてもよいこと。漢方薬の陳皮は、その効能に咳、痰切りなど、呼吸器系の不調に効能があるといわれています。さらに、みかんを焼くとそれ以上の効果が期待できますよ」
身体を温める効能があり、女性にオススメ
皮をむいて捨てずに、皮ごと焼いて食べると、その栄養成分を摂取できる。
「特に女性は、男性に比べ筋肉量が少ないので、身体を温める必要性があります。冷え性は、子宮や卵巣などの婦人科系統の不調を引き起こします。焼きみかんの効能のひとつは身体を温めること。焼かないみかんを冷たいまま食べると、成分的にはよくても身体が冷えてしまいます。焼きみかんならその心配がないので女性にはうってつけです」
また、焼くことで甘くなるので、皮のまま食べやすくなるのも魅力だ。
「トースターで丸ごと焼くと皮がぱりぱりして美味しいですよ。焼くことで栄養分が実に移るので、普通のみかんを食べるように皮をむいて食べても大丈夫です。私のオススメは、ヨーグルトやグラノーラと混ぜる食べ方。皮の農薬が心配ならば、水で軽くこするように洗ってから焼きましょう」
みかんを焼くと、焼き芋に似た匂いが漂い、焼きリンゴのようにとろりと甘みもアップする。
みかんのイメージが変わる味だが、うん、これは病みつきになりそう!
「陳皮は高価な漢方薬として売られていますが、自宅で焼きみかんを作ればコスパよく、気軽に漢方の生薬を生活に取り入れることができます。風邪やインフルエンザ、コロナが猛威をふるう昨今、ぜひ、この冬の生活習慣にしてほしいですね」
今年は、「こたつで焼きみかん」スタイルを取り入れてみては?
*作り方*
■レンジ
みかんが破裂しないよう、切れ目を入れるか指で軽く穴をあけて。濡らしたキッチンタオルでみかんを包み、600Wで1分程度加熱。焼き芋のような香りが目安!
■魚焼きグリル
みかんを魚焼きグリルで焦げ目がつくまで焼く(トースターでも可)。好みで、片面焼き・両面焼きに。どちらもM玉サイズで5~6分程度。パンパンに膨れて熱いので注意。
■オーブン
アルミホイルでみかんを包み、230度に熱したオーブンで15分程度焼く。アルミホイルなしで焼くと、皮がぱりぱりした仕上がり、包んで焼くととろりとした味わいが楽しめる。
イシハラクリニック副院長
石原新菜先生
医師、健康ソムリエ。長崎県出身。スイス、静岡県伊東市で育つ。クリニックでの診察のほかわかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書は『病気にならない蒸しショウガ健康法』ほか多数。
《取材・文/ガンガーラ田津美》